子どもは見ちゃダメ!? ホラー漫画家・伊藤潤二が描く「本当に恐ろしいポケモン」の姿

マンガ

更新日:2014/11/20

伊藤潤二

「ポケモンだいすきクラブ」公式サイトより

 あなたは「ホラー漫画」を読んだことはあるだろうか。血しぶきが飛び散る残虐な描写、おどろおどろしい化け物の姿、訳もわからず死んでいく登場人物たち…。個人的に、理解不能で不気味な展開が続くホラー漫画が大好きで仕方ない(あまり賛同を得られないけれど)。そして、そんな作品を描いたら右に出る者はいないという漫画家がいる。伊藤潤二氏だ。

 氏が描く作品は、とにかく「理不尽」に満ちている。代表作ともいえる「富江」シリーズは、その最たるものだろう。富江シリーズを端的に説明すると、出生に謎を秘めた美女・富江と、彼女に恋をする男たちが狂っていくさまを描いた作品だ。

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 富江の魅力に取り憑かれた男たちは、最終的に彼女を手にかけてしまうのだが、どんなにバラバラにしても彼女は蘇る。身体を細かく刻んでも、やがてその肉片がひとつずつ別人格の富江として再生するのだ。そして、彼女に恋をした男たちはそれぞれ凄惨な最期を迎える。

 読んでいて一番怖いのは、理解不能な富江の存在ではない。彼女に憑かれた男たちの姿が、読み手の心をざわつかせるのだ。理不尽な世界のなかで少しずつおかしくなっていく人間は、どんな化け物よりも恐ろしい。氏の作品は、終始そんな恐怖に彩られている。

 そして、そんな伊藤潤二氏の作品を愛する者には驚愕のニュースが届いた。なんと、氏が「ポケモン」とコラボしたというのだ。そう、子どもたちに大人気の「ポケモン」と。…もうまったく意味がわからない!

 ということで、詳細をチェックしてみると、どうやらポケモン情報サイト「ポケモンだいすきクラブ」内の1コーナーである「本当は怖い? ポケモン」にて、コラボイラストを発表しているよう。どれどれ、どんなイラストなのかな?と見てみると…これが想像以上に怖い!

 第1弾では、新しい人形を大事そうに抱える女の子を、背後から恨めしそうに見つめる「ジュペッタ」が描かれている。この「ジュペッタ」はポケモンの公式説明によると、「捨てられたヌイグルミに恨みがたまってポケモンになった。自分を捨てた子どもを探すぞ」とのこと。…こりゃ恐ろしい。こんなポケモンが自分を探しまわっていたら、トラウマもんでしょう!

 第2弾で描かれているのは、長く伸びる舌を女性に巻きつけ驚かしている「ゲンガー」の姿。血走った瞳には狂気の色が浮かんでいる。ちなみに、「ゲンガー」の公式説明は「夜中、人の陰に潜りこみ少しずつ体温を奪う。ねらわれると寒気が止まらない」。…もうこの時点で寒気が止まりませんよ!

 そもそも、ポケモンにはこのように恐ろしい公式設定が数多く存在する。たとえば、「ブルンゲル」というポケモンは「ブルンゲルの住処に迷い込んだ船は沈められて、乗組員の命は吸い取られてしまうのだ」というガクブルの設定だし、「デスカーン」というポケモンに至っては、「近づいた人間を飲み込んでミイラにしてしまうというウワサ。金塊を好んで食べる」といった始末。すべてのポケモンがピカチュウのように愛らしいわけではないのだ。

 そう考えると、ホラー漫画家・伊藤潤二氏の世界観とポケモンのダークサイドな側面は、思いの外相性がいいのかもしれない。…子どもが見たら泣いちゃうでしょうけどね。ぼくも夜中には絶対見ません!

ポケモンだいすきクラブ
本当に怖い!? 伊藤潤二先生が描くスペシャルコラボ

文=前田レゴ