ブライアン・オーサーコーチが語る羽生結弦の強さとは

恋愛・結婚

2014/12/14

   

 ソチオリンピックの金メダル、世界選手権優勝、グランプリシリーズ中国大会での衝突事故と、今年は名前を聞かない日はないのではないのかというほど話題に上った羽生結弦選手。

 どの試合に出ても注目されてしまう羽生選手だが、それは、もちろん強さゆえ。ジュニア時代から活躍していた彼だが、ブライアン・オーサーコーチに師事したここ数年は見るたびに強くなっているように感じられる。

 オーサーコーチが自ら語った著書『チーム・ブライアン』(ブライアン・オーサー:著、樋口 豊:監修、野口美惠:訳/講談社)から、羽生選手の強さの秘密を探ってみよう。

■チーム・ブライアンとは

 キム・ヨナ、羽生結弦と2人の選手に金メダルをもたらしたブライアン・オーサー。現在はコーチとして活躍する彼だが、元々はサラエボオリンピックとカルガリーオリンピックで2度の銀メダルを手にしたトップフィギュアスケーターだ。引退後プロスケーターとして17年過ごしたオーサーだが、キム・ヨナが訪れたことによりコーチ業に専念する。
 オーサーコーチの拠点は「トロント・クリケット・スケーティング&カーリングクラブ(クリケット・クラブ)」。トロント屈指の会員制スポーツクラブであり、クリケット、スケート、カーリングの他にもテニス、スカッシュ、プールなどさまざまな施設がある。オーサーはクリケット・クラブでチーム・ブライアンを結成する。
 チーム・ブライアンの中心メンバーはカルガリーオリンピック・アイスダンス銅メダリストのトレーシー・ウィルソン、振付師のデイヴィット・ウィルソン。その他、世界選手権チャンピオン ジェフリー・バトル、バトルを育てたリー・バーケルなどそうそうたるメンバーが揃う。

■羽生選手がチーム・ブライアンと出会い強化されたこと

 羽生選手といえば、体力が課題とされてきた。シニアはジュニアに比べて演技の時間が長くなる。シニアからジュニアに上がった当時はスタミナが持たないため後半、不安定な場面も多く見られた。
 そんな羽生選手に向けてオーサーコーチが行ったのは、体力作りではなくスケーティング技術の向上だった。オーサーコーチは「彼は喘息で体力もないため、滑りでムダな体力を使ってはいけません。スタミナをつけさせるよりも、スタミナを使わない滑りを身につけさせるのが正解だと思いました」と記す。また、「このスケーティングの強化はジャンプの安定性にもつながり」4回転ジャンプも安定したという。
 その他にも常に全力でスケーティングする羽生選手は、試合終了後リンクの上に倒れてしまうこともあった。審判は見所がある緩急のついた演技を好む。常に全力で演技に取り組む彼の美学を尊重しながらも、ソチオリンピックに向けては落ち着く部分は落ち着いた緩急のある演技を行うことを目標とした。

■羽生選手とハビエル・フェルナンデス選手

 チーム・ブライアンと言えば、羽生選手の他にハビエル・フェルナンデスというトップスケーターがいる。羽生選手とフェルナンデス選手の仲の良さは有名だ。リンクの中や外での2人の仲睦まじい様子は、厳しいスポーツの世界でもほっとする瞬間という人も多いのではないか。彼がチーム・ブライアンにいることにも羽生選手の強くなった秘密があった。
 全くタイプの異なる2人。羽生選手は常に全力であり全ての試合に勝とうとする。一方、フェルナンデス選手は緊張感が続かない。そのため、常にリラックスした状態で試合に望む。また、常にマスコミから注目されている羽生選手は、常に失敗したくないという意識があり練習も全力で行う。しかし、のんびりした性格のフェルナンデス選手は、練習で転んでも気にしない。そのまま氷の上で寝そべり、靴が悪いのかもしれないとおどけたパフォーマンスをしてみせる。
 そんな2人にオーサーコーチは「ハビエルは愉快でユヅルは一生懸命です。ハビエルにとってはユヅルと競い合うことで練習への集中力が上がりました。ユヅルにとっては、ときに自分を追い込みすぎたときに、ハビエルが心の安らぎになったと思います」と語る。2人のトップ選手は互いに良い相乗効果をもたらしている。

 羽生選手の強さの理由は、素晴らしいチーム、素晴らしいコーチング、素晴らしい仲間にあった。そしてそんな素晴らしい環境を提供できるブライアン・オーサーコーチも素晴らしい。本書を読むと、競技だけに固執しないブライアン・オーサーの人柄の良さも感じられる。

 今シーズンも、まだまだはじまったばかり。読んだ後は、羽生選手だけでなく、チーム・ブライアン全体の活躍に注目したくなる1冊である。

文=舟崎泉美