フェイスブック本社にも取材! スマホ世代のSNSいじめ最新事情

社会

公開日:2014/9/16

『ある日、私は友達をクビになった――スマホ時代のいじめ事情』(エミリー・バセロン:著、高橋由紀子:訳/早川書房)

『ある日、私は友達をクビになった――スマホ時代のいじめ事情』(エミリー・バセロン:著、高橋由紀子:訳/早川書房)

 いつの時代もいじめはある。筆者の学生時代もいじめや仲間外れはあり、自分自身も例外ではない。しかし、それは学校の中の出来事であり、放課後や休日はつらさから解放される安らぎのひとときであった。

 最近の子どもたちはどうであろう。インターネットが普及し誰もがSNSを使う今、子どもたちの安らぎの場はどこにもないのではないだろうか。家に帰っても、どこか遠くへ遊びに行っても、いじめや仲間外れは24時間インターネット上で続いている。

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ある日、私は友達をクビになった――スマホ時代のいじめ事情』(エミリー・バセロン:著、高橋由紀子:訳/早川書房)では、アメリカのジャーナリスト、エミリー・バゼロン氏がインターネット上のいじめについて調べたことが書かれている。フェイスブック本社でも取材を行った彼女の話から、日本でも問題化しているインターネットいじめの解決方法を探っていきたい。

■インターネット上のいじめがひどくなる原因とは

 解決方法を探る前にまず、インターネット上のいじめについて知ることが大事だ。インターネット上のいじめは学校で行う直接のいじめよりも大きな問題になりやすい。その理由は大きくわけて5つあるとバゼロン氏は言う。

(1)ウェブ上では常に人々が繋がっているため、いじめから逃げるのが困難である。家に帰っても常にオンライン上で自分がいじめられていることを確認できてしまう。
(2)相手の目を見ることなく、離れた場所から、ひどい書き込みや相手をバカにした写真を送ることができる。加害者側も自分がひそかに行っている感覚に陥りエスカレートしやすい。ハンドルネームなどを使っていると更にひどくなる傾向がある。
(3)聴衆の存在がある。インターネット上でのいじめは現実世界とは違い、たくさんの人が目撃することができる。フェイスブック上でいじめが行われればあっという間に友達の友達までが見ることができ、悪い噂話は広まってしまう。
(4)ウェブにはバイラル性がある。たった1回のクリックで悪意に満ちたスレッドや写真、動画が無制限に送付され、切り貼りされたり、印刷されたりする。ほとんどの場合、それらのコンテンツはネット上にとどまり続ける。
(5)インターネット上では低所得層、黒人の女の子など差別が起こりやすく、所得が低い家になればなるほどネット上で不快な思いをした子どもが多くなる。

 このようなインターネット上のいじめの特徴を考えると、普通のいじめとはまた違った解決方法が必要になってくるのではないだろうか。

■フェイスブック本社に取材

 バゼロン氏はフェイスブック本社に取材を行った。対応したのはいじめやハラスメントに対処するカスタムメイドのツールを開発するエンジニアリングの責任者アルトゥーロ・ベハール氏。

 フェイスブックにはヘイトスピーチ、薬物販売、性的内容などの違反を訴える報告が1週間200万件も来ている。また、ベハール氏はその中の多くはいじめや脅しを訴えるティーンエイジャーのものだと言った。こういった問題に取り組むのはベハール氏の仕事である。しかし、ベハール氏の考え方はそれを改善するべくフェイスブックが動くのではなく、ユーザーが自分たちで動くようにするという見解を持っている。フェイスブックを全知全能の神のように助けを求めてくるユーザーに対して自立を促すというのだ。

「オンラインの生活と現実の世界を分けて考えることはできません。フェイスブックは、人々を統治し、社会規範を強制する立場にはないのです。ユーザーは自分たちでそれをすべきです」とベハール氏は言う。そのためにもフェイスブックでは「フェイスブック・ソーシャル・レポーティング・ツール」というものを用意し、ユーザーが別のユーザーにコメントや写真の削除依頼をできるシステムを作った。ベハール氏いわく、多くの場合ユーザーが別のユーザーに依頼すると写真の掲載削除を自ら行うと言う。このシステムははじめたばかりだがユーザー間で自己解決したケースがほとんどだ。

 しかし、全ての苦情処理が「フェイスブック・ソーシャル・レポーティング・ツール」で処理されるわけではない。自殺を示唆する内容、児童搾取、規定年齢未満のユーザーをチェックする安全管理チームや、本名とメールアドレスが登録されていないユーザーをチェックする真正性管理チーム、いじめやハラスメントに対応するチームなどがフェイスブックの安全を守っている。だが、決して人数は足りておらず報告がスルーされてしまうこともあると言う。

■答えが出ないインターネットのいじめ問題、解決策は?

 インターネット上のいじめは解決策があるものではない。しかし、和らげる方法はあるのではないだろうか。ニューヨークのあるカトリック系の女子高校では生徒たちが自主的に「デリート・デイ」というものを企画した。上級生たちが下級生たちにインターネット上の情報を削除する方法を教えるというものだ。

 公表されると危険な個人情報の削除、フェイスブックでの自分の知らない友人の削除、不適切のコメントや写真の削除などを行う。ある女の子は、男の子の友達とくっつき過ぎている写真の削除を行ったり、会ったことのないフェイスブックの友人をリストから削除していったりした。

 このように子どもたちが自ら行えるインターネット上のいじめの防御策はある。そして親たちにも行えることはたくさんある。しかし、バゼロン氏はまだ親たちがすべきことをできていないように感じている。多くの親は何か問題があればすぐに学校にばかり責任を押し付ける傾向がある。親ができないことを学校だけに期待にするのは良くない。まだまだ学校もインターネット上のいじめ問題いついては手探り状態だ。学校だけで解決するのは不可能であると訴える。

 親も学校も共に歩むべきであり、もっとSNSサイトに対してセキュリティを強化する要求を行ったり、学校関係者、カウンセラーを招いて親とともにどうすべきか考えたりと解決方法はまだまだある。とバゼロン氏は言う。

 インターネット上のいじめ、解決方法は決して簡単には見つからないが、子どもたち親、学校、そしてSNSサイト自体が協力を行うことで何かしら解決策は出てくるはずだ。

文=舟崎泉美