飲めば頭が良くなる薬!? “スマートドラッグ”って何?

健康・美容

公開日:2015/2/18

 先日、バラエティでも活躍している女性アナウンサーに取材をしたときのこと。会話のテンポが、は、速い…!! 3分しゃべっただけで、とんでもない情報量。質問に対する回答も的確で、ときにウィットを差し挟みながら魅力的な形で次々と繰り出してくる。

「うおおおおこれが頭のいい人かーー!!!」と、彼女の頭脳のキレ味にひれ伏し、そして「変わろう」と決意した私。頭、良くしよう。そう思いながら手にとったのが『化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15』(佐藤健太郎/光文社)。

advertisement

 この本では、最先端の化学の研究結果を元に「お金持ちになりたい」「宇宙旅行がしたい」といった実現しそうな夢のテーマを紹介していて、その一部に「頭の良くなる薬が欲しい!」という話題が扱われているのだ。

ショウコ 認知症の薬って、普通の人が飲むとどうなるの? ちょっとは記憶力が上がったりしないの?

博士 記憶力が上がると言われているものがいくつかあるよ。いわゆる「スマートドラッグ」ってやつ。

ショウコ それで頭が良くなっちゃうの?

博士 脳の神経に作用する物質だからね。普通の人に対しても、何らかの効果があっても不思議じゃあない。たとえば「ピラセタム」という薬は、認知症や失読症の患者に対して使われるが、普通の人も、これを飲むことで記憶力や学習能力が上がるという話がある。

 このスマートドラッグとは、人間の脳の機能である記憶力や認知能力を高める薬品や物質の総称を指すらしい。しかも、博士いわく「(覚せい剤のような)そういう危険なものだけじゃなく、いろいろ新しい薬も出てきていてね。たとえば“モダフィニル”っていう薬は、覚せい剤みたいな習慣性なしに、集中力を高めてくれるらしい」

 の、飲みたい…! このモダフィニルを今すぐ飲みたい! さっそく入手方法を検索すると、2013年には日本の歯科医師が国の許可なくインターネットで購入したとして逮捕されたとのニュースが。え…逮捕!?

 これは、モダフィニル自体が向精神薬に当たるため、この輸入が麻薬取締法の罪に該当したという理由のようだ。しかし調べれば調べるほど、日本でスマートドラッグを積極的に処方する医院は少ない。精神科や心療内科において、医師がきちんと診察した上で病気と認定された人に処方されているのが一般的みたいだ。となるとこのスマドラ、一体いかなる背景で生まれたのか?

「そもそもスマートドラッグが話題になったのは、80~90年代にアメリカで起きたサプリブームがきっかけと認識しています。アメリカは日本よりも、薬に対する抵抗感が薄いのでしょうね、今も多くのスマートドラッグが出回っているんです。本来はうつ病の患者が飲むような“プロザック”という薬も、ポジティブになれる“ハッピードラッグ”として普通の人が飲んでしまっているケースがあるんですよ」

 著者であるサイエンスライター・佐藤健太郎さんは、現在キャッチしているスマドラ情報についてこう話す。

「スマートドラッグは、他の向精神薬を転用しているだけのものが多いため、十分な臨床試験データがないケースが少なくありません。つまり、健常者が飲んだ場合安全なのか、どのくらい脳の働きがよくなるのか、よくわかっていないものもある。日本だと個人輸入しなければならないものが多く、そうしたリスクは自己責任となります」

 ADHDや失語症のような精神疾患のための強力な薬を勝手に転用しているケースも多いとか。どう考えてもシロウトが気軽に扱っていい分野じゃない…甘い考えで飲みたがってすみません!!

「ただ、副作用がほとんどなしで集中力を高められるという、夢のある話も確かに出てきています。脳科学、医薬デザインなども格段に進歩していますから、今後研究が進み、信頼性のある試験データなどが集まってくれば、集中力、学習能力、クリエイティブな能力などに作用する薬が、かなり安全な形で登場する可能性もあると思いますよ」

 薬を飲むだけで高度な脳の働きを実現できるとしたら、いつか学校やオフィスでも脳のドーピングが行われる未来がやってくるのかもしれない。

「でもね、我々も案外スマートドラッグを日常的に摂取しているんですよ。たとえばコーヒー。脳内物質に近い形で作用するという意味で、カフェインは“人類史上最も成功したドラッグ”という人もいるくらいなのです」

 最後に「仕事でバリバリ頭を使いたかったら、ちゃんと寝ること! つまらない回答かもしれませんが、どんなドラッグより効きますから」と佐藤さん。薬飲んで頭良くしようなんて発想がそもそもバカだったみたい…うう、コーヒー飲んでもう寝ます!!!

文=矢口あやは