「生殖に適した年齢はいつの時代も変わらない」「妊娠に安定期はない」 産婦人科医が語る「産活」の真実

出産・子育て

2015/1/8

産婦人科医の丸田佳奈さん

 2012年、日本国内における母親の平均初産年齢がついに30歳を超えた。それどころか周りを見回せば40歳以上の初産も珍しくない。そのため何の根拠もなく「私も高齢出産できる」と考えがちだが、『間違いだらけの産活』(丸田佳奈/学研パブリッシング)によると「その考えは甘い」という。また、医学的には間違っていることが一般的には常識としてまかり通っているらしい。そこで本書を執筆した産婦人科医の丸田佳奈さんに、今どきの妊婦に対する思いや、妊娠・出産の間違った常識について伺った。

  

10カ月間ベッドの上で寝た切り生活を送れますか?

 現在、総合周産期母子医療センターを併設する大学病院に勤務する丸田医師。日々、普通の産婦人科や助産院では受け入れられないような高リスクの妊婦たちと向き合ううち、「間違いだらけの産活」を執筆することを思い立ったそう。

「私のところに来るのは、年齢が高かったり、持病があったり、母体搬送されてきたりするいわゆる高リスクな妊婦さんばかりなんですが、そうした人の中には自分が想像していたような妊婦生活を送れなくて不満やわがままが出てきてしまう人も少なくないんですね。実際の例ですが、“もう帰ります、赤ちゃんのことはもういいです”とか“ここにいることのほうが私の体には良くない”なんて無責任なことを言い出す人までいて…。母子ともに危険な状態だというのにそんな発言をしてしまうのは何故かと考えた時、知識がなさすぎるせいなのではと思ったんです。それで高リスクな妊婦さんと日々向き合っている私ならではの目線から、こういう状況は特別じゃない、あなたにも起こり得るんだということを世の中の女性皆さんに知っておいてほしい、という思いを込めてこの本を書こうと思いました。極端な話、妊娠するのであれば“10カ月間ベッドの上で寝た切り生活を送れますか?”という質問にイエスと言えるくらい覚悟が必要ということを、もっと皆さんに持ってほしいというところから始まったのです」

“自分も40歳以上で良い“という考え方は間違い

 最近特に増加傾向にある、高齢妊婦についてはどんな思いがあるのだろう。

「年齢と共に妊娠の確率は徐々に下がり、とりわけ35歳以上になると、その確率はさらに低下し、また妊娠中のトラブルも増えます。高齢での妊娠は今の社会では仕方のないことですが、何の情報もなく生活していると気付かないうちに妊娠に適した時期を逃してしまい、後悔しかねません。前もって情報を知った上で、リスクを背負ってまで高齢で出産をするのか、早めに産んでおくのかを考えて人生設計をして欲しいですね。安心して妊娠・出産をするためにも、進学・就職といった人生設計の中に妊娠・出産を組み込んで欲しいということです」

 続けて、20代後半の自分の展望が分かってきたところで妊娠・出産を含めた自分の目安を決めておくことが大切と丸田医師は語る。そして高齢になればなるほど厳しい現実が待っている、ということを頭のどこかにおいてほしいという。

「妊娠・出産は、本当に覚悟が必要なこと。若い人はトラブルも少なく妊娠期間を経過して出産する人が多いですが、高齢だと赤ちゃんの染色体異常が起こりやすく、また妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症も多くなり、お産も難産になりやすいんです。実は妊娠の最初から最後まで気が抜けないんです。総合的に考えると35歳までを一段階として考え、その年齢を目安に焦りはじめて良いと個人的には考えています。最近は芸能人が高齢で出産した、という話題がたびたび流れますが、最初から“自分も40歳以上で良い“という考え方はやめてほしいですね」

医療が進歩しても、生殖に適した年齢だけは変わらない

 最近の出産の傾向としては、女性が仕事でキャリアを積むことが普通になってきたことで晩産化に拍車がかかり、高リスクな妊婦が増えている印象があるという。

「仕事に打ち込む女性は妊娠にちょうど良い時期に働いてしまうので、20代の終わりでそろそろ結婚をと考えはじめて、数年で結婚したとしても35歳に近づいた頃にいざ妊娠・出産を計画しても、なかなか妊娠できない、意外と時間がないんだと気付く…という人が多いですね。高齢になるにつれてなんとなく妊娠しにくくなることは知っていても、他人事で“私は大丈夫”という考えがどこかにあったり、真剣に考えていないところがあるのかなと思います。やっぱり知識不足なんですね」

 若いころは妊娠しないように一生懸命ピルを飲んでいたのに、いざ赤ちゃんが欲しいと思ってピルの使用をやめてみても、全然妊娠できなくて焦る…というようなケースも多いそう。

「時代が変わっても、医療が進歩しても、生殖に適した年齢だけは変わらないので、そこもきちんと考慮して欲しいんです」

現代人は、昔より妊娠しにくくなっている?

 高齢になるにつれて妊娠しにくくなるほか、染色体異常などのリスクは高くなると言うものの、若いからといってリスクがないとは言えない、と丸田医師。

「20代で不妊治療している人もいますし、男性で精子の数が減ったり元気がない人も増えています。環境因子もあるのかも知れませんが、昔に比べて妊娠しづらい方が増えていると感じています。いわゆる“妊活”はその後の“産活”に続いていきますから、妊娠したらこうなるという情報を仕入れた上で、今の妊活で良いのか、いつまで続けるかを考えておいて欲しいですね。例えば45歳になったけれど、今産んで良いのかとか、もし妊娠・出産において予想外のことが起こった時に自分と家族はどう対応していくのかということも含めた上で、出産を考えてほしいのです。この本を読むことでそうしたことを考えるきっかけにもなるはずです」

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