男女逆転&現代版ホームズ物語が誕生! 『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』

文芸・カルチャー

2014/9/4

世界一有名な名探偵、シャーロック・ホームズの物語を現代化したドラマ「SHERLOCK/シャーロック」のブームが止まらない。8月25日に発表されたエミー賞では「ミニ・シリーズ、TVムービー部門」において12部門ノミネート、うち主演男優賞など7部門を受賞し大健闘。本国では既にスペシャル番組と第4シーズンの制作が決定している。

その過熱ぶりは日本でも同じ。ドラマを観て原典のホームズファンになった人も多いらしく、翻訳ミステリの老舗出版社・早川書房が開催中の「パブ・シャーロック・ホームズ」は女性を中心に連日連夜賑わっているとのことだ。

「シャーロック」人気が高じて、何とも奇抜なホームズ・パスティーシュ作品も刊行されている。国税徴収官を題材にした『トッカン』で知られる作家、高殿円の『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』(早川書房)がそれ。

「“シャーリー・ホームズ”って、女性の名前じゃないの?」と思った方、そう、この作品はホームズをはじめ、ワトスン、レストレード警部など、登場人物達の性別がすべて逆転しているのだ。

物語は2012年、オリンピックに沸き立つロンドンが舞台である。戦地アフガニスタンより帰還した元軍医のジョー・ワトスンは、友人の紹介によって風変わりな女性、シャーリー・ホームズとのフラットシェアをはじめる。シャーリーは人工心臓を抱えた薬漬けの体ながらも、乗馬のオリンピック金メダリストであり、おまけに優れた観察力で推理を披露する世界唯一の“顧問探偵”であった。ある日、スコットランド・ヤードのグロリア・レストレード警部がシャーリーのもとを訪れる。たった一晩で、4人の女性が同じような死因で死亡するという事件が発生し、助力をシャーリーに求めてきたのだ。

キャラクターを女性化したホームズ・パスティーシュには作例があるものの(詳しくはシャーロック・ホームズ研究家・北原尚彦氏による本書解説を参考のこと)、ベイカー街221BがAIに管理されているという、SFのような展開まで用意されているのは前代未聞。クールな美貌で毒舌を吐きまくるシャーリーは原典のホームズというより、ベネディクト・カンバーバッチが演ずる現代版シャーロックへのオマージュが強いキャラクターであるため、「SHERLOCK」ファンには馴染みやすいかもしれない。パンケーキを頬張りながらアラサー女性のリアルな悩みを吐露するジョーも、極めて現代的だ。

以上のように本作は斬新な要素を取り込んでおり、原作、ドラマとあらゆるホームズファンが親しめるホームズ・パスティーシュであることは間違いない。

今月9月から11月にかけて、北原尚彦氏によるホームズ・パスティーシュが3ケ月連続刊行されるなど、まだまだホームズ物語のブームは冷める気配がない。今後も『シャーリー・ホームズ』のような、大胆な設定のパスティーシュが生まれる可能性は大きい。

文=若林踏