作者は現役女子大生!? 一風変わった「あの世」を描くマンガ家の素顔 【『保留荘の奴ら』ココなし。さんインタビュー】

マンガ

更新日:2015/2/17

 800万ダウンロードを達成したcomicoから一挙に4作品が書籍として発行された。その内の1つ『保留荘の奴ら』は、死んだ後、天国にも地獄にも行けず、処分保留となった人々(死者)が向かう場所(留国)を舞台にした作品だ。記憶をなくしたために、いい加減な閻魔大王から留国行きを言い渡された「山田トム(仮)」が主人公のこの作品、彼以外の登場人物は全員が殺人鬼という恐ろしい設定ながら、留国にある住まい「保留荘」での生活は何ともほのぼのしている。

単行本として書店に平積みされる『保留荘の奴ら

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 この作者・ココなし。さんは現役の女子大生。どういう経緯でマンガ家に? 学業との両立は大変では? 紙として出版された時の感想は? さまざまな疑問が湧き起こり、突撃インタビューを決行することにした。

縦スクロールの連載が横開きの単行本に。紙の書籍は「新鮮」

――早速ですが、保留荘の奴らが平積みになっているのを見た率直な感想は?

ココなし。「実はまだ見に行っていないんですよ。知り合いからは“あったよ!”という報告はもらったんですが」

保留荘の奴ら』の作者・ココなし。さん。

――そうなんですか。「書籍化されたんだなぁ」という実感やその感想についてお聞きしようと思ったんですけど(笑)。

ココなし。「単行本を送ってもらったので、ああ、出たんだなぁという感じはあります。でも、書籍化すると聞かされた時『何かの間違いでは?』と思いました。『保留荘の奴ら』はきわどい描写が多いので、別の作品と勘違いして連絡してきたんじゃないかと(笑)。でも、本当にこの作品だと分かった時には、大丈夫? 本当に大丈夫? って逆に心配になりました」

――comicoはガイドラインがしっかりしていますから、掲載されているのであれば問題ないのではないかと…。

ココなし。「単行本化の準備が進んでいって、加筆修正などの編集作業をしているうちに『ああ、この子たち、本当に紙で出るのねぇ…』という実感が湧いてきました」

帯に「ド変態の殺人鬼ばかり」の文字が。作者でさえ心配してしまうのも無理はない

――実際に、単行本となった自分の作品を手にした前と後とで、心境の変化はありましたか?

ココなし。「そうですね、マンガを描き始めた当初は紙なので、ページ移動は『横』を意識して描いていました。でも、comicoでは“縦”スクロール。すっかりこれに慣れてしまっていたところ、自分の描いたものが横へとページをめくる紙の形になってきたので、『おおおおお!』と新鮮な気持ちになりました。同じ自分の描いたものでも、リアルな紙は新鮮ですね」

――縦と横! そう言われてみればそうですよね。

ココなし。「それから、単行本化するにあたって、大変だったのが“描き直し”でした。今使っているマンガ制作ソフトでは、ファイルへの書き出しがビットマップ形式(筆者注:画像をドットで扱う)なうえ、納品用に指定されているリアルサイズが最大限のキャンバスサイズのため、印刷向けではないんです」

――ベクター形式(筆者注:画像を座標による線で扱うため拡大しても粗くならない)ではないと。

ココなし。「そうなんです。なので、ドットが荒くなってしまうようなところはまた描き直して…と。その回を描いている時の勢いがなくなって客観的になってしまっているため、変に“小綺麗”になってしまって、なにこれ? と自分の子ではないような違和感を感じてしまったりして。そんなわけで、ComicStudioに乗り換えようと決意した、というのも大きな心境の変化かもしれません」

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