強火は使わない! 科学的調理理論で、プロの料理を「99%再現できる」レシピ

社会

公開日:2015/2/21

 レシピ通りに料理を作ったのに、なぜか美味しくない…という経験はないだろうか。だいたいにして料理本は、「砂糖ひとつまみ」や「塩少々」など、具体的に何グラムなのか分からない記載が多い。また作り方も、材料の切り方や目安になる焼き色など、言葉だけでは伝わりにくいものが多いのだ。そのためレシピ通りに作っているにもかかわらず、毎日料理を作っている主婦でさえ「いつも同じ味」で料理を仕上げるのは難しい。

 そうした“曖昧さ”を排除し、クラウドを活用した動画視聴によって視覚的にもベストな作り方を確認できるようにした料理本が『水島シェフのロジカルクッキング――1ヵ月でプロ級の腕になる31の成功法則』(亜紀書房)である。本著は、科学的調理理論を取り入れ独自の調理指導法を確立した水島弘史シェフが、「再現性」を重視して書き上げた画期的なレシピ本なのだ。

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3つの法則を守れば、いつでも誰でも美味しく作れる

 通常のレシピ本との一番の違いは、「論理的」(ロジカル)な「3つの法則」にもとづいて材料の分量と作り方を細かく指定していることにある。タンパク質の凝固やメイラード反応、ペクチンの硬化や糖転化のスピードなどを考慮して…と聞くと難しそうだが、作り方の表記は「○分焼いたら裏返す…」といういたってシンプルな書き方なのでご安心を。そこにはいわゆる“料理人の勘”は存在しないため、法則さえ守ればいつでも誰でも料理を美味しく作れるというわけだ。気になる「法則」は、次の3つ。

(1)【塩加減の法則】基本の塩分は、材料の 重量の0.8%(汁ものは0.7~0.8%、漬け込む場合は1.5~3%)。
(2)【火加減の法則】基本的に「強火」は使用せず、「弱火」と「中火」のみで調理する。
(3)【毒出しの法則】「毒出し」とは「食材に含まれるアクや老廃物、臭みのある脂や水分を取り除くこと」と定義し、料理によって漉す・ゆでる・拭き取る、といった方法を使い分ける。

 最初はちょっと面倒に感じるかも知れないが、これらの法則にあてはめて調理することで、安い食材でもとびきり美味しい料理を作ることができるという。

成功法則を覚えれば、あとは応用するのみ

 本著に収録されたレシピは、皮目がパリパリでジューシーな「チキンソテー」から、時間が経っても水分が出ない「野菜炒め」、中まで味がしっかり染みた「筑前煮」ほか、家庭の食卓で定番の31品(+ソースや応用編の副菜など)。毎日1品ずつ覚えれば、タイトル通り“1ヵ月でプロ級の腕になる”というわけだ。

 またすべてのレシピには最後に「成功法則」がまとめられており、自他ともに認める料理好きの筆者でもとても勉強になった。ここではそれらの中から、知っておけばすぐに使えそうなものをいくつかピックアップしてみた。

【チキンソテー】

 まずチキンの重量の0.8%の塩の半量を振って片面を焼き、裏返す際に残りの塩を振ると良いという。筆者は焼く前に全量を振っていたため、余分な臭みが出てしまっていたようだ。焼く際は、フライパンに肉を入れてから火をつけ、出てきたアクや脂は肉に再び付着しないようマメに拭き取るのも重要とのこと。実際、火をつけてから焼くよりも皮目がパリッと仕上がった。

【野菜炒め】

 よく「強火・短時間で炒める」と言われているが、本著ではその正反対の「弱火・じっくり炒める」という作り方を推奨。筆者が試してみたところ、出てきた水分を拭き取りながら炒めると、確かにシャキシャキに仕上がり、冷めても水分が殆ど出なくて目からウロコ。ただし野菜の切り方にもコツがあるので、ぜひ動画を参考にしていただきたい。

【筑前煮】

 根菜類はなかなか味が染みにくいもの。そこで本著では、まず材料を熱湯に入れ強火でゆでてから、煮汁とともに弱い中火で煮ていくという方法を取っている。こうすると高温によって細胞壁が壊され、薄い味付けでも中まで十分に味が染みるのだという。何でも「弱火でじっくり…」が良いとは限らないのだと実感した。

 料理をある程度まで手っ取り早く修得したいなら、経験者から教わるよりも、本著を読んで論理立てて覚えた方が応用がきくだろう。また経験豊富な主婦でも、本著を参考にすれば、自分の料理をより美味しくするきっかけをつかめるに違いない。

 文=増田美栄子