徹底的に“ユーザー参加型” ―「PSYCHO-PASS サイコパス」に見るアニメ宣伝の最前線

マンガ・アニメ

2015/3/3

 アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」が話題を呼んでいる。2012年秋にオリジナルアニメとして登場して以来好評を博し、新編集版、第2期、そして今年1月からは「劇場版PSYCHO-PASS サイコパス」が公開された。アニメ制作はProduction I.G、虚淵玄氏らが脚本を担当し、キャラクターデザインに天野明氏、そして総監督には本広克行氏が立つという豪華且つ異色の顔ぶれが生んだヒットだが、実はその宣伝手法もかなりユニークだ。東宝映像事業部の弭間(はずま)友子氏と(株)スロウカーブの尾畑聡明氏に話を聞いた。

尾畑聡明氏(左)と弭間友子氏

徹底的に「ユーザー参加型」を目指す

 1月より公開された「劇場版PSYCHO-PASS サイコパス」(以下「サイコパス」)。様々な宣伝手法が採られているが、そのユニークさを何よりも象徴するのが、ユーザー参加型のキャンペーン「サイコパスる大捜査線」だ。(※現在は終了している)

事件1「×LUMINE EST/LUMINE MAN」:館内に潜む極秘資料を調査せよ!
事件2「×新宿メトロプロムナード」:シビュラシステムゾーンを通過せよ!
事件3「×凛として時雨」:コラボ護送車を追跡せよ!
事件4「×TOWER RECORDS」:GINNOCENT WORLDに潜入せよ!
事件5「×秋葉原」:アキバを一斉捜査せよ!

 都内各所――新宿、渋谷、お台場、秋葉原などを舞台にサイコパスのキャラクターポスターや、宣伝トラック、インタラクティブな展示などが出現。ユーザーはそれらを体験したり、写真をソーシャルメディアに投稿(捜査・報告)するなどして楽しめる上に、公安局からの「褒章」として各種グッズを手に入れることが出来るというものだ。

「そもそもサイコパスは異色のコラボから生まれた作品でした」とスロウカーブの尾畑氏は振り返る。制作陣はトップクリエイターが集っているが、原作があるわけではない。いかに放送までに「どんな絵、作品になるのだろうか」と期待を高めてもらうかに知恵を絞り、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアで情報を発信し続けた。現在では、Facebookページへの「いいね!」は1万7千、Twitterのフォロワーは13万人を超えている。

「テレビでの1期、新編集版、2期と回を重ねるごとに、サイコパスを楽しんでくれるファンの方々は増えていきました。今回劇場版となり全国103館で上映できることになって、これまでテレビでの放送がなかった地域でも作品に触れてもらう機会が生まれたのです」と語るのは、東宝の弭間氏。アニメファンのみならず、一般層、つまりデートムービーにならなければ映画としてのヒットにつながらない。本作は「踊る~」シリーズの本広克行が総監督を務めているが、その高い知名度や実績が一般層への訴求にはとても有効だった、という。

熱心なファンに作品の面白さを発信してもらう仕組み

 サイコパスの場合、3度にわたるテレビアニメで既に多くのファンを獲得していた。「その人たちに、サイコパス面白いよ、ってどんどん発信してもらいたい。そうなるような仕掛けをたくさん用意したかったんです」と尾畑氏。彼が作品宣伝で念頭に置くのは「円」のイメージだ。一般的な映画のように円の外側(一般層)からキャッチーなメッセージを投下するのではなく、逆に中(熱心なファン)の熱量(支持や共感)を高め、外(一般層)へと拡げていく――それが今回の劇場版の宣伝展開の基本方針となった。

 テレビコマーシャルも、深夜アニメ枠にごく限られた数投下された。SF映画の上映前予告などに入れることも検討したというが、「そこは(お客さんから)遠い、と我慢しました」と尾畑氏。あくまでも「ファンに寄り添って」、まずは円の中心にいるコアなファンに劇場版が始まることを知ってもらい「うずうず」してもらうこと、そしてアニメは好きだけどサイコパスにはそれほどまだ関心を持っていない周辺のお客さんに的を絞ったのだ。

 1期から作品を愛してくれたお客さんが、さらにサイコパスの世界に没入できる、そんな企画を二人は考え続けた。宣伝でありながらお客さんが楽しめるものを――その結果生まれたのが「サイコパスる大捜査線」(以下「大捜査線」)だったのだ。

 物語の中で鍵となる犯罪計数を計測できる銃=ドミネーター。街中に置かれたデジタルサイネージに、ドミネーターを構えたキャラクターが現れる。その標的はカメラで撮影された道行く人々。一定の犯罪計数を超えた人はドミネーターに撃たれ、画面内でミンチに…。「さすがにミンチ表示はNGでしたけどね。宣伝がR-15になっちゃう」と尾畑氏は笑う。

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