「朝食を作れるようになったのが小さな幸せ」 元日テレ 馬場典子アナが初エッセイを出版

文芸・カルチャー

2014/12/4

  • 馬場典子

 日本テレビの看板アナウンサーとして活躍してきた馬場典子さん。2014年6月末に退社してフリーランスとなった“馬場ちゃん”が、先月、初のエッセイ本『ことたま』を出版した。彼女が多くの人からもらった「言葉」を通し、どうやって壁を乗り越えて成長したのか? 驚くほど率直に、心の内を打ち明けた一冊だ。これまでの想いを書ききった彼女に、現在の心境含め、話を聞いた。

―300ページ近い大作でしたが、ここまでの分量を書き上げて、今どんなお気持ちですか?

 執筆と手直し期間で3カ月余りでしたが、あっという間でした。今まで溜めこんできた想いを一気に放出した気分(笑)。フリーになったら、アナウンス以外の仕事もやってみたいと思っていましたが、まさに今までやったことのないことへの挑戦でした。今後、こんなふうにフリーランスとして、新しい仕事に向き合っていくんだろうなという予感と体感に満ちた3カ月だったと思います。

―フリーになろうと決めたきっかけは、何だったのでしょうか?

「ひと通りのことが、ひと通りできるようになったから」というのが大きかったです。入社したばかりのころは点数が悪くても必死に勉強をして、勉強をした分だけ点数が取れる時代がやってきて、でも苦手科目はまだあるから勉強を続けて……という日々でしたが、気付いたらある程度のところで及第点が取れるようになっていた。そのことに、不安を感じるようになったんです。この仕事が好きだし、一生続けていきたいのに、今の私は努力をしていないぞって気が付いた。でもフリーになって、今また1年目の新入社員のような気分です。まだ私も一生懸命、夢中になって仕事ができるんだなって。

  • 馬場典子

―馬場さんがイキイキしているのは、課題や目標を都度設定して、気持ちを新陳代謝するのが上手からなのだと感じました。

 課題っていうほど立派なものじゃないんですけどね。昨日した失敗は二度とやらないようにしようとか、小さなことを心がけてきました。私、人の役に立っていないと不安なんです。自分がハッピーであることは前提ですが、自分だけが幸せなのはアンハッピー。アナウンサーの私が誰かの役に立てるとしたら、それはニュースを視聴者に分かりやすく伝えられたり、スタッフが思う以上の形で伝えられたりしたとき。その目的を叶えるために、いつも課題を見つけてきた気がします。

―とくに、欠点やコンプレックスのような「弱み」を丸ごと受けとめていらっしゃる印象を受けたのですが、どう向き合ってきたのですか?

 今、私がクリアですっきりとした頭でいられるのは、自分なりにごちゃごちゃと考えてきた結果だと思うんです。そのために、できるだけ自分の欠点を受け入れようとは思ってきました。よくなろうとか、うまくなろうという想いが強すぎると、できないことを否定的に見てしまう。欠点はあくまで、そのときの強化科目! 課題として乗り越えていけばいいのに、ダメなところだって思ってしまうと自信をなくしてしまいますよね。そんなとき「馬場ちゃんも同じように悩んできたんだから、私も大丈夫かな」って思ってもらえる本になれば嬉しいです。

  • 馬場典子

 

―本書には馬場さんが成長するきっかけになった、人からもらった「言葉」がたくさん登場します。こんなに素敵な言葉をもらえていいなと羨ましくなるほどでしたが、記録していたのですか?

 本当に深く心に刺さった言葉って、覚えているものなんですよね。だからメモはしませんでした。どんな想いで、どれだけ私を思って発してくれたのか、その背景にあるものまで想像させられる言葉ほど、記憶に残ると思います。本でも、先輩である徳光和夫さん(※)とのエピソードを載せましたが、徳光さんは心配して「いつどんなふうに言おう」ってずっと考えていてくださったんだと思うんです。その想いも含めて汲み取れたとき、受け取った言葉がはじめて立体的に感じられてきました。

  • 馬場典子

―「今が一番幸せ」と書いていらっしゃいますが、フリーになった今の「幸せ」とはどんなことでしょうか?

 小さな幸せは、朝ごはんを作れるようになったこと!  大切にしたい日々の営みのひとつがきちんとできる、って大切なことなんだと実感中です。あと、先日美容師さんに言われたのが「『仕事のなかに生活がある』人が多いけれど、馬場さんはフリーになって『生活のなかに仕事がある』ようになれたんだね」という言葉。仕事が好きで忙しいと、仕事だけでどんどん年月が経ってしまって、人生のことを考えないで、見て見ぬふりして過ごせてしまう。でも、人生を大切にちゃんと生きていきたいですよね。だから、生活のなかに仕事がある、それが今の幸せです!

(※)「徳」は正しくは旧字体 「心」の上に「一」が入ります

取材・文=富永明子 撮影=山本哲也

 

ことたま

ことたま

(馬場典子/実業之日本社)

…幸せは、自分のこころが決める 今が一番幸せ。

“馬場ちゃん”の愛称で親しまれ、朝の情報番組『ZIP!』から、スポーツ、報道、パラエティ他、数多くの看板番組でも長くキャスターを務めた、元日本テレビの人気アナウンサーの馬場典子さん。「なぜアナウンサーになったのか」、アナウンサーになってみて「学んだこと」「教わったこと」「これからのこと」など、初めて明かすアナウンサー人生17年間の熱い想い。――――初の書き下ろしエッセイ本。