【『中二病 誕生日診断』発売】夏目、太宰、三島、かの文豪たちの「中二病的特徴」を診断してみた

マンガ

公開日:2014/9/9

 「中二病」という言葉が使われはじめて久しい。某タレントのラジオ番組で使われはじめた言葉だが、今や、当初の意味を飛び越えて様々な場面で使われるようになった。そして、中二病をテーマにした作品も数多く刊行されている中、それぞれの誕生日ごとの中二病的特徴などをまとめた『中二病 誕生日診断』(KADOKAWA/メディアファクトリー)が出版された。

 誕生日に合わせたキャッチコピーや特徴、ラッキーワードなどが散りばめられた書籍だが、ふつうに紹介してもおもしろくない。そこで、日本の文学史を彩った文豪たちの誕生日をたよりに、彼らの中二病的特徴はいかなるものだったのかを紹介していきたい。

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■夏目漱石(1867年2月9日 生まれ)
悲嘆に暮れる妄想の人「囚われし旅人(インプリズンドトラベラー)」

 『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』など代表作は数えきれず、欧米との関わりが強く求められる激動の時代を生きた、余裕派の礎を築いた作家である。

 それでは、彼の中二病的特徴はいかなるものか。同書によれば、「塔の最上階に閉じ込められ、退屈(アンニュイ)な毎日を過ごす」と記されているのに加えて、「自分を自由の空(パラダイム)へ解き放ってくれないだろうか」と葛藤しているという。「壮大な夢に思いを馳せる幽閉された冒険者」とも表現された漱石だが、そもそも彼の過ごしてきた時代は、主君に仕えるという封建制度が崩れ、人々が自分自身のために生きることを求められた時代でもある。日本という国家そのものが新たな時代へ踏み出す中で迷走していた当時の風潮や彼の来歴をたどると、同書の解説は、的を射ているようにも思える。

■太宰治(1909年6月19日 生まれ)
傷つけられた自尊心に集まる共感「異世界の硬鞭(アナザーワールドウィップ)」

 代表作『人間失格』や『走れメロス』など、彼の残した作品は枚挙にいとまがない。また、いまだ多くの文学好きにも愛されるほか、誰もが知る作家である。さて、本書によれば彼の特徴は「理想と現実のギャップに心を痛めながら成長」していくとある。

 そして、彼自身が自分の性格を綴った一節によれば、彼はそもそも幼少期から他人と口をきくことすらできないほど弱く、生活に必要な力も何一つ持っていないと自覚しており、やがて、作家になると決意したとある。彼に付けられたキャッチコピーが当てはまっているようにもみえるほか、自分の弱さをあえて吐き出すというのは、逆説的に「理想を抱いていた」ともいえそうだ。

■三島由紀夫(1925年1月14日 生まれ)
弱者正義を成し勇を示す「混沌の審判(カオスインパイア)」

 ノーベル文学賞候補に幾度となく選ばれ、『潮騒』や『金閣寺』などの作品を世に生み出した耽美派を代表する作家だ。独特な文体やその美しさに魅了される人たちがいまだ多い一方、クーデター決起の末に割腹自殺を図るまでの生涯への関心も高い。

 同書に照らし合わせる中で注目すべきなのは、三島の行動そのものが「人びとに永遠に語り継がれること」とされているほか、「正義の審判(ジャッジメントエクスプロージョン)を下し悪を打ち倒す貴方の姿を見て、人々は喝采を上げる」という部分だろう。政治的に何が正しいのか、もっといえば、何が「正義」と呼べるかを今ここで断じることはできない。ただし、三島がみずからの意思により国家を憂い、身を持ってその意思を伝えたことで、多くの人々が共感したのは事実である。

 さて、かの文豪たちに「中二病的特徴」をいくつか当てはめてみた。彼らの性格については諸々の分析が多方面でみられるほか、ともすれば「玉虫色の解釈」となっているのはご容赦頂きたい。それぞれ自分がどんな特徴か、同書をたよりに巡ってみるのもおもしろいはずだ。

◎参照サイト
青空文庫「太宰治 わが半生を語る」
鑑定家「三島由紀夫(みしまゆきお)」
コラム 三重っぱり「夏目漱石の魅力」

文=カネコシュウヘイ