40才オタク夫、20代中国人嫁の意外なホンネにマンガ家生命の危機!?

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2014/9/12

(左から)月さん、井上純一さん、小栗左多里さん、トニー・ラズロさん

 「ダーリンは外国人」シリーズ6年ぶりの新刊『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し トニー&さおり一家の海外生活ルポ』が発売となり実現した特別鼎談企画。マンガ家のヤマザキマリさんをお迎えした第1弾につづき、第2弾は、日本&中国で人気のBlogを書籍化した『中国嫁日記』の著者・井上純一さん夫妻をお迎えしました!第1弾はこちら

『ダーリンは外国人』に“のろけオチ”を学ぶ!?

――井上さんご夫婦は今、中国にお住まいですね?

【井上】深圳(しんせん)という町に住んでいまして、中国に来て2年半ですね。でも、僕は中国でもずっとマンガを描いているだけで、ただの引き込もり。日本でもそうだったので、移住しても生活が変わらなかった(笑)。

【小栗】私も同じ。そんなにアクティブではありませんよ。1日中マンガ描いて、ちょっと家事やって。

【井上】僕は、そもそも中国語がびっくりするくらいできないんです。全部、月に頼ってしまうので。

【小栗】わかります。私も完璧なドイツ語は「お勘定お願いします」だけ(笑)。『中国嫁日記』を拝読しているんですけども、かなりのろけがオチになってますよね。4コマ目が「ジンサンと一緒じゃないと楽しくナイデス」っていう月さんのセリフだったりする。正直、初めて読んだときちょっとびっくりしました。これが許されてるなんて奇跡って(笑)!

【井上】そういうのはそこまで多くはないはず(笑)。実はですね、『中国嫁日記』を始める前に『ダーリンは外国人』からすごく学んだんです。で、何を学んだかというと、そののろけオチなんですよ。「この程度ならのろけてよいのだ」というのを教えていただいたんです。

【小栗】え!

【井上】『ダーリンは外国人』は、トニーさんの描き方が本当に素晴らしい。マンガで配偶者を描くのは難しくて、まず、よく描いてしまいがちなんです。自分の夫はこんなに素晴らしいとか、こんなにかっこいいとか。

【小栗】そうですね~。気をつけるポイントですよね。

【井上】その描き方が小栗さんはうまい。たとえば、トニーさんが美形だとは描かない。でも、「彫りが深い」とは描くんです。これはうまい! これだなと。次にですね、絶対に悪く描かない。普通はケンカしたときなんかに、配偶者がどんなに悪いか描いちゃう。ところが小栗さんは、トニーさんは「こんなに面白い」って言う。こんなふうに考えてるから、この人は面白いと。これは素晴らしい。この二つは、ぜひ真似しようと思いました。そうしたつもりなのに、ご本人からダメ出しが……(笑)。

【小栗】熱弁、恐縮です。ありがとうございます。最終的には、私のも含めてどんなマンガも、こんな家族持ってますっていうのろけになっちゃうのかなとは思うんです。でも、『中国嫁日記』は井上さんの誠実さが出ているから、きっと皆楽しく読めるんですよね。ブログでも、「明日も更新できそうです」とか「次は○月×日になりそうです」とか書かれるじゃないですか。すっごく誠実! ここまで読者のことを考えてる方、なかなかいないです。

実は描かれたくなかった……トニーさんと月さんの意外な本音!

――トニーさんはマンガに描かれていかがですか?

【トニー】うーーーん。描かれなくてもいいなら、描かれないほうがよかった。いい作品ですけど、個人的には描かれたいほうではないんですね。

【小栗】彼はね、これまで私的な部分をまったく見せなかったんですよ。彼が主催したイベントで、私が美術スタッフとして応募して出会ったんですけど、そういう場でまったく私生活をオープンにしない。それを私が日本全国の皆さんにベローンって出してしまっているので、ちょっと悪いなとは思うんですけど。月さんは描かれることについてはいかがですか?

【月】……あんまり好きじゃないです(笑)。普通の生活がほしいので、あまりたくさんのことを皆に見せるのは恥ずかしいです。

【井上】月はブログを更新してから読んでいます。「拍手」ボタンを押すと月の隠しコメントが出るんですよ。単行本でも各4コマにコメントがついてるんですが、それは全部書き直してくれています。

【月】コメントも、読者の皆さんに喜んでもらえるか不安に思いながら書いてます(笑)。

【小栗】コメント、すごくいいですよ。ここにも読者のためを考える誠実さが表われてますよね。

【井上】ありがとうございます。嬉しいなあ。僕は『ダーリンは外国人』こそ読者を楽しませるために描いているマンガだと思っていて、それも非常に勉強させていただいた部分なんです。

移住でより仲良しに マンガはコミュニケーションの手段

――――移住してご夫婦の関係は変わりましたか?

【小栗】トニーはすごい勢いで知り合い作るし、ドイツ語が通じなくてもすごい情熱で相手に伝えようとするし……。ただそれは日本にいるときもそうだったので、やっぱりこういう人だったかと(笑)。でも2人で助け合わないとやっていけないので、仲良くなりましたよ。まあ、8対2で私が頼ってる感じなんですけど。

【トニー】月さんも私もね、相手にいろいろしてあげることは、本当はためにならないかもしれない。そのぶん成長できませんから。移民局とか難しい手続きにはついていったほうがいいけど、郵便局くらいは一人で行ってもらうとか。こちらも少し解放されますし。

【小栗】それはつまり、自分の希望ですよね(笑)。

【月】私はやっぱり逆に心配になりますよ。

【小栗】ですよね。ほら、月さん優しい。井上さんと私、甘えん坊だから(笑)。

――国際結婚してよかったと思うところは?

【小栗】国籍ではなく個人としてどうか、という問題だとは思うんですが、育った環境も経験も違うから、視野が広がるというか考え方の幅が広がりますよね。日本ってだいたい皆、同じように育ってるじゃないですか。同じテレビ観て、似たような学校に通って。でもトニーは当然まったく違うので、そこは面白いなと思います。

【井上】僕は、マンガを描くために月の話をたくさん聞くようになりました。僕自身のことを描いた4コマも何本かあるんですが、それはあまり読者に喜んでもらえない(笑)。だから、とにかく月がどう考えたか聞かないとマンガにならなくて、それは、月自身のことを理解するためにすごく役立ったと思います。皆、マンガを描くようにしたら夫婦関係うまくいくんじゃないかな(笑)。小栗さんは、マンガのためにされていることはありますか?

【小栗】とくにないですね。いつも相手が興味ありそうなことを話すようにはしていますけども。これを話したらどう感じるかなとか、この話を共有したいなとか、そういうことをお互いに楽しみにしながら毎日過ごしていると思います。ただやっぱり、トニーからはつねに予想を超える返事が返ってくるので、飽きないですね。

【井上】そう、『ダーリンは外国人』は間違いなくトニーさんが面白いんですよ。つまり、「私たち夫婦っていいでしょ」でも「私の夫はこんなに素晴らしい」でもない。「私の夫はこんなに面白い!」なんです。本当にナンバー1のコミックエッセイですね。つねに尊敬しています!

【小栗】ありがとうございます。迷ったりすることもあるので、そう言っていただけるととても嬉しいです。私も、井上さんの誠実さを尊敬しています! 日本のオタク男性の夢をしょっていらっしゃる。

取材・文=松井美緒

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ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し トニー&さおり一家の海外生活ルポ

ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し トニー&さおり一家の海外生活ルポ』(小栗左多里、トニー・ラズロ/KADOKAWA メディアファクトリー)

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