主役は折り紙のヨーダ! 米国発、今一番子どもが読むべき1冊の内容とは

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

「やってみるのではない、やるのだ。」「恐れはダークサイドにつながる。恐れは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へつながる。」「学んだことを捨てるのだ。」「フォースと共にあらんことを!」。ジョージ・ルーカス監督作品「スター・ウォーズ」シリーズが長らく老若男女問わず、幅広い年代の人々に愛されるのは、個性的なキャラクター達が心に響く言葉の数々を届けてくれることに一因があるのだろう。特に身長66cmのジェダイマスター、ヨーダは、私たちに強烈なインパクトを残している。もしも、身近に彼が存在してくれたら、どんなに心強いことだろうか。いつも正しい道に導く言葉をくれるヨーダに会いたい。そんなことをいう子ども達もきっと多いに違いない。

アメリカの作家トム・アングルバーガー著、相良倫子訳の『オリガミ・ヨーダの研究レポート』(徳間書店)は、タイトルの通り、『スター・ウォーズ』のヨーダにヒントを得て書かれた児童文学。この作品はアメリカで高い評価を受け、「ニューヨーク公共図書館が選ぶ子どもの本100冊」に入ったほか、ノースカロライナ・チルドレンズ・ブッグ賞をはじめ、たくさんの賞を受賞した、世界でシリーズ600万部という話題作だ。なにより子どもたちの人気も絶大。オリガミでできたヨーダの数々の予言はホンモノなのか。その真偽を確かめようとする子どもたちの姿を、アルグルバーガー氏は、いきいきと描き出している。

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舞台はアメリカのマクウォーリー学園。6年生のトミーはおかしな言動ばかりするクラスメイトのドワイトをもてあましていた。だが、ある日、ドワイトが折り紙で作ったヨーダの指人形が、クラスのあらゆる人の悩みを解決し始める。とはいえ、オリガミ・ヨーダを動かして話しているのは、あくまでドワイト。変わり者のドワイトが自分で考えて話しているのか。それとも、オリガミ・ヨーダがドワイトの口を借りて話しているのか。トミーはその真相に迫ろうとする。

オリガミ・ヨーダを指にはめたドワイトにしても、主人公のトミーにしても、学園の中ではあまりイケてない男子たちだ。ドワイトはそんなことなど気にかけないが、トミーは自分にあまり自信を持てずにいる。トミーは同じ学園のサラに憧れを抱いているが、一歩を踏み出せないでいる。しかし、「気があるぞ、サラはお前に。大いにのう。」というヨーダの言葉を聞いて、トミーはサラに思いを打ち明けるべきか否か思い悩む。大切な初恋を成功させるためにも、恥をかかないためにも、オリガミ・ヨーダがホンモノなのか、ニセモノなのか、しっかりと見極めなくてはならないのだ。

ズボンの股の前の部分がぬれてお漏らししたと思われそうになったとか、ソフトボールで三振ばかりだとか、抜き打ちテストがあったとか、他の生徒たちの悩みも大人からすれば、ちっぽけなものばかりだ。しかし、子どもたちにとっては全てが一大事。自分も子どもなりの悩みがあったことを思い出して、ふと懐かしくなる。生意気なハーヴィー、泣き虫のマイク。周りの目ばかり気にしているクアボンド。この本を読んだ人は誰でも「こんな奴クラスにいたよなぁ…」などと思うに違いない。オリガミ・ヨーダを生み出した変わり者のドワイトの本音もところどころで漏れ聞こえてくる。「たった今、ボクのこと、むかつくやつ、っていわなかったっけ? そんなこという人を、ボクのヨーダが助けると思う? だいたい、みんな、ヨーダにききたいことがあるときだけ、やさしくするんだもん。やんなっちゃうよ」。読者も気が付けば、トミーと一緒にオリガミ・ヨーダの謎を解こうと必死になり、知らぬ間に学園中の人達と仲良くなっている自分に気がつくはずだ。

本の中で、トミーの友人ケレンが書いた落書きという設定になっているイラストも愛らしい。作者のアングルバーガーが自ら描いた挿絵だという、可愛く味のある絵に目を奪われるだろう。

「スター・ウォーズ」は世界各国多くの人々に愛され、2015年には待望のシリーズ7作目が公開される。この本は、映画とともに、子どもと一緒に読みたくなる作品。親子であれこれと学校でのこと、些細に思えるだけど、大きな悩み事を語り合いたくなること間違いない作品だ。

文=アサトーミナミ

『オリガミ・ヨーダの研究レポート』(トム・アングルバーガー:著、相良倫子:訳/徳間書店)