高城剛が考えたハイパーにもほどがある近未来像

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

ハイパーメディアクリエイター・高城剛が、2035年の未来を100項目で予測! と聞いただけで、大半の人が「トンデモ本」の類だと思ってしまうだろう。

確かに本書『2035年の世界』(高城剛/PHP研究所)、ツッコミどころが満載である。なにしろ、「2050年に人類の平均寿命は100歳を超える」(01 超健康より)と、タイトルが『2035年の世界』なのに、冒頭からいきなり2050年の話だし!!

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そのほか、「分子モーター技術によってサイボーグ化した人類“ハイパーヒューマン”が誕生。将来は、サイボーグ化したハイパーヒューマンによるオリンピックも開催される」(08 ハイパーヒューマンの誕生より)

「まばたきで写真が撮れる“コンタクト・デジカメ(コンデジ)”が登場する」(14 コンタクト・デジカメより)

「人々はいずれ家を持って移動するようになる」(24 移動可能な家より)

「自動車は道を走るものという常識は、もう古いかもしれない」(32 空飛ぶ自動車より)

「首都圏では、今後30年以内に70%の確率でマグニチュード7の地震が起きる」(59 大地震が起きる日)

などなど、要点だけを抜き出すと、見事なまでのトンデモぶり。敢えて言わせてもらえば、昭和時代の子ども向け雑誌に載っていた「100年後の未来大予言!」を読んでいるかのような、ワクワク感に満ち溢れた1冊となっている。プロレスファンなら、冬の風物詩イベント「ザ・グレート・サスケの大予言」を連想していただくと、本書の素敵ぶりが伝わるに違いない。

さりとて、高城が本書にまとめた100の未来予測は、どれも決して荒唐無稽なものではない。たとえば、これまで“未来”を代表するキーワードの筆頭だった「空飛ぶ自動車」は既に実用化され、一般販売も予定されていることを知っている人は多いはず。また、「コンデジ」や「移動可能な家」だって、現在の技術をベースとすれば、実現不可能とは言えないだろう。

むしろ、本書で注目すべきは、リアルとヴァーチャルの境界を意識せず、自在に世界を見聞してきた高城ならではの視点にある。そもそも近年の識者による「未来予測」は、その多くが悲観的なトーンになりがちなもの。受け手側にも、むしろそれを望んでいる節があったりする(身に覚えがあるでしょ?)。

もちろん高城の予測にだって、ネガティブな項目がいくつも含まれている。しかし、それらも完全に悲観的なトーンとならないのが彼氏のユニークな特性。今ある技術や知識をハイパー・ハッピーに展開させた先にある世界とは…? これが高城の志向する未来像なのだ。

「ユートピア」という言葉には、表裏2つの意味があるという。結局のところ、どの識者が行う未来予測だって、たどり着く場所は同じなのかもしれない。同じ阿呆なら踊らにゃ損々。どうせなら思いッ切りハッピーな未来を夢想したほうが、世の中明るく暮らせるのではないだろうか? 信じれば夢は叶う、という言葉もあるじゃないですか。

文=ホープ敏郎