【高齢者はなぜ、暴走するのか?】逆ギレ、過去の栄光の自慢…若者が嘆く「モンスターシルバー」

社会

公開日:2015/1/31

『「若者奴隷」時代』から紐解くモンスターシルバー問題と気になる統計

 同書ではモンスターシルバー問題の発端をまず、社会全般におけるコミュニティの変化に求めている。日本はかつて「村社会」だった。そのため、プライベートな場面では隣近所が支えあい、助けあう社会だったという。しかし、地域の繋がりが薄れた現代においては「高齢者は孤立しやすい状況にある」と、同書は指摘する。情報が即時的に行きかうIT社会の発展もあり、社会が急速に変化する中、その速度に追いついていけない高齢者達が多く、それこそ会社員だった人々は誇りであったはずの身分や居場所を失い、精神が不安定になる事例もあるようだ。

 また、同書は「高齢者が幼児のように暴走するのは当たり前」だと語る。その背景にあるのは、年齢を重ねることによる脳の変化である。精神科医・和田秀樹氏の著書『困った老人と上手に付き合う方法』を参考にしたものだが、人間は年をとるにつれて「精神の司令塔とも言うべき前頭葉が老化し衰える」という。そのため、しゃくにさわるようなことがあってもグッと感情を抑えるという力や、大人として分別をもって振る舞うべきときでも正常な判断ができなくなるそうだ。よって同書では「一般に言われている“老人は穏やかである”とか“分別をわきまえている”という認識は単なる歪んだ誤解に過ぎない」と、重ねて断言されている。

 さらに、モンスターシルバー問題における気になる統計もある。「キレる若者」という常套句にみられる通り、若者の犯罪がとにかくめだつよう報じられる場合も多い。しかし、警察省発表の「平成24年版 犯罪白書」によれば、過去20年間における各世代の人口比別の一般刑法犯検挙人員でもっとも多いのは、高齢者だという。同白書によれば、平成4年と平成23年の比較でいえば、65歳以上の高齢者の検挙数は約3.4倍。参考までに他の世代を取り上げると、20〜29歳は1.1倍、30〜39歳は約1.4倍、40〜49歳は約1.3倍、50〜64歳は約1.7倍であり、その勢いは「高齢者人口の増加をはるかに上回っている」と指摘されている。

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 レッテル張りをしてむげに「高齢者が悪い」と、一面的に断罪することはできないかもしれない。日常での振る舞いは個々人の生き方や過ごしてきた環境、資質によるところも大きく、いうなれば「人それぞれ」と言われてしまえば、それも一つの答えになりうるとは思う。しかし、若者ばかりを狙い撃ち批判するのであれば、高齢者に何が起きているのかも同時に伝えなければ公平性を保てないのではないだろうか。年を取るというのは、生きている限り誰しもに訪れることである。その中で少なくとも、モンスターシルバーとならないよう、心の中に“反面教師”として強く刻んでおきたい。

取材・文=カネコシュウヘイ