「アニメにしたかった物語」 舞城王太郎コメント全文掲載! 

マンガ

公開日:2014/11/11

龍の歯医者

「龍の歯医者」キービジュアル
2014 舞城王太郎/nihon animator mihonichi, LLP.

 ドワンゴ、カラーの日本アニメーションの可能性を探る共同企画「日本アニメ(ーター)見本市」において、2014年11月7日(金)より、第1弾作品「龍の歯医者」(監督:舞城王太郎、アニメーション監督:鶴巻和哉)が公開されている。

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 公開を記念して11月10日(月)22時から「ニコニコ生放送」で特別番組が放送された。番組では、鶴巻和哉氏、亀田祥倫氏、氷川竜介氏(アニメ特撮研究家)などを迎え、それぞれが作品に込めた思いなどを語った。番組内では原案、脚本、監督を務めた小説家・舞城王太郎氏のコメントも発表された。ここでその全文を紹介しよう。

舞城王太郎監督 コメント全文>

 アニメーション業界では初めまして。舞城王太郎と申します。物語の受け取り方について、読者、視聴者、観客の方々の解釈を限定したくない、狭めたくない、独自性を確保したいという気持ちから姿も声もできるだけ出さずにお仕事をさせていただいています。とは言えせっかくのイベントに参加せずにすみません。失礼をお許しください。

 小説、マンガ、実写映画やドラマ、そしてアニメなど、物語にはいろんな表現の方法があって、それぞれに、それじゃないと踏み込めない領域や、見せられない情景や、獲得できないリズムや、飛び込めない世界観というものがあるんじゃないかと考えています。言い換えればそれぞれにそれぞれの味があります。同じ物語でも表現によって味わいの違いが生まれ、上手くいけば膨らみと深みと喜びと楽しみを大きくするはずだと思います。

 今回参加させていただいた『龍の歯医者』は是非ともアニメにしたかった物語です。その気持ちの詳細をここで語るのは、そもそも皆さんの前に出てこない理由を台無しにするのでやめますが、ご覧になっていただければご理解いただけるんじゃないかと思います。

 や~~~、と、くだけた口調で申し上げますが、表現方法の選択で、実際的に異なるのは単純にそこに関わる人数と時間で、小説なら一人、マンガなら一人から数人、実写映画やドラマなら登場人物分の役者と必要な分のスタッフが関わりますが、アニメは登場人物の一挙手一投足にたくさんの描き手が必要です。登場人物がヨッと手を挙げる動作なら、小説ではそう書くだけ、マンガなら一コマ、実写なら役者とスタッフ揃ってもらって数時間仕事、アニメは絵コンテ描いてレイアウト決めて原画を描いて動画を描いてそれをチェックしてひょっとしたら直して色塗って背景塗って重ねて撮影して何かの失敗や不具合が出たらリテイク取って撮影し直し、という過程にいろんなスタッフが関わり続けます。大変です。た~~~~~~いへんです。いやもうホント、小説でなら「よっ、」のひと言なのに。

 でもその大変さを経て表現するアニメにしか獲得できない味わいが確かにあるのです。それを求めて、そしてそれを極めるべくこれからも大勢の人たちが頑張るわけですし、舞城王太郎自身も精進していきたいと思います。

 同時に、鶴巻さんを始めカラーの皆さんとアニメを作らせていただくというのはひたすら楽しい時間を過ごすことです。その喜びも今回の『龍の歯医者』から伝わりますように。

 ・・と、込めた思いの一つがぽろっと漏れましたが、あとは内緒ということで、ではでは、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました!(舞城王太郎

 

 第1弾作品「龍の歯医者」は、『阿修羅ガール』や『好き好き大好き超愛してる。』等の作品で知られる“覆面小説家”こと舞城王太郎氏の初アニメーション作品となる。

龍の歯医者

■「龍の歯医者」少女
©2014 舞城王太郎/nihon animator mihonichi, LLP.

龍の歯医者

■「龍の歯医者」美術ボード
©2014 舞城王太郎/nihon animator mihonichi, LLP.

<第1弾タイトル「龍の歯医者」概要>

【作品名】龍の歯医者
【原案・脚本・監督】舞城王太郎
【アニメーション監督】鶴巻和哉
【キャラクターデザイン】小坂泰之
【キャラクターデザイン・作画監督】亀田祥倫
【声ノ出演】山寺宏一 林原めぐみ
【音響監督】山田陽(サウンドチーム・ドンファン)
【効果】野口透(アニメサウンド)
【音楽】小山嘉嵩
【編集】李英美
【アニメーション制作】スタジオカラー

<ストーリー>
 少女は、龍の歯医者になるためにそこにやってきた。他の新人志願者とともに集められたのだが、案内役の先輩からは何の説明もない。困惑したまま引き連れられて、暗く怪しい新人専用の通路を進んでいく他ない。今の自分の居場所も判らない。これから何をすべきなのかも知らないまま、少女は龍の秘密へと近づいていくが、そのことにも気付いていない。冒険は既に始まっているのに。

<日本アニメ(ーター)見本市 とは?>
 「日本アニメ(ーター)見本市」とは、スタジオカラーとドワンゴが贈る短編映像シリーズ企画。様々なディレクター陣による、オリジナル企画・スピンオフ企画・プロモーション映像・MusicPVなど、ジャンルを問わず愛と勢いで創りきる数々のオムニバスアニメーション作品を毎週金曜日に1話ずつ公開。
⇒「日本アニメ(ーター)見本市」公式サイト