「速読は百害あって一利なし」「ビジネス書よりも古典を」 ライフネット生命会長に学ぶ本の知識を教養にする方法

文芸・カルチャー

2014/9/29

図書館で無数の本に囲まれていると、「一生をかけても、ここにある本すべてを読み切ることはできないのか」と立ちすくんでしまいそうになることがある。だが、そんな焦りで本を読み進めても、何も身につかない。せっかく本を読むならば、自分の血肉となる本の読み方をしたい。一体どのように読めば、本で得た知識を自分自身の生活に活かすことができるのだろうか。

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEOで読書家としても知られる出口治明氏著『本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法』(KADOKAWA 角川書店)では、出口氏がいかにして本の知識を自らのものとしているのかその秘訣を教えている。イノベーションやアイデアのほとんどは、ゼロから生み出されるのではなく、既出のアイデアを借りてきて組み合わせ、使い回しながら生み出されている。出口氏は、思考の材料とするため、教養が必要であることを述べ、教養を身につけるための手段の1つとして「本」を読むことの重要性を主張している。

出口氏はどんなに多忙な時でも週に3~4冊程の本を読むという活字中毒。たびたび「教養のある社会人になるには、何冊ぐらい本を読んだらいいですか?」と質問されるというが、多くの本を読んでも何も心に残らなければ、意味がない。大切なのは、量ではなく質であることを出口氏は主張している。教養を身につけるためには、「本」から学ぶ 、「旅」から学ぶ 、「人」から学ぶ の3つ以外に方法はない。仕事に関する勉強は好き嫌いに関わらずやらねばならないが、その上で、自分が興味をもてるものから始めると良いだろう。特に出口氏は新しい知識を体系的に学ぶためには、それに関する7~8冊の本を読むというマイルールを自らに課している。

たとえば、彼が会社員時代、よくお付き合いをしていた人の中に、ワイン好きがいたことから、ワインについて勉強した時のことである。彼は、図書館へ行って、ワインについて書かれた本を7~8冊借り、分厚い本から読み進めた。分厚い本は、作るのにお金も手間もかかるため、ハズレは少ない。出口氏は、わからない部分があっても、分厚い本を1字1句読み進め、その後、薄い入門書を読むことで、詰め込んだ知識をいっきに体系化させた。そして、本を読み終わったら、実践。これが出口氏のいう「旅」のひとつなのだろう。実際にワインを飲みに出掛け、身銭を切ってワインを飲んだ。そうしているうちに、ワイン好きの相手とも話せるくらいの知識を持つことに成功し、その人からさらなる知識を得たようだ。

・本を読んで全体像をつかむ
・実際に五感で体験する
・人と話をして疑問を解消する

このフローを辿ることで、出口氏は、知識を腹落ちさせ、教養としているのだ。

読書とは、書き手との対話だ。「本を読むこと」と「人の話を聞くこと」は同じものだという出口氏は、速読は百害あって一利なしだと考えている。人との対話には「目次」はないし、聞き飛ばすこともできない。最初の5ページを読んで心に響かなかったものは、人の話を聞くのと同じで切り上げ、読むことはしないが、「読もう」と決めた本については、一字一句逃さないように読み進める。難しい部分は分かるまで読み込んで、何度も読み飛ばすことはしない。そうやって本を読み、内容を咀嚼していくことで初めて、著者の思考のプロセスを追体験することができる。

どのような本を選べば良いのかと悩む人も多いだろうが、出口氏は古典を読むことを薦めている。自らビジネス書も執筆している出口氏だが、ビジネス書を10冊読むよりも古典を1冊読む方がはるかに得るものが大きいという。成功者が書いたビジネス本は成功したという事実があるため、どのようなことが書かれていてもその正当性が保たれてしまう。それに比べて、古典には成功談だけでなく、とんでもない失敗も惜しげなく描かれているため、ケーススタディとして勉強できる。先人の思考を辿ることで、自分で考える頭になれるからこそ、古典を読むことは有益であるのだ。

出口氏は、「本の読み方には個性があっていいし、その個性もまた読書の楽しさ」だと考えている。大切なのは、マイルールを定めること。本を読む自分なりのルールを定めれば、余計なことで悩むことなく、本と向き合うことができる。この本を読むと、本との向き合い方について改めて考えさせられる。出口氏の方法に学びながら、本の知識が身につく読書術を確立させていこう!

文=アサトーミナミ

『本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法』(出口治明/KADOKAWA 角川書店)