ブームの終焉? 「カープ女子」が「カープBBA」になる日はくるのか?

スポーツ

公開日:2014/9/14

 「ブームで終わらせてはいけないんです!」
 プロ野球開幕前のオープン戦試合終了後に、応援団のひとりが叫んでいた。その願いが通じたのか、交流戦で最下位に沈んでも、9連敗を喫しても、球場には多くのカープ女子が詰めかけている。「ブームも本格化か?」と思わせた矢先、カープ女子ブームを終わらせかねないニュースが流れた。

 そう、広島のプリンス・堂林翔太の熱愛発覚である。

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 カープ女子がいなくなり、入場者数やグッズの売り上げが激減してしまうのではないか。
 女性ファンの後押しを失って、チームも定位置に逆戻りしてしまうのではないか。
 選手に思ったような年棒が払えず、菊地や丸、田中ら関東出身の選手が将来、FAしてしまうのではないか…。

 ほんの数秒で、さまざまなネガティブ妄想に囚われる。それは、20年以上も辛酸をなめてきたカープファンならいたしかたのないことだろう。そんな最悪のタイミングで発売されたのが、写真集『カープガール』(正司慎一郎/マイナビ)である。この写真集は、「カープ女子」の火付け役となったブログ「CARP-girl-CARP」の正司慎一郎氏が手掛けたもの。その源流をたどり、「カープ女子」ブームの今後を考察してみることにした。

 この本のいちばんのウリは、カープのユニフォームを来た可愛い女の子たち…なのだろう。しかし、球場でも可愛い女の子など目に入らず「くそボールを見極められない堂林」や「扇風機化するエルドレッド」を応援し続ける私たちにとって、あまり現実的な世界ではなかった。むしろ、目を引いたのは対談記事に詰め込まれた“ホンモノ”のカープファン女子が抱える苦しみや、想いであった。

「ブームになればなるほど“カープ女子=野球を知らないニワカ”みたいに思われることも多くなった」
「“ニワカカープ女子をどう思うか”という質問が野球界を閉鎖的にする」

 俳優に転身したアイドルか。映画監督デビューしたお笑い芸人か。こんなコメントを見ると、相当に嫌な思いをしてきたのだろうと、邪推してしまう。大好きな球団を応援しているだけなのだから、それはそれでいいではないか。世の中に進塁打に拍手できる野球ファンが何人いるのか…。彼女たちを好奇の目で見、ニワカ扱いすることは余計なお世話なのである。

 ちなみに、現在、カープ女子の1番人気は一岡竜司投手なのだとか。「なんだよ、結局イケメンか…」と思うカープファンは一人もいないはずだ。対セ・リーグ球団の防御率0・00(9月12日現在)に加え、カープに来て「ちかっぱよかった」と語り、古巣ジャイアンツへの恩義も忘れない…。そんな“いっちー”はカープファンのすべてに愛されているのだ。

 とはいったものの、結局、カープ女子などというのはブームでしかない。対談に登場した女子のように年季の入ったファンばかりではないし、いずれは去っていく人が大半だろう。でも、それでいいのだと思う。こうしたブームの中から、カープを愛し、プロ野球の楽しさを愛してくれる本物のファンが生まれることはまぎれもない事実なのだから。

 対談の最後は「カープBBAと呼ばれるまで応援できたらいいね」という言葉で締めくくられていた。
 その意気込みは買うし、ともに応援していきたいが、あえて苦言を呈したい。外木場義郎や山本浩二、衣笠祥男、高橋慶彦らに夢中になり、支えてきた大先輩を「BBA」と呼んでは失礼である。呼ぶならば敬意を込めて、「カープ女史」または「カープお姉さま」。そこだけはあらためていただきたい。

文=関口 宏(Office Ti+)