この冬の家飲み。グロかわいい“大根おろしアート鍋”はアリか?ナシか?

食・料理

公開日:2014/11/12

 そろそろ忘年会や新年会の季節である。仕事絡みの飲み会なら、飲み放題つき5000円以下2時間半といった店飲みスタイルが今年も主流だろう。しかし家飲みのほうは、どうやらちょっと様子が違う。「冬の家飲み=鍋」が王道だが、鍋は鍋でも、鍋中からにょきっと白くまが顔を出している鍋が流行しているというのである。

■ 鍋トレンドに異変。Twitter発のアート鍋ってなんだ!?
この白くま鍋は昨年Twitterにアップされた画像から始まった。白くま好きの女のコの誕生日会(家飲みスタイル)で、主役を喜ばせようと即興で作った大根おろしの白くま。これが「かわいい〜」「おもしろい!」「癒される」と反響をよび、あれよあれよとその日のうちに2000以上もリツイートされ、どんどん拡散されていった。一夜にして大根おろしアーティストの誕生である。そしてこの白くまに触発されて、大根おろしであれこれ作っては個人ブログやインスタグラムなどで写真をアップする人たちが増え、今ちょっとしたムーブメントになっているのだ。それらの人気作品をまとめた書籍が『大根おろしアート』(主婦の友社)だ。第一人者であるきみまろっく氏の新作アート作品や話題作を集め、作り方と作品を作るに至った経緯や周りの反応等のエピソード等が細かく紹介されている、本格的なレシピ本なのだ。

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■大の大人がこぞって大根おろしの造形にドハマりする魅力とは
本の中に登場するのは42点の作品。モチーフは様々で、なにもかわいいキャラばかりだけではない。めんつゆ色にほんのり染まった大根おろしのオバマ大統領が白い歯をのぞかせて笑っているかと思えば、ファミコンゲーム・ポートピア殺人事件で一世を風靡した“犯人はヤス”のダイイング・メッセージを残した時代な死体、きゅうりのすりおろしを混ぜて作ったカエルがでーんと鎮座する、グロ系鍋も登場する。

 これらを大の大人が大根おろしでせっせと造形する姿は、想像するだけでなんだか愛くるしい。「大根おろしで腕や頭などの各パーツを作ったら、水けを多く含んだ大根おろし少々を使って接着します。プラモデルを作る際のパテの要領です」とは、きみまろっく氏。そう、大人たちは、子供時代に夢中になったプラモデルや紙粘土の楽しさを大根おろしで追体験しているのである。出来上がりを想像するときの高揚感と完成後の達成感。そして披露したときの周囲の盛り上がりもハンパないようで「子どもたちが大喜び」「おばあちゃんに見せたら腰をぬかすほど驚いていました」「家族みんなで崩しながら食べるのも楽しいんです」(本書より抜粋)と、供する相手に喜ばれるのは間違いないようだ。原価100円以下、何度でもやり直しがきくといった手軽さも相まって、アート作品作りに挑戦する人たちは増殖中。新しいおもてなしのスタイルとしてこの冬試してみるのも楽しいのでは?

 そしてこの本、“Greated Daikon Radish Becomes Hot-Pot Art”という見出しでウォールストリートジャーナル海外版にも紹介されたというから驚きだ。日本発の大根おろしアートがN.Y.の和食屋でお目にかかれる日もそう遠くないのかもしれない。

文=林もりお