まつもとあつしの電子書籍最前線 ソニー”Reader”が本好きに支持される理由(後編)

更新日:2013/8/14

読書家に支持される理由を探る(後編)

奇しくも新型Kindleの発表翌日にお目見えとなった新型ソニー”Reader”。3G通信にも対応し、PCを介さず端末から書籍を直接購入できるようになった。

9月29日、ソニーは読書専用端末”Reader”の新型を発表しました。

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直前に米アマゾンがKindleの新型を79ドル~(スクリーンセーバーが広告無しのモデルは109ドル、)と発表したこともあり、その内容に注目が集まりました。結果として、新型ソニーリーダーは、auの3Gネットワークに対応したモデルが、25,800円(税込)、Wi-Fiのみのモデルは19,800円となり、前モデルでは見送られた3G搭載を歓迎する声もありましたが、会見でも「(近日中に上陸が予想される)Kindleへの対抗策は考えていないのか」と海外系メディアから厳しい質問も飛んでいました。


10月20日に発売された新型ソニー”Reader”(※10月20日に発売されるのはWi-Fiのみのモデル)

シャープのGALAPAGOSが、初代のモデルの販売終了を発表し、国内の電子書籍がまだまだ流動的な状態にあるなか、ソニーはどのような戦略を描いているのでしょうか?

そこで今回は、ソニーリーダーのハード、そしてサービスプラットフォームを担当する方に話を聞ききました。インタビューを通じて、ソニー”Reader”は進化の発展途上にありAmazonのような苛烈な進化ではないものの、自分たちの強みを活かしながら、明確なビジョンをもってプロジェクトに取り組んでいるという印象を持ちました。さっそく、その中身を紹介していきましょう。(前編はこちらから)

お試し版と3G通信対応

北村:“Reader Store”側から、お客様にプッシュで新着書籍をお知らせするというという機能に加え、独自の推薦技術「VoyAgent(ボヤージェント)」を活用して、ストアにご訪問いただいたお客様の購入履歴などからそれぞれの嗜好に合った書籍をご紹介するといったことも始めました。

また、8割くらいの書籍にはお試し版が用意されています。立ち読み感覚で読んで頂いて、気に入ったらすぐに買うことができるようにもなっています。いままでの“Reader”は「ポケットに本棚」と呼んでいたのですが、新しいものは「ポケットに本屋さん」がある感覚になりました。

――今回、ハード側にはじめから内蔵されている約30冊のお試し版は更新されていくのでしょうか?

北村:そちらの方は著作権保護の関係もあり、更新はされません。

――なるほど。

北村:これまで足りなかったのは、(北米版では既に実現されていた)通信だったんです。今回、新たに実現したのが、3G通信です。“Reader Store”を利用するだけであれば、実質2年間無料。これはたぶん、コンテンツダウンロード型のサービスとしては、日本初だと思います。そのほかにも、Webブラウジングしたい方は、月々580円のプランもあります。Googleや、ウィキペディアで検索を掛けながら読み進めていくという楽しみかたもできるようになりました。

――これはKDDIの通信網を使って、“Reader Store”との通信費を御社が負担されているビジネスモデルということでよろしいですか?

加藤:そうですね。、お客様には3G回線のご契約を、ソニーとしていただき、その際に使用するインフラがKDDIさんということになります。

回線費用のお支払いは、“Reader Store”で本をご購入頂くのと同じカードでの決済になります。別途KDDIさんと契約してくださいという話ではないので、煩わしさも軽減できます。

――なるほど

北村:もちろん、ハードの機能としては、たとえばピンチイン、ピンチアウトで文字拡大・縮小、ペンでの書き込みもスムースに行えるようになったなどの進化点もありますが、今回の新商品は、本好きの方が何冊も持ち運べて、さらに本屋ごと持ち運べる、つまりいつでもどこでも本を検索したり購入したりできるところまで到達したというのが、今回の大きな進化だと感じています。