ありとあらゆる「世界の仕組み」を知りながら、妹を自分色に染めることができる(かもしれない)萌え本!

社会

更新日:2015/2/5

 世界は複雑だ。だがその複雑さの裏に隠された真実を知りたい、できることならば自分の手で謎を解明してみたい…古今東西の小説やマンガ、映画などの物語は、そうした「世界の仕組み」を探ることとイコールだといっても過言ではないだろう。

 しかし「世界の仕組み」を解明した本がすでに発売されていたのだ!!(ホントか?)

advertisement

 それが、表紙で「知った気になれる!」「政治宗教の派閥や力関係から経済のしくみまでいいかげんに図表化!」と謳い、裏表紙では「世の中のしくみや、みんながなんとなくボンヤリ捉えている事象や物事の関係を、特にする必要のない整理をしつつ、いいかげんな感じに組織図や樹形図やチャートや表にまとめたりまとめなかったりして解説する、大変アレな本です」という『図でわかる! 妹に教えたい世界のしくみ』(お兄ちゃんと妹/笠倉出版社)だ。

 世界の真実を知っているという引きこもりのお兄ちゃんが、何も知らない妹に世界の様々な仕組みを教えて自分色に染めたいと思いながらも、よく出来た妹にたしなめられるといった内容の「萌え」本なのだが、この萌えの部分を無視して図解だけを楽しむこともできるので、「萌え系は苦手」という人でも大丈夫だ。

 本書はまず「日本政府のしくみ」から始まり、「アメリカ政府のしくみ」「中国政府のしくみ」「江戸幕府のしくみ」「江戸時代の支配のしくみ」「GHQのしくみ」「警察組織と警察官っぽい公務員の種類」「アメリカの警察機構」と、思っていたよりも意外とマジメなものが続く。そうか、これが世界の仕組みなのか…。

 しかし「なんだこりゃ?」なネタもたくさん混ざっている。ただそう思いつつも「みかんの家系」など、思わず膝を打つものもある。「オレンジ」と「みかん」を掛け合わせて作り出したものに「いよかん」と「マーコット」があるといった種類とその親戚関係に驚いたり、偶然に種無しが発生した「温州みかん」や、自然交配だったり変わり種などもあることがわかり、スーパーの果物売場でしばしウンチクを披露したくなることだろう。まあこれが世界の仕組みなのか、と問われると困るのだが…。

 また「オーケストラのしくみ」ではオーケストラやマーチングバンドに混じって、なぜか女子十二楽坊やYAZAWA、米米CLUBの編成までもが一緒になって図解されていたり、ファン以外が知ってどうなるものでもなさそうな「エグザイルトライブの構成と変遷」があったり、4月から『ブラタモリ』がレギュラー放送されることになったタモリがこれまで出演してきたテレビ番組を放送局ごとに紹介する「タモリのレギュラー番組年表」とか、テレビドラマ『太陽にほえろ!』の舞台である七曲署に在籍した刑事たちの変遷をたどる「七曲署刑事在籍年表」など、「これは世界の仕組みじゃねーだろ!」というものもあるが…まあ目くじらを立てるようなことでもないですかね。

 「いろんなひみつを暴いてみようシリーズ」と銘打っておきながら、今のところコレ1冊しかないとか、表紙が某学習帳に酷似していたりとか、記述にちょいちょい妙なネタが仕込まれていたりなど、ツッコミどころは多々あるものの、シャレとして楽しむにはうってつけ。知っていると自慢できることから、知っていてもどうしようもないものまで、役に立つかもしれないけど、たぶんだいたい役に立たない、持っていても損はしないけど、そんなに得もしないかもしれない、ただこれだけ調べるのは大変だから資料として置いといてもいいが、使う前には別の資料にも当たらないと不安だな~と思える、とっても微妙で、ジレンマの嵐のような、それでいてかなり面白い本です!

文=成田全(ナリタタモツ)