不妊治療、特別養子縁組 ――「妊活」に苦しむ現代女性の生き様

出産・子育て

公開日:2014/12/22

 最近、雑誌を開けば必ずといっていいほど、「妊活」という言葉が目につく。それも、主婦向け雑誌だけではなく、女性ファッション誌はおろか、男性誌にまでその言葉が侵食してきている。そんなにみんな妊娠したいのか? 結婚すれば自然と授かるもんじゃないの? そんなぼくの浅はかな考えを打ち砕いたのが、仲の良いアラサー女子が発した一言。「女にはリミットがあるからね」。

 そう、確かにそうだ。でも、やはり現実味がわかない。頭では理解できていても、ぼくら男性にとってはどこか他人事のような感覚がある。そこで、手に取ったのが、『私、産めるのかな?』(小林裕美子/河出書房新社)。これは、「妊活」ということに真摯に向き合った女性の姿を描いたコミックエッセイだ。作中に登場するのは、未咲、柊子、葉子、明日美の4人。彼女たちはそれぞれに理由を抱え、悩んでいるのだ。その生き様とは――。

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【未咲のケース】
 未咲は、盆暮れ正月の帰省時期が近づくと、憂鬱になる。それは、姪っ子や甥っ子の成長を見せつけられるのがツライから。そのたびに未咲は「この場から消え去りたい」と追い詰められてしまう。いよいよ、本格的な不妊治療を始めるために、精密検査を受けたところ、判明したのは夫の「乏精子症」。不妊の原因は夫にあったのだ。けれど、治療を始めても、妊娠・流産の繰り返し…。結果として未咲は、夫と二人で生きていくことを決意する。

【柊子のケース】
 仕事や趣味など、自分の時間を大切にしたい柊子は、未婚で彼氏もいない。これまで、家族を持つということを具体的に考えてこなかったが、幼なじみが母親になったことを機に、考えるように。けれど、婚活パーティに参加してもしっくりこない。恋愛ってどうやるんだっけ?そこで、興味の対象はパートナー探しではなく、卵子を凍結保存する「卵活」へと向いていく…。

【葉子のケース】
 結婚したら三人の子どもが欲しい、と願っていた葉子。ところがあるとき、病気により子宮を全摘出することに。目覚めるたびに思うのは、「私、もう子どもが産めないんだ」。けれど、「特別養子縁組」という制度を知り、養子を迎えることに興味を持ち始める。夫や両親に理解してもらうところからスタートし、ついに迎えた他人の赤ちゃん。血のつながらない子どもを愛せるの? という質問に、自信を持って「愛せるよ」と答える姿は、まさに母親である。

【明日美のケース】
 夫婦ともに大きな原因を抱えているわけではないのに、子どもができない明日美。本格的な治療を始めれば金銭的な負担も大きくなることから、子どもを作ることを諦めるようになる。夫と二人きりの老後も楽しく乗り越えられそうだ。けれど、ともに励まし合っていた妊活仲間が、病気で子どもを産めなくなってしまったことを知り、再び自身に問いかける。私はどうしたいの? 結果、体外受精にトライし、もう少し頑張ることを夫に告げる。

 本書は、男性にこそ読んでもらいたい1冊だ。妊娠というと男性側は他人事のように捉えがちである。けれど、それは女性だけが悩み苦しむものではなく、男性も同じように抱えてあげるべきことなのだ。未咲、柊子、葉子、明日美の4人は決してファンタジーの存在ではない。女友達や恋人、奥さん――ぼくらが気付いていないだけで、彼女たちは身近なところに存在しているのだ。それに気付いたとき、ぼくらに何ができるのか。本書を読みながら、じっくり考えてもらいたい。

文=前田レゴ