男の色気は50から!? 今再燃する“カレセン”ブームの謎を解く

恋愛・結婚

公開日:2015/1/3

 
 ひところ、芸能界で男性が20歳以上年下の若い女性と結婚する“年の差婚”ブームが続いて、世の男性の羨望を集めた時期があった。

 しかし昨年後半に入って女優の仲間由紀恵さん(35)と俳優の田中哲司氏(48)、テレビ東京・大江麻理子アナ(36)とマネックス証券社長兼同グループCEOの松本大氏(51)と、30代女性×アラフィフ男性の“年の差婚”が続いて話題をまいた。著名人の例をひきあいに出すのは少し性急かもしれないが、働く30代女性とアラフィフ男性は意外に親和性が高いのかもしれない。

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 その背景をひもとくヒントになりそうなのが、『カレセン ―枯れたおじさん専科』(アスペクト)だ。6年前と少し発売は前だが、その視点は現代にも通じている。その名のとおり、“50代以上の枯れたおじさん専科”=カレセン女性たちにより編纂された一冊で、“アンチ・アンチエイジング”を良しとしている。つまり「オレたちイケてるオヤジだろ?」と、加齢にあらがう殿方ではなく、年齢を受け入れ“ほどよく枯れたオヤジ”に焦点を当てているのだ。

 たとえば男の“枯れた”魅力を探る巻頭グラビアには、こんなフレーズが並んでいる。

「携帯やメールに依存しない」
 ここから想像されるのは、まだ携帯が存在しない時代に人生の全盛期を過ごした世代ならではの、コミュニケーション力。

「金や女を深追いしない」
“欲の処理の仕方”を心得ている、ガツガツしないスケール感。欲はあるけど、それに振り回されない。欲を制御できないタイプと比較すると、格段に魅力的だ。

「人生を逆算してみたことがある」
 逆算したことのある枯れオヤジは“今、この瞬間”を丁寧に生きていると思われる。おそらくそのスタンスは、人間関係においても同様なのではないか。

 本書の編纂者たちによる「カレセン座談会」のコーナーでは、枯れオヤジに惹かれる理由について「“かなわねぇな”って思いたい。どうしても同世代の男子に対してはツッコミモードになってしまう」「枯れてる人って、自分にいっぱいいっぱいじゃないから好き」などと語られている。そして「萌えのひとつの形態として“カレセン”というジャンルが存在する」とも。

 多少のファンタジーが含まれていることも感じつつ、実際にその象徴としてインタビューページで取り上げられた“枯れオヤジ”たちの名前を上げてみよう。笑う哲学者でありお茶の水女子大学名誉教授の土屋賢二氏、落語家の柳家喜多八氏、漫画コラムニストの夏目房之介氏、ジャーナリストの有田芳生氏、俳優の故・蟹江敬三氏等々。バーにしろ居酒屋にしろ、みなさん一枚板のカウンターが似合うような濃ゆい面々である。

 土屋氏が「熟年が輝くなんて、形容矛盾であり得ない」と笑い飛ばせば、喜多八氏は「噺家のピークってのは、60~70歳。年を取って花開く」と加齢(aging)の醍醐味を語り、「もうそろそろ、楽しいことしかやりたくない。(中略)これ以上金銭的なものは望まない。それより楽しいことを優先する」と、夏目氏が涼やかに言い放つ。

 大人がカッコいいという価値観はすでに崩れ去り、しかし、若い=いいこととも言いきれない。目指す指針が見えにくい時代において、枯れオヤジたちの言葉からは、壁を突き抜け、超越した何かがかいま見える。

 その他「ヒットマンガの枯れオヤジ名鑑」「オノ・ナツメの描く老眼鏡紳士とシワの魅力」等のマニアックなコンテンツや、「カレの晩酌に一役買いたい! 激シブおつまみ」「おじさん年齢早見表」などの実用的な企画が投入され、萌え企画と実用ページが渾然と展開される。

 しかし本書を閉じたときにふと、思い出されるのは、やはり枯れオヤジたちの含蓄のあるお言葉だ。有田氏は、読者に向けて最後にこう語っている。「小説、詩、映画、音楽などを楽しむ“ゆとり”を意識して作ること。(中略)キラリと輝く人間になるためにです。ギラギラではなくキラリ」。そこがポイントなのだそうだ。

 ちなみに、表紙ほか本書内でモデルをつとめているミュージシャンの戸田吉則氏がとてもシブイ。枯れオヤジ、あなどるべからず。

文=タニハタマユミ