ヘンな間取り図を愛でるイベント「間取り図ナイト」の仕掛人を直撃

暮らし

2014/11/19

 まさかの隣人との共用トイレや、何に使うか思わず首をかしげてしまうような長〜い収納など、いわれてみればおもしろいヘンな間取りをテーマにしたイベント「間取り図ナイト」が盛況をみせている。2014年も、東京、大阪、長野、静岡、鳥取、岡山と様々な都道府県で開催されたが、著書『間取り図大好き!』(扶桑社)などを手がけてきた仕掛人・森岡友樹さんにイベントの様子や間取り図についてのお話を伺った。

 さて、第1回の開催から7年の歴史を持つ同イベント。はじめに、そのきっかけは何だったのだろうか。

「『間取り図大好き』というコミュニティを、mixiで2004年9月に立ち上げたんですよ。どんどん参加者も増えて、活発に交流するようになり、6万人くらいになったとき東京カルチャーカルチャー(ニフティ株式会社の運営する飲食可能なライブイベントスペース)から“イベントにしましょう”と声をかけて頂き、発展していきました」

 mixiの黎明期であった当時、誰もがサービスの手ごたえを模索していた頃に、幾つかのコミュニティを立ち上げていたという森岡さん。そのうちの一つが「間取り図大好き」だった。世間ではまだ「拡散」という言葉も使われず、Twitterが産声を上げる前であり、ちょうど米国でFacebookの前身が誕生した時期でもある。間取り図片手に呑み、語らうというオフ会を経て、ヘンな間取り図を“魅せる”イベント『間取り図ナイト』が産声を上げた。

「初めてイベントを開催したのは、2007年10月でした。初回はお客さんが知り合い含めて8人くらい、その中でもお金を払ってくれたお客さんは5人くらいでした。収容規模100人ほどの会場ですが、4人ずつのテーブルで離れて座っている中、協力スタッフも含めた10人そこそこの人たちが、次々と繰り出されるスライドに大爆笑していたのを覚えています。その後、数少ない参加者の方々がクチコミで広めてくれて、2回目(2008年2月 開催)からは、およそ100人規模の地方公演も含めてほとんどチケットが完売するようになりました」

実際の「間取り図ナイト」のひとコマ。スライドの順番も前振りがあり、オチがありとお笑いのネタのように綿密な構成を練っているという。

 2回目から爆発的に参加者が増えた背景には、参加者たちの「クチコミ」の影響力があったようだ。当時は、SNSやネットそのものの影響力も少なく、掲示板や各種チャットサービスが隆盛をきわめていた時代でもある。ネット自体もかすかに「アングラ」の一部として捉えられていた頃だが、結果として、参加者たちの芯から揺さぶるような“おもしろさ”があったからこそ、一大イベントへと発展していったのだろう。

 そして、東京カルチャーカルチャーでの本公演だけではなく、「間取り図ナイトツアー」として日本各地で全国的にも開催されているが、実際に参加するお客さんたちの様子も伺ってみた。

「当初は、おもしろいモノや変わったモノを追いかける人たちが中心でしたが、3回目辺りから比較的若い人たちもめだつようになりました。イベント自体が認知されるにつれて、女性の参加者が6~7割を占めてきたイメージがありますね。一人か二人での参加、または、男女のグループでうち半分が女性の場合も多いです。なかには熱心に追いかけて下さる方もいて、東京と鳥取で見に来てくれたり、引っ越しのたびに東京と名古屋、大阪と参加してくれた人もいました」

 7年もあると「引っ越しする人って意外と多いことに気づきました」と振り返る森岡さん。間取り図とはいえその根本にあるのは「住空間」というキーワードだが、生活に根ざしたものだったからこそ、多くの人の興味を惹きつけたのだろう。

 そして現在、一人のマドリストとして、間取り図をどのように楽しんでいるのかも伺ってみた。

「ヘンな間取り図もありますが、そもそも間取り図そのものが好きなんですよ。間取り図から生活を想像する中で、たまたま“ちょっとこれだと生活しづらいよね”というのに目が行くんですね。間取り図だけではなく、建築図面からも住宅が建てられた背景を想像するときがあります。例えば、洗面所のユニットが一畳なのか二畳なのか、どのサイズが選ばれているかをもとに、敷地面積やそれぞれが配置された理由を考えるとおもしろいんですよ。絵画のように、想像しながらどれほど読み込めるかで楽しみも広がると思います」

 例えば、風呂場があるのに脱衣場がなければ「なぜ?」と疑問が浮かぶ。しかし、そのわずかな違和感を間取り図から読み取れるかどうかが重要で、気づければなにげない間取り図もとたんにおもしろくみえてくる。

 イベント『間取り図ナイト』は今後も継続的に開催されるほか、現在、全国各地より開催地も募集している。書籍やイベントを通してマドリストとしての楽しみを見つけるのはもちろん、「わが町にぜひとも来てほしい!」と思う方は、ぜひとも問合せてみてほしい。

◎『間取り図大好き!』(扶桑社)

 ヘンな間取り図をテーマに森岡さん、住宅都市整理公団総裁の大山顕さん、フリーライターの大塚幸代さんがひたすらツッコミを重ねるイベントを元にした書籍。
「書籍は『間取り図ナイト10~書籍化ライブ! ベストオブ間取り図ナイト!~』(2012年10月 開催)の内容を、ほぼそのままに再現しています。当日はもともと書籍にする前提で、スライドや会話のテンポもなるべく短くするよう心がけたため、私と大山、大塚の3人の会話をライブと同じ空気で感じられると思います。参加したことのある方は実際の現場を想像しながら、参加したことのない方は足を運んでいただき、帰ってからもう一度読み返せばまた楽しめる内容になっていると思います」(森岡さん)

◎facebookページ「間取り図ナイト

取材・文=カネコシュウヘイ