「Project Itoh」始動 故・伊藤計劃作品が劇場アニメに!

マンガ・アニメ

2015/1/15

 2009年に34歳で夭逝した小説家・伊藤計劃。彼が遺した長編小説『虐殺器官』『ハーモニー』は、共に多彩なSF的ガジェットに緻密でハードな世界観、そこから生まれてくる深いテーマ性を持った物語で、今なお多くのファンに愛されている。11年には英訳版『ハーモニー』がアメリカのフィリップ・K・ディック記念賞の特別賞を受賞し、12年には芥川賞作家・円城塔が伊藤の遺稿となった30ページの序文から『屍者の帝国』を完成させて刊行、第33回日本SF大賞の特別賞を受賞している。「Project Itoh」は『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』に続くノイタミナムービー第2弾で、この『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』のすべてを劇場アニメ化し年内に公開するという、今年のアニメ・SF界を席巻するであろう一大プロジェクトだ。この企画のチーフプロデューサー・山本幸治氏に話を聞いた。

伊藤計劃さんの『虐殺器官』『ハーモニー』を読んで、その天才的なストーリーテリングに打ちのめされました。ジョン・ポールとミァハという強烈なキャラクターを追いかける縦軸と、人間の精神や科学技術という深いテーマを接合する手腕は、ハリウッドからも映像化のオファーが来て当然だと思わせるレベルです。今回の映像化は、企画を決める瞬間に、覚悟を必要とするものでした。ノイタミナではテレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』でもテレビとしてはギリギリの激しい表現に挑戦していますが、「Project Itoh」は、それ以上に激しい描写が必要になるでしょう。攻めるというより、当然のように淡々と激しさを描くタイプのフィルムになるだろうと予想しており、そういう意味でもテレビより映画向きな作品だと考えています」

「Project Itoh」全3作のキャラクター原案は人気イラストレーターのredjuiceが担当。そしてそれぞれの監督と制作に、『虐殺器官』には村瀬修功監督とmanglobe、『ハーモニー』にはなかむらたかしとマイケル・アリアスのダブル監督とSTUDIO 4℃、『屍者の帝国』に牧原亮太郎監督とWIT STUDIOを起用。この錚々たる製作陣にいやがうえにも期待は高まる。

「村瀬修功さんは世界レベルのクリエイター。彼の監督作である『Ergo Proxy』を見ていただければ説明は不要でしょう。コンテの時点で、ものすごい映像センスが光っています。そして、対極に思えるなかむらたかし監督とマイケル・アリアス監督。『AKIRA』に代表される日本的な作画アニメの頂点と『アニマトリックス』的な世界標準の映像表現、このふたつの融合をぜひ見てみたいです。牧原亮太郎監督とは、ノイタミナで『フラクタル』『四畳半神話大系』『ギルティクラウン』でご一緒しています。彼がコンテ・演出を担当した『フラクタル』の7話は、シリーズを通して一番の出来で、その読解力と世界観を構築する力に脱帽しました。その力が発揮されることを期待しています」

 かつて冬の時代とまでいわれていた文芸ジャンルとしてのSFを、再び盛り上げるきっかけにもなった伊藤計劃作品。この劇場アニメ化でSFというジャンルを超えて、さらなるファンを獲得することは間違いないだろう。

「僕自身はSFについてそれほど詳しくないのですが、SFでしか描き得ない、テーマの深さというものがあるのは確信しています。社会性にしても、人間性にしても、フィクションのひとつの究極がSFなんだろうと思っています。そんな中で伊藤計劃さんの作品ならではの魅力は、その名前が表すように受け手が何かに巻き込まれていくようなスリル感。ひとつの巨大な大嘘を軸に社会や人間の真相を掘っていく様が秀逸です。そして、絶望感や厭世観というネガティブな感情と深いところで人間や生命を愛おしく思う気持ちを感じます。今回はどの作品もそんな伊藤計劃イズムを受け継いだ映像作品になると期待しています。正直、気軽に見に行くタイプの作品ではないですが、それでもどうか気軽に見に行ってください」

 今年は改めて伊藤計劃作品が大きな注目を集める年になりそうだ。日本のSF界に多大な影響を与えた、その圧倒的な想像力にひとりでも多くの人が触れてほしい。

取材・文=橋富政彦