【ダ・ヴィンチ2014年10月号】「進撃の巨人が終わる日」特集番外編

特集番外編1

更新日:2014/9/10

【ダ・ヴィンチ2014年10月号】「進撃の巨人が終わる日」特集番外編

全国の読者に『進撃の巨人』を届ける!
知られざる職人たちの戦い

文=編集K 写真=多月宏文

『ダ・ヴィンチ』10月号の第一特集は「進撃の巨人が終わる日」です。

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アニメ化を経て大ブレイクし、コミックスの累計部数が4000万部を突破した『進撃の巨人』。もはや社会現象と化した同作の生みの親・諫山創さんをはじめ、同作に関わるたくさんの方にご協力頂き、今回の特集をボリューム一杯に作らせて頂くことができました(なんと42ページ!)。

ここではその中から、誌面では書ききれなかった『進撃の巨人』を支える“職人たち”のエピソードをご紹介させてください。

今回の特集では『進撃の巨人』の全体像をできるだけつかむために、誌面には直接反映されない取材にもチャレンジしました。その一つが『進撃の巨人』コミックスの印刷から出荷までの行程についてです。

諫山さんが描かれた原稿は担当編集の川窪さんの手を通り、印刷所さんへと手渡されます。このおおもととなる原稿が数百万部の部数で印刷され、読者さんの手元に届くのです。

『進撃の巨人』ほどの大きな部数になると、綿密なスケジューリングと大規模な機械設備が必要になります。それに応えているのが大日本印刷さんです。
大日本印刷さんは『進撃の巨人』および『別冊少年マガジン』の印刷行程を一手に担っています。

下の写真は大日本印刷さんの白岡工場での取材風景です。ここでは『進撃の巨人』コミックスのカバーが印刷されており、印刷のプロがその色味やデータの再現度をチェックします。
最近の出版界ではデータでの入稿が主流となっていますが、データを紙に落としこむ場合、モニター上の視認と印刷の結果の間にズレが出ることがあります。またインクや紙の状態は気温や湿度によって変化します。そうした微細な変化に神経を尖らせ、作者やデザイナーの意図を紙上で表現するのが大日本印刷さんの仕事の一つです。

こうして刷り上がったカバーと本体を合体し、商品化するのが「製本」と呼ばれる行程です。こちらを担当しているのが埼玉県桶川市にあるフォーネット社さんです。
フォーネット社さんの特徴と言えば、世界初のコミック専用高速フィルムパックマシン(下の写真をご覧ください)!
主にマガジンKCなど、講談社さんのコミックスの一部は出荷段階でビニールが巻かれ、通常書店員さんがお店で作業しているシュリンク行程のショートカットを図っていますが、フォーネット社さんはその行程を担っているわけです。
こちらの機械はフォーネット社さんが機械メーカーに発注して作ったオリジナルで、月に700万部までの生産に対応しており、アニメ化の効果で『進撃の巨人』が爆発的に売れた時期も乗り切ることができたそうです。パッケージング段階でのミスは大きな事故につながりかねないため、精度と速度を両立させるべく、機械の開発には試行錯誤が繰り返されたといいます。

こちらでシュリンクされたコミックスは、いよいよ書店へと出荷されます。
『進撃の巨人』14巻の初版は200万部を優に超える圧倒的な部数で、その保管と配送にも大変な苦労があります。
下の写真は出発直前のトラックにコミックスを積み込む様子。倉庫ではこうした運搬機が所狭しと走り回っており、写真のリフトに積んであるコミックスの一つの固まり(パレットと呼ばれています)は4000部程度だそうです。
200万部以上ということは単純計算でこれを500回以上、繰り返すということになります。

こうして積み込まれたコミックスは、全国の書店へと配送されていきます。それが読者の皆さんのお手元に渡っているわけです。

今回ご紹介できたのは行程のほんの一部で、『進撃の巨人』の制作から運搬に関わる人間は数百、数千では足りないかもしれません。
取材を通じて感じたのは、その行程に関わる方それぞれが強いプロ意識をもち、次にバトンをつなぐという気持ちで、本当に楽しそうに働いていらっしゃるということです。
最終的にそのバトンが読者につながっているということが、何より皆さんのモチベーションになっているようでした。

今回の特集では諫山創さんをはじめ、『進撃の巨人』に関わる方々からできるだけ多くのお話を伺うことを心がけました。
そのすべてを拾い尽くした!と言うことはとてもできませんが、『進撃の巨人』という作品がたくさんの人をつなげ、ひとつの輪を作っているという事実をお伝えすることができればと思っています。それはファンのみなさんはもちろん、本が好きなすべての人に対する前向きなメッセージになるのではないかと考えています。

全42ページと非常にボリュームのある特集ではありますが、多くの方に手にとって頂ければこれに勝る喜びはありません!

(以上)