【娘を「生ゴミ」と呼ぶ毒母】解決不能?母と娘の複雑な関係性とは

コミックエッセイ

更新日:2015/2/13

 本書には、そんな田房さんさえも驚いてしまうような“毒母”のエピソードがずらりと並ぶ。たとえば…

【ともこさん(37歳・OL)のケース】
 ともこさんの母親は何事もすべて「娘のせい」にする“毒母”。ともこさんが幼かった頃は、何をしてもまずビンタが基本。ともこさんのことを「生ゴミ」と呼ぶこともあったとか。挙句、ともこさんが病気にでもなろうものなら、「あんたが悪いから病気になるんだ」と毎日責め、薬も勝手に捨ててしまうという傍若無人っぷり。そんなともこさんは、ある雨の夜、居間にいる両親を「殺す」と思ってしまい、慌てて家出を決行。そのまま、6年会っていないそうだ。

【花絵さん(44歳・主婦)のケース】
 花絵さんの母親は、幼い娘に家事を押し付け、自身の恋愛話(それもかなりキワドイ系)を語って聞かせるなど、かなり激しいタイプの“毒母”だった。しまいには、親戚の集る席で「娘のヌード撮影会をしよう」と言い出したり、「これ盗ってきちゃった」とマニキュアを万引きしたりと、もはや犯罪者…。

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 そんな幼少期を過ごした花絵さんが「娘の愛し方」を知らないのも当然の話。自分の娘に対して「幸せな子供生活を送っていてずるい」と感じることもあったそうだ。けれど、自分の母に足りなかったものを埋めてくれる存在=エア母と出会い、不安定な精神状態が改善。いまでは娘といい母娘関係を築けているという。

 本書では、13人の内、男性がひとりだけ登場する。その男性の母親は、田房さんと同じような侵略型の“毒母”。しかし、田房さんとは異なり、現在でも母親と交流があるとか。男性の場合、相手が“毒母”でも、「なんだかんだ自分を愛してくれている」と寛容できてしまうのかもしれない。そう考えると、「母と娘」というのは「女同士」でもあり、そこには男性には理解できない歪んだ感情が渦巻いているのだろう。

 男性であるぼくが、「母と娘」の大変さを本当の意味で理解することは叶わないのだと思う。けれど、本書を読んで思ったのは、「もしも母親に苦しめられている人がいたら、逃げ出すことも悪いことではない」ということ。もちろん、それは生半可なことではない。罪悪感に苛まれることもあるだろう。しかし、自分の人生は、自分のもの。“毒母”から逃げ出した人を誰が責められるだろうか。少なくともぼくは、そういった人たちを応援したいと思う。

文=前田レゴ

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