「賛否両論すべてを受け止める準備がある」 安達祐実×宮木あや子対談

映画

2014/11/22

 第5回「女による女のためのR‒18文学賞」で大賞と読者賞をW受賞した宮木あや子のデビュー作『花宵道中』が映画化された。ヒロイン・朝霧を演じるのは安達祐実。芸能生活30周年という節目に、彼女がこの作品を選んだ理由とは? 主演女優と原作者がそれぞれの胸の内を語る。

――映画化の話はいつ頃から動き出したのでしょう?

【安達】 オファーをいただいたのは昨年の5月くらいですね。原作を読ませていただき、朝霧のキャラクターも含めて素敵な小説だなと感じました。演じるにあたっても、情熱を込めてやれそうだという予感がありましたね。

【宮木】 私は日にちまではっきり記憶にあります(笑)。2013年5月22日、富山に居て喫茶店に入ったときに担当編集者から「映画化が決まりそうです!」と電話を受けたことをすごく覚えていますね。

――主人公の遊女・朝霧を安達祐実さんが演じると聞いて最初はどう思いました?

【宮木】 大丈夫かな、と。可愛らしすぎるんじゃないかという不安がありました。だって朝霧って原作でも地味な女性として描いているんですよ。それなのに安達祐実っていったらもう“国民の娘”じゃないですか。だから「ブサイクメイクとかしてくれるのかな?」とか考えちゃって。

【安達】 (笑)

【宮木】 私ね、安達さんの出演作では『シンデレラは眠らない』(2000年放送のテレビドラマ)が好きなんですよ。ヒロインに嫌がらせをする、すっごい意地悪な役を演じていたじゃないですか。それまでのイメージと全然違ったことにびっくりしたので、すごく印象に残っています。本当に力のある役者さんだな、と。

【安達】 ありがとうございます。確かにあれはすっごい嫌な女の役でした(笑)。

――思い切った役への挑戦という意味では、安達さんにとっては今回の『花宵道中』がこれまでで最もチャレンジングだと思います。芸能生活30周年という記念すべき年に、この作品を選んだ理由は?

【安達】 いつか遊女を演じてみたいという気持ちは以前からあったんです。でもそれ以上に、30周年という節目にこれまでとは違う、思い切った役を演じてみたいという動機が一番強かったですね。『花宵道中』は純愛ストーリーだと思っていますが、遊女の物語である以上は大胆なシーンも当然ある。それでも女優として変わっていかなきゃいけない時期だと感じていましたし、今の自分ならその役に挑戦することで起きる賛否両論の反応すべてを受け止める準備があると思ったので、演じることを決めました。

―― 宮木さんは撮影現場を見学されたそうですね。いかがでしたか?

【宮木】 映画って1シーンにこんなにも時間をかけて撮るのか、というのがまず驚きでした。それから現場の緊張感もすごく伝わってきましたね。でも、ものを作るってそういうことですよね。何をやるにしても緊張感がないといい作品はできない。あと……現場、すっごい寒かったですよね?

【安達】 そうですね。12月の撮影だったので。裸足だったり襟を抜いているシーンも多かったので、外での撮影のときは寒かったですね(笑)。

【宮木】 そう、衣装も重いから肩凝るだろうし、つらいだろうなぁって……ごめんなさい、素人目線で。でも本当に感慨深かったです。小説って基本一人で書くものだから。編集者にかまってほしい作家はたくさんかまわせるんだろうけど(笑)、そういうのが申し訳ないと思う作家は家でずっと孤独に書いているんですよ。

【安達】 そうなんですか。

【宮木】 はい。私はひたすら家にこもって孤独に書いているタイプなんです。でもそんなふうにして一人で書き上げたものが、他の人たちの手によって解釈されて、新たな作品が生み出されていく。その結果として、私の頭の中にあった映像とはまた別のものになったりもするんですけど、ああこういう解釈もあるのか、というのが興味深かったです。

―― 今回の映画化に際して、キャスティングや内容に関して宮木さんから何かリクエストはあったんですか?

【宮木】 いえ、基本はお任せです。多分どの作家もそうだと思うんですけど、自分の手を離れた時点で作品はもう自分のものじゃないと思っているので。読者の手に渡ったら、それはもう読者のものなんです。あ、でも一点だけ。芸術映画にはしないでくださいとお願いしました。

――それはなぜでしょう?

【宮木】 芸術映画って一歩間違うとただの自慰行為なんですよ。せっかく芸歴30周年という記念の年に『花宵道中』を選んでくださった安達さんに、そんなのに付き合わせるわけにはいかないと思って。だからちゃんとストーリー性のあるドラマにしてください、というのはお伝えしました。

取材・文=阿部花恵/『ダ・ヴィンチ』12月号「文庫ダ・ヴィンチSPECIAL 宮木あや子の世界」より

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2014年12月号

KADOKAWA メディアファクトリー
定価600円(税込) 電子版500円(税込)

・第1特集 男の恋愛
星野源 相葉雅紀 戸次重幸
岡村康幸×カンニング武山、どぶろっく×一徹
穂村弘 平山瑞穂 朝井リョウ
・第2特集 本好きは猫も好き!
・第3特集 僕達には西加奈子がいる。

※安達祐実さんと宮木あや子さんの対談の続きは
ダ・ヴィンチ12月号の「文庫ダ・ヴィンチSPECIAL 宮木あや子の世界」をチェック!


『花宵道中』

原作/『花宵道中』(宮木あや子/新潮社)
監督/豊島圭介 出演/安達祐実、淵上泰史、小篠恵奈、高岡早紀、友近、津田寛治 配給・宣伝/東京テアトル 11月8日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
江戸末期の吉原。どんな男に抱かれても心を閉ざし、空っぽな日々を送っていた遊女・朝霧(安達祐実)。あと1年で年季明けという頃、神社の縁日へと出かけた朝霧は、染物職人の半次郎(淵上泰史)と出逢う。曇りのない彼の眼差しに射抜かれ、生まれて初めて恋のときめきを感じる朝霧。だが遊女にとって恋愛はご法度だった──。