映画『海月姫』公開記念 東村アキコ×篠原ともえ対談

映画

2015/1/17

「オタク女子」の持つパワーを見事に描いた人気マンガ『海月姫』が映画化され話題を集めている。
原作者の東村アキコさんと、オタク女子集団「尼〜ず」のジジ様役を演じた篠原ともえさん。
マンガ家、衣装デザイナーと物作りに情熱を傾ける二人だからこそ語り合える「オタク女子の楽しさ」とは?

――篠原さんは、原作のイメージそのままのジジ様を演じていらっしゃいましたね。失礼ながら一見篠原さんとわからないくらいの完璧な再現性でした。

【篠原】 撮影中に東村先生が見学にいらしたんですが、しのはらと気づいてくださらなくて(笑)。ご挨拶したらすごく喜んでくださって、そのリアクションが力になりました。原作にキャラクターがしっかり映し出されているので、その中に飛び込むように楽しく演じられました。

【東村】 月海(つきみ)役の能年さんをはじめ出演者の皆さん素晴らしかったんですけど、私の周りのマンガ関係者は第一声で「ジジ様すごい!」って言う人が多かったんですよ。私も、「でしょ、でしょ」って。ジジ様はマンガでもキーパーソンで思い入れのあるキャラクターなんです。一見影が薄いんだけど、実は尼〜ずの要になってバランスを取っている。地味なだけではダメで、芯の強さが必要な難しい役。篠原さんが演じてくださって本当によかったです。マンガよりもジジ様のキャラがはっきり浮き出たと思います。

【篠原】 監督にもジジ様が一番難しいよって言われて。私、本当はジジ様みたいに髪を切りたかったんです。

【東村】 えー、わざわざ!

【篠原】 でもカツラをかぶってみたら、もっさり感が逆によくて。石けんでシャンプーしてますみたいなごわごわした感じ。

【東村】 そうそう。尼〜ずは、美容院にめったに行かないから髪の量が多いの(笑)。梳(す)いてなくて。

【篠原】 物語の後半、天水館(あまみずかん)を救うために月海と尼〜ずが夢中でファッションショーを開催しようとします。最初、ジジ様の前髪はかなり顔にかかってるんですが、その頃になるとふわっと上がってくる。そういうふうにささやかに気持ちの変化を見た目からも表現するのも楽しかったです。

――『海月姫』はファッションも重要なテーマですね。月海はデザインの才能に目覚めて、クラゲのドレス作りに尼〜ずのオタクパワーが向けられていきます。

【東村】 その点でも篠原さんが出てくださって、本当に嬉しかったです。「シノラー」として一大ムーブメントを起こしたファッションアイコンといえる方ですから。

【篠原】 能年さんもまやや役の太田莉菜さんも、独自の世界を持って活躍されてますね。

【東村】 太田さんがモデルデビューされたときも衝撃で、彼女が載っている雑誌を切り抜いたりしてたんですよ。衣装デザイン・スタイリングの飯嶋久美子さんも、きゃりーぱみゅぱみゅさんの衣装を手がけられた方だし、ファッション界の歴史的人物が映画に参加してくださって、言葉にできないほどの感激です。私、とくに篠原さんが作られる服の世界観がすごくタイプなんです。マンガで描きたいこととまったく同じ。ポップでかわいくて、尼〜ずのモットーも〝男を必要としない人生〞ですけども、女の子自身が楽しめる、まさに男性に媚びていないファッションです。

【篠原】 嬉しい! ありがとうございます。

【東村】 撮影中、能年さんと手芸をされていたとか……。

【篠原】 そうなんです。針の持ち方、糸の通し方、ボタンの付け方、基本的なコツをちょっと先生気分になって教えてあげて。そしたら彼女があっという間に上達して。映画では、彼女が作ったクラゲのマスコットが実際に月海の部屋に飾られているんです。私自身、裁縫への愛を実感できた時間でした。

【東村】 共通の好きなものがあると垣根がパンとなくなりますよね。

【篠原】 女の子にはみんな、物作りのDNAが備わっていると思うんです。

【東村】 いいことおっしゃる!

【篠原】 祖母が和装の先生で、それが私の服好きの根底にはあるんですけど、女の子は誰でもきっかけさえあれば自分の好きなことを見つけて、それに夢中になれると信じているんです。それは、月海と尼〜ずのパワーに通じると思います。先生がマンガを描かれるときと同じだと思うんですけど、服を作っていると、楽しいと大変だという気持ちの間を行ったり来たりで、いつもめげそうになる。でも、完成するともう一気にその辛さが吹き飛んじゃうんですね。着てくださる方の喜ぶ様子を見ると、本当に嬉しい。東村 わかります。何物にも替えがたい幸せがありますよね。

取材・文=松井美緒/『ダ・ヴィンチ』2月号「女の一生~楽しく生きる~」特集より一部抜粋

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年2月号

KADOKAWA メディアファクトリー
定価600円(税込) 電子版500円(税込)

・第1特集 女の一生~楽しく生きる~
榮倉奈々 豊川悦司 西 炯子
東村アキコ 篠原ともえ 林 真理子
小島慶子 仮面女子 高山なおみ、他
・第2特集 大好きな本に囲まれた素敵なくらし 本と住まう
犬山紙子 清川あさみ はあちゅう

東村アキコさん篠原ともえさんの対談の続きは
『ダ・ヴィンチ』2月号「女の一生~楽しく生きる~」をチェック!


映画『海月姫』

原作/『海月姫』(東村アキコ/講談社)
監督/川村泰祐
出演/能年玲奈、菅田将暉、長谷川博己、
池脇千鶴、馬場園 梓、太田莉菜、篠原ともえ、他
配給/アスミック・エース 公開中
クラゲオタの月海は、男子禁制のアパート・天水館に、オタク女子集団「尼~ず」と暮らしていた。“男を必要としない人生”をモットーに続く楽しい日々。しかし女装趣味の蔵之介と出会い生活が激変。しかも天水館消滅の危機が迫り!?