局アナ内定取り消しで疑問に思った“清廉性のある職業”とは? 人に言えない女の仕事の実態は?

社会

更新日:2014/12/12

   

 女子大生が日本テレビを提訴して話題となった、局アナ内定取り消し問題。「(元ホステスという経歴は)高度の清廉性が求められるアナウンサーに相応しくない」という日テレの主張に対し、週刊誌やネット上では「職業差別に当たるのでは」といった指摘も挙がり、11月14日に初弁論が行われた裁判の行方に注目が集まっている。

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 今回の件で、日テレから公式に“清廉性のない職業”認定されてしまったホステス。しかし、そもそも清廉性のある職業とは何なのだろう? 清廉とは「心が清らかで私欲がないこと」(大辞林より)という意味だが、女子アナに清らかさを求めている人がそれほどいるだろうか。ネットユーザーを対象にアンケートを実施してみた(※対象:全国10~60代の男女100人/期間:2014年11月26日)。

質問は2つ。

Q1「アナウンサーは清廉性が求められる職業だと思いますか?」に対しては、「そう思う」と答えた人が47.7%に上り、「そう思わない」(30.7%)、「どちらでもない」(21.6%)を上回った(有効回答88人)。この数字をどう捉えるかは人それぞれだが、「アナウンサーは清らかであるべき」と考える人は確かに一定数いるようだ。

Q2「あなたが思う“清廉性が求められる職業”は何ですか?」に対しては、フリーアンサーで多様な回答が集まった。多数意見は以下の通り。

1位 政治家(「議員」「総理大臣」含む) 21票
2位 宗教関係者(「僧侶」「尼さん」「巫女」「神父」「宮司」など含む) 20票
3位 裁判官 15票
4位 教師 14票
5位 アイドル 12票

 以降に警察官(8票)、看護師(7票)と続くほか、少数意見ではホテルマン、弁護士、キャビンアテンダント、保育士、受付嬢なども見られた。やはり人々の意識の中にはある程度、“清廉であるべき職業”という概念が存在するようだ。

女王様のギャラはM嬢の2倍? 転職にも役立つ情報満載

 一方で、今回やり玉に挙げられた水商売をはじめ“清廉性がないと見なされやすい職業”もある。その代表格が女性の性を売る仕事だろう。コミック『人に言えない仕事をしています。』(つかさき 有/宝島社)では、こうした職業に従事する女性に取材を行い、リアルな実態に迫っている。

 本書は愛人/ガールズ居酒屋/ソフト風俗/SMの女王様/スナックのママ/ヌードモデル/ご当地アイドル/ピンクコンパニオン/復縁屋/サクラの10職種について、10人の女性を主人公とするオムニバスマンガで紹介。さらにギャラの相場や業界の展望、情勢などを調査し、コラムとしてレポートしている。転職を視野に入れて調べでもしない限り、普通の生活を送る上では知り得ない情報が満載だ。

 たとえば「スナックのママ」は一般的に月収30万円程度だが、中には保険の外交レディと兼業し、スナックの常連客から保険契約をとることで高収入を得るツワモノもいる。「ヌードモデル」の事務所には美術系・AV系・風俗系の3種類があり、美術系が衰退の一途を辿る一方、性的サービスを行うこともある風俗系ヌードモデルの需要が高まっている。「愛人」は手当の相場が暴落し続けており、最近では月3~10万円程度が一般的。収入を確保するため、セックスに課金制(挿入2万円など)を導入して毎回15万円以上を手に入れるプロ愛人もいる…などなど。

 印象的だったのが「SMの女王様」のエピソード。たとえば女王様のギャラは、同じSMクラブに所属する“M嬢”と比べて2倍以上になるらしい。受け身でいられるM嬢に対し、女王様は客の許容範囲を想定しながら次の展開を考える必要があり、「バカでは務まらない」ためだ。ムチや縄などの道具を使いこなすにもスポ根的な訓練を要する。近年は“素人系”女性が人気の風俗業界において、唯一“プロフェッショナル”が求められているのがSMの女王様なのだという。

 どの職業も存在は知っているものの、「知り合いがやっている」と思い当たる人は少ないだろう。なぜなら、これらは“人に言えない仕事”とされているから。しかし本書を読むと、彼女たちのプロ意識や見えない努力、リスクと覚悟、人生設計など、あくまで一職業として理性的かつ真摯に取り組む姿が見えてくる。自分の心に潜む偏見にも気付かせてくれた本書と、日テレの内定取り消し問題。月並みではあるが「職業に貴賎なし」という言葉を胸に、裁判の行方を見守りたい。

取材・文=ハットリチサ