斉藤和義、古田新太の考える「大人」とは? CM「大人エレベーター」の深すぎる言葉の真意
公開日:2014/10/12
ミュージシャン・斉藤和義は「大人とは?」という質問に対してかくのたまう。
「さんまの内臓食える人、みたいな…」
その深すぎる言葉に、「いったいどういうこと?」と首をかしげた人も多いだろう。
サッポロ生ビール黒ラベルのCMシリーズ「大人エレベーター」。妻夫木聡が「大人エレベーター」なるものに乗り込んで、各階で階数に応じた年齢の芸能人と「大人」をテーマに語り合う。なんだかいいことを言ってそうだったけれど、15秒のCMはあまりにも短く、その真意は謎だった。実は、CMではごく一部が放送されており、実際には長い時間対談が繰り広げられたらしい。それを1冊にまとめたのが、『大人エレベーター』(扶桑社)。さて、45歳の斉藤和義は何を言っていたのだろうか?
妻夫木「自分は大人だと思います?」
斉藤「あのね、俺の場合、仕事も趣味のような遊びのようなって感じじゃない。だから、大人って言われてもあんまり今まで意識したことがないのよ。年が年だから、大人のふりをしているけど、自分はずっと子どもの延長にいるような気がするな」
妻夫木「「ああ、そっか」
斉藤「だから……大人とは、サンマの内臓食える人くらいしかイメージがない(笑)。肉より魚派とかね」
「大人とはこうだ!」と確固たるものとして捉えていないということらしい。あまり物事にとらわれず、“適当”でいることが彼の信念のようだ。とはいえ、適当に遊んでばかりで、売れっ子ミュージシャンになれるはずもない。では、斉藤和義の生き方とは?
斉藤「人生って、すごくカッコよく言えば、死ぬまでの暇つぶしなんだろうなっていう気がする。でも、ただ暇つぶししてるだけじゃつまんないから、好きなことやってたほうが楽しいし、どうせ死ぬんだしって思うとやりたいことやってほうがいいなって思うんだよね」
こんな風に人生を捉えられたら、窮屈に感じる毎日から解放されるかも。仕事も人間関係も義務じゃない。“人生の暇つぶし”と思えば、肩の荷がおりそうだ。
一方で、もっとまじめに「大人」をとらえている人も。「誰にも縛られなくないし、誰にも心配されたくない」とCMで語っていた46歳の俳優・古田新太は、「大人」についてこう答えている。
古田「例えば、昼間っから飲んでるジジイがいたら『年金で飲んでんだな』と思う。となると『やっぱ年金ちゃんと払おう』と考える。で、年金もらうためには、年金制度をちゃんとしてくれる政治家を選ばなきゃいけない。そうしたらちゃんと選挙に行こうってなる。縛られないためには、ちゃんとしなきゃいけないんだよ。そう考えるあたりから大人になるんじゃないかな」
妻夫木「「すごい説得力がありますね」
古田「(中略)昔の小説とかでよく『俺は社会の歯車になりたくない!』みたいな言い回しがあるでしょ」
妻夫木「「はい」
古田「いや、なれっつーのな。大人なんだから、きっちりした歯車になっていけって思う。そこが滞っちゃったら、社会がダメになるでしょ」
個性的な役柄が多いことからやんちゃな印象だが、彼は役者になるために若い頃から努力を積み重ねてきたまじめな人物。大人になるからにはその責任を果たし、「社会の歯車」にもなるという潔い考えをもつ。そうすることで、はじめて自由に生きられるということだ。
そして、「大人エレベーター」の最年長、77歳の俳優・仲代達矢は、子ども心をもった大人になれたら、と話す。
仲代「年を取ると自然と少し子どもに近づいてきますよ。なんだろうな、だんだん欲望がなくなったり、なんか子どもに戻ったような気持ちになったりしますね」
妻夫木「子どもに返るんだ」
仲代「ええ」
妻夫木「じゃあ、大きな円を描いているような感じですかね」
仲代「はい」
1周回って、「大人」は「子ども」に戻るという。なんだ、じゃあ無理して「大人」になることはないのかも。いや、多くの芸能人が回答に詰まっていたように、迷い迷った果てに何かが見えてくるのか…。本書にはここで紹介した3人の他に、リリー・フランキー、スガシカオ、佐野元春、高田純次、奥田民生、白鵬(!)らも登場。ちゃんとした「大人」とやらになっているのかどうかわからないけれど、ビールジョッキを片手に「今が一番いいとき」と言えたら幸せかも。
文=佐藤来未(Office Ti+)