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作者・大今良時が語る『聲の形』誕生秘話 自身の不登校が創作の原動力に【インタビュー】

キャラクターはすべて自分の分身

 『聲の形』が社会の縮図のように、リアルに感じられるのはその登場人物からも読める。空気の読めない“優等生”の川井みき。「すべて自分が悪い」と溜め込む西宮。とりわけ興味深いのは、自分の意見は直球で伝える植野直花の存在だ。

「(小学生のころ)ノートに悪口書いたりしたのはメッセージだよ。…“私たちにもう関わらないで”っていう …そしてあなたもやり返した。大人を使って」
「あなたも私のことを理解しなかった」
<第3巻「第27話 嫌い」>

 植野は女子なりのやり方で、西宮をいじめていた。いじめはどんな形でもけっして許されない行為だ。けれど、それは子どもなりにつらさを感じていたからでもある。
 席が近いからといって、いつも人のサポートを求められるのは、正直面倒だ。これは学校の配慮やシステムの不具合によって生まれたひずみを、子どもに背負わされているがゆえに発せられた不満だ。だが口にするのはタブーな本音でもある。

▲暴言キャラの植野直花 (C)大今良時/講談社

「植野は、みんなが言えないことをあえて言ってあげている、と思っているキャラです。いつも暴走ばかりしてしまう、かわいそうなキャラ。仮想的を作り、自分を正当化し続けないとやっていかないのでしょう。人ごとのように言っていますが、登場人物は、すべて自分の分身でもあります。だから植野を描いている時は、植野と同じように苦しい気持ちになります。石田やその級友の永束友宏も同じです。…自分に一番近いのは、佐原みよこではないかと思います。ものすごい理想の形ですが」

 佐原とは、西宮をかばったせいで女子から無視され、不登校になったキャラ。けれど、そのつらい経験から誰よりも寛大だ。
 ひどい言葉を吐き、自暴自棄に陥っている植野が「もう友だちじゃないよね」との問いに対して、「友だちだよ」と温かく返す。

「佐原は、ストレスが大きすぎて、ストレスが強さになってしまった人物です。植野がどんな子か分かっちゃっているんです。それでも受け入れる」

 友だちの定義がなにか、に対する答えは、このシーンにあるように思える。完全無欠の人間などいない。その個性ごと受け入れるのが友だちではないだろうか。

▲ 西宮をかばったことを機に、学校へ行かなくなったことを西宮に謝る佐原みよこ (C)大今良時/講談社

次回作の構想は……?

 10代で自分のやりたいことを貫き、マンガ家という夢を叶えた大今さん。ご自身同様、学校に通うことに意味を見いだせずに悩む若者へエールをお願いした。

「学校に行かない時間も、その人にとってすごく大切です。なぜ行かないのか、とことん向き合って、自分なりの答えを出して欲しいです。中学・高校生という肩書きを持っているのは、今しかありません。そういう貴重な時間と気づきながら過ごすなら、学校に行かなくてもいいのではないのでしょうか」

 連載を終えた現在は次回作を模索している最中だという。どのような内容になるのか。

「映画を見るなどして、アイディアを練っています。『聲の形』が入選する前は、ファンタジーっぽいものも描いていました。今は、その当時にやりたかったことは、どんなものだったのかを思い出している時間ですね」

 劇場アニメの公開が予定されている同作。大今さんの新作とともに今から待ち遠しい!

■『聲の形』ほか大今さんの最新情報は「少年マガジン」および、同誌公式サイト「マガメガ」にて

取材・文=武藤徉子

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