大阪のおばちゃんに学ぶあめちゃん処世術 【座右の銘の第1位は「笑う門には福来る」】

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更新日:2014/9/16

 みっちりパワーのつまった小さな体。ヒョウ柄の派手なシャツ。チリチリにパーマのかかったショートカット。商人気質でモノは値切ってナンボ。知らない人だろうと誰彼かまわず話しかけて世話を焼きたがり、何かの折には“あめちゃん”をくれる。

 以上が、大阪をよく知らない筆者(東京出身)の「大阪のおばちゃん」の勝手なイメージである。大阪出身者は別として、同様な像を描く人も多いのではないだろうか。

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 実際に接することを考えると、正直、ご遠慮申し上げたいと思ってしまうが、一方、テレビなどで見る彼女たちの底知れぬパワーに恐れ入るのも事実だ。なにより、だれのフトコロにもスッと入ってしまう、彼女たちのいい意味で図々しいコミュニケーション能力はあっぱれというしかない。

 そこで、大阪のおばちゃんたちの“あめちゃん処世術”を学ぼうと手にしたのが、『大阪のおばちゃんコレクション』(前垣和義:著、ハセガワアヤ:イラスト/玄光社)である。本書は、YOUや小藪千豊、中川家などのインタビューを交えながら、大阪のおばちゃんの服装や行動をイラストとともに分析、紹介している。

 本書を読むと、大阪のおばちゃんたちはポジティブで幸せに生きていきたいというエネルギーに満ちていることがわかる。なんといっても、彼女たちの座右の銘ランキングの第1位は「笑う門には福来る」、第2位は「誠心誠意」「感謝」、第3位は「なんとかなる」なのである。

 どうやら、大阪のおばちゃんたちは人生を幸福にするために、人間関係を良好にしようと、ちょっとした(ときに行き過ぎた)サービス精神を発揮してしまうらしい。では、その行動と、その裏に隠された心理とは? 「素敵すぎるおばちゃんの行動」と称して紹介されている9項目のうち、注目したいのが以下の5つである。

●おせっかい
親切で人情に厚く、他人を放っておけない。道に迷っている人がいれば勝手に教えてくれるし、ひとりで留守番をしていれば家に招き入れてくれる。おせっかいまでは焼く必要はないが、いい人間関係を築きたいならば自分からコミットしたり、他人に愛情を持って接する姿勢とは見習いたい。

●媚びない
名声や権威のある人を前にして、自分のモノサシを判断基準にしている。場面は選びそうだが、明らかに自分が正しいのに不条理な扱いを受けたときなどは、臆せずに理由を尋ねるぐらいの勇気は持っておきたいものである。

●押し切る
粘り強く、一度失敗したことでもあきらめずに、手を変え品を変え挑む。また、その精神で人を励ます。例で挙がっている「もうあかんとおもってからのあんたの底力がすごいって評判やで。土俵際での粘りとうっちゃりを、みんなで見習お、とよく言うてるんや」「もういっぺん、それを見せたろ」という言葉には泣けてくる。

●あめちゃんを配る
知っている人にも知らない人にも、“あめちゃん”を配る習性がある。これは会話のきっかけなどにもなる、大阪のおばちゃんたちにとって立派なコミュニケーションツール。“あめちゃん”でなくとも、相手がちょっとよろこぶものを提供するココロが必要ということか。

●大声で大笑い
大阪人はおもしろいことが好きだといわれるが、おばちゃんも然り。たとえ失敗したり、ハプニングに出合ったりしても、「ネタができた」と笑い話にしてしまうのだ。クヨクヨ考えるぐらいなら「次、がんばったらええやん」と言えるのは、笑いとして消化できているからなのかも。

 なお、あめちゃんは贈り物の部類としてはライトな部類に入るようで、おくりものランキングは1位「高価なもらいもの」、2位「もらいものの果物」、3位「ごはんのおとも」、4位「おかず」、そして5位が「あめちゃん」とのこと。まさに、ちょっとした気配りのような存在なのだ。

 最後に、大阪の女性はいつ“大阪のおばちゃん”になるのだろうか? 大阪出身のアラサー女性が参加した「大阪のおばちゃん予備軍によるアップテンポ座談会」を見ると、「大阪のおばちゃんっていうと、(中略)イメージとしては現役引退したぐらいやから、60代後半ぐらいかな」「息子が30歳超えたぐらいじゃない?」との説が唱えられている。

 大阪に生息し続ける、強く優しきおばちゃんたち。急に彼女たちのようにポジティブにはなれなくても、せめて心にはいつでも“あめちゃん”を携えておきたいものである。

文=有馬ゆえ