ご飯がマズいは嘘!? 英国暮らし13年目のマンガ家・楠本まきが語る海外ライフ

海外

2014/9/2

ロンドンで暮らし始めて13年目の著者。その日常を綴ったコミックエッセイが待望の単行本化。『FEEL YOUNG』誌で9年にわたり続いた人気連載だ。ロンドン五輪開催やドラマ『SHERLOCK』のヒットなどで、日本でも注目度がUPしているイギリス。オシャレで素敵で、でも少し不思議。インサイダーだから描ける「英国」とは!?

 

A国生活修正

 

楠本まき
くすもと・まき●1984年デビュー。『Kissxxxx』が大ヒットし多くのファンを獲得。2001年よりイギリス・日本、両国を拠点に活動。他の著作は『ロンドンA to Z』『楠本まき選集』など。現在、『赤白つるばみ』をcocohanaにて連載中。

 

――『A国生活』は9年にわたるロングラン連載の単行本化です。ファン待望の1冊ですが、楠本さんご自身にとっても初の4コマ・コミックエッセイですね。

ストーリー作品を描くときはほとんど迷いがないんですが、エッセイでは逡巡することが多いです。私にとってすごく面白かったことも、ほかの人にはそれがどうした、ということなんじゃないか、とか。葛藤しながら、独り言を9年かけて描いていた感じですね。単行本にまとまって初めて、「あ、まぁこれでよかったのかな」と思いました。

ただ、その国の一面だけを見てひどく悪く言ったり、逆に盲目的にほめそやしたりするのは、どちらも違うだろうと思っていたので、そうならないようにしよう、とは独り言なりに考えていました。

――ロンドン生活も、もう13年目とのこと。作中でも、お引っ越し事情やスーパーでの買い物、アンダーグラウンドなカルチャーなど、長年暮らしているからこその楽しいエピソードが満載でした。そもそも、イギリスに住もうと思ったのはなぜですか?

日本でのハードなマンガ家生活に疲弊したので、少し休んでもいいかなと思ったのがきっかけです。イギリスには知り合いもいましたので。住むと言っても日本にいることも多くて、今はわりといいバランスでやっていけていると思います。

イギリスのいいところは、梅雨がないこと、緑が多いこと、知らない人同士でも目が合ったらニッコリすることです。

――イギリスの「食」のお話がとくに面白かったです。まずいのが定説みたいになっていますが、実はそんなことはないという。オーガニックマーケットの野菜、オシャレサンドウィッチ屋。美味しそうなものがいっぱい登場しますね。

はい、選び方さえ間違わなければ、普通に美味しいです。お店に並ぶものは、他のヨーロッパの農業国からの輸入物が多いんですけど、イギリス産の洋梨や、イギリス産のチーズ(チェダーやチェシャー)は美味しいです。洋梨とチーズを一緒に食べるとさらに美味しいです。甘いもの系では、スティッキー・トフィー・プディング(濃厚キャラメルソースにドップリつかったドッシリしたプディング)とか、もう聞いただけで絶対ダメな感じなんですが、イートン・メス(ホイップクリーム、メレンゲ、苺をグチャっと混ぜたもの)が大好きです。食べても太らない体質なので、うっかり好きなものを好きなだけ食べていたら、コレステロール値がいけないレベルまで上がりました(笑)。

――旅行譚も多かったですね。エジンバラではクローン羊のドリーに会ったり、ヴェネチアではお墓の島を訪れたりと、楠本さんならではで素敵だなと思いました。

見たいものがピンポイントなので…。でもあらためて考えると、やっぱりイギリス国内の旅が一番好きかもしれません。スコットランドのアラン島もよかったし、今年行った北アイルランド沿岸も、地味ながら絶景でした。イギリスの田舎はどこもいいです。羊もいますし(笑)。

旅といえば、このエッセイに最多出場の友人は、パリ行きの列車でたまたま隣りに座ったのがきっかけで、それ以来もう12年友だちです。誰に言っても驚かれます。もちろん列車でできた友だちは、後にも先にも彼女一人です。

――イギリスに住んで、人生についての考え方や創作への意識に変化はありましたか?

多少のことには、まぁそんなこともある、と思えるようになりました。仕事については、とくに変わらないですね。こちらで入手困難な画材が切れたときに困るくらいで。スクリーントーンとか、0.3ミリシャープペンシルの芯とか。あ、でも、そういうものがなくても、まぁいいか、と何かで代替できるようになりました。日本にいるときには、その寛容さはなかったですね(笑)。

――日本に対する思いは変わりましたか?

日本の伝統的なものに、より惹かれるようになったと思います。帰国の日程が決まったら、まず文楽や歌舞伎の演目をチェックします。

――最後に、『A国生活』のオススメポイントを教えてください。

えーっと、見所はロンドン五輪のトーチリレーの話で描いたベッカムが、意外と似ている点とか……(笑)。ここ数年、本書のほか『ロンドンA to Z』『ロンドン*トレジャーハント&ロンドンからの小さな旅』と続けてロンドン本を出したので、もうエッセイしか描かないのかと思われているんじゃないかと心配なんですが、実はストーリーマンガの『赤白つるばみ』も平行して5年ほど連載しています(笑)。今年末くらいには単行本化される予定なので、それも読んでくださいね。

 


A国生活

『A国生活』

楠本まき 祥伝社フィールコミックス 1380円(税別)

イギリス生活13年の著者。『FEEL YOUNG』誌で9年間連載されたコミックエッセイがついに単行本化。実は美味しい「食」、3.11後の世界、ロンドン五輪、羊のドリーに会う一人旅など、ロンドンでの日常をカラー満載の4コマで綴る。スナップ写真も多数収録。