資本主義って、グローバル化って、実際なんなんでしょう?

経済

公開日:2014/9/1

 最近、「グローバル化」とか「グローバリゼーション」とよく聞きますけど、実際のところ「グローバル化」ってなんなんでしょう?いいことなのか悪いことなのか、いまいちよく分からない。なんとなくで言うと「人とか物とかお金が国境を自由に越えられて、便利になること」でしょうか?本書『資本主義の終焉と歴史の危機』(水野和夫/集英社)では、グローバル化によって世界に起きている大きな変化が、危機感をもって紹介されています。

 グローバル化による変化を理解する前に知っておかなくてはいけないのが、そのベースになっている「資本主義」。資本主義というのは、「成長」を効率的におこなうシステム、と言えます。成長というのは、高度経済成長期の日本のように、生活の水準が上がって豊かになること。みんなで成長して豊かになろうね、というためのシステムが資本主義なわけです。

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 資本主義の基本は、資本を投下して利益を得て、資本を自己増殖させること。簡単に言うと、まとまったお金を準備して、安く仕入れて高く売って、儲かった利益で元手を増やして豊かになっていく、というプロセスです。このとき必要なお金は、銀行などから借りてきます。借りるときに、儲かった分からいくらか上乗せしてお返ししますね、という約束が「金利」です。

 金利というのは、資本主義的には重要な指標で、借りる側からすれば低ければ低いほどいいじゃん、と思うわけですが、もう少し大きい視点から見ると、これは貸したお金でどれくらい利益を上げられるか、という期待値でもあります。つまり、お金を貸してあげるときに、今の成長の勢いがこれくらいで、これくらいは儲けが期待できるんだから、これくらいは増やして返してもらってもいいよね、という社会的な合意が「金利」の数字にあらわれている、と言えます。

 ところがここ最近、日本をはじめとした先進国では、金利が際立って低く推移しています。いわゆる低金利。これは、さきほどの見方に従えば「お金を貸してもそんなに増やせないよね」=「そんなに成長する見込みないよね」という見方が社会的に共有されている、ということ。金利が低い=成長の見込みが低い。つまり、いま日本や先進国では、すでに「成長」のための資本主義がうまく機能していない、ということを示しています。

「成長」ができないのは当然と言えば当然で、日本のようにみんなが豊かになれば、物やサービスに対する需要も低くなっていくし、地理的・物理的な市場の拡大にも限りがあります。それに、資源価格はここのところ高騰していて、利益も圧迫されています。要するに、モノやサービスをつくっても昔ほど売れないし、利益も出づらいし、割に合わなくなってきた、ということです。

 この成長問題に直面した先進国アメリカが打ち出したのが、地理的・物理的に市場が拡大できないなら、「電子・金融空間」という新たな市場を開拓して、引き続き「成長」していこう、という政策。モノやサービスで儲からないなら、ITと金融を結びつけて、国境を越えて海外の新たな市場にお金を投資して、その市場が成長した分から利益を得よう、という作戦です。しかも投資なら資源の高騰も関係なし。作戦通りアメリカが「金融帝国」を確固たるものにしたのが1995年頃。このあたりから「グローバル化」が目に見えるかたち進みはじめます。

 では、グローバル化では具体的にどういう変化が起こっているのか。グローバル化以前の世界では、大まかに言うと二割の地球の北側の豊かな先進国と八割の南側の貧しい途上国、という二極で成り立っていました。日本を含む北側の先進国では、国民のほとんどが一定の豊かさを享受することができました。それが、資本や人や物が簡単に国境を越えて移動することで、この南北の貧富の二極化も国境を越えるようになり、先進国の国内でも二極化が現れるようになっています。つまり、グローバル化では、南北で仕切られていた貧富の格差が、世界中の国々の中で再び配置されなおす、ということが進んでいるわけです。

 また、再配置の具体的な例としては、電子・金融空間から中国・インド・ブラジルといった急速に経済成長を進める国に資本が投資されることによって、新興国の発展と台頭が相次いでいます。それらの国々はさまざまな矛盾をはらみながらも急激に豊かさを獲得しています。また、投資によって利益を得た資本家は、その資本をさらに増やし続けています。その一方で、これまで一定の豊かさが担保されていた先進国にも再配置が起きています。アメリカの貧富差の拡大、日本の非正規雇用者の増加、ヨーロッパでのギリシャやキプロスの財政危機といった社会問題は、二極化が先進国にも現れる、という具体的な例です。私たちの身近にもグローバル化の影響が及ぶことを示しています。

 …と、資本主義の面から見ると、グローバル化によってこのような大きな変化が今まさに進行中です。その他にも、この変化に付随した今後のさまざまな課題を抱えているのですが、本書ではそれらの課題を見据えて、じゃあ私たちはどうしていくべきなんだろうか?というテーマに取り組んでいます。私たちの生活に今後さらに影響を大きくしていくであろうこれらの変化に対処できるようにするためにも、資本主義とグローバル化の見通しを知っておく必要がありそうです。

文=村田チェーンソー