徹底的に“ユーザー参加型” ―「PSYCHO-PASS サイコパス」に見るアニメ宣伝の最前線

マンガ

更新日:2015/3/3

大反響で広告取りやめの申し入れも…

 蓋を開ければ企画は大成功――いや成功し過ぎた。新宿メトロプロムナードのシビュラシステムゾーンには最大で1時間半以上並ぶ「犯罪計数を図ってもらって、お気に入りのキャラに撃たれる」ための行列ができ、図らずも通行の妨げになる規模に。この場所を管理する東京メトロからは「こんなに人が集まるなら広告を取りやめてください」と毎日申し入れがあったという。その後、両者の協議によって列形成をスタッフ・警備員を増やして行うことで企画を継続することができた。「壁際に列を作るので、その部分は壁面のポスターが見えなくなります。メトロさんが配慮してくれて、さらに追加の広告スペースを用意してくれたのは嬉しかったですね。結局その前にも列が出来てしまっていましたが(笑)」(尾畑氏)。

 押し寄せるファン。その数は7日間でのべ約10万人にのぼった。実は、このシステムには前作でその行方が分からなくなっていたキャラクター(狡噛慎也)が登場するというシークレットも仕込まれており、彼らの写真を撮り、Twitterへの関連投稿は4万件を超えた。

さらにサプライズとして、今年初夏に公開予定の「攻殻機動隊新劇場版」(以下新劇場版)の主人公・草薙素子が、シビュラシステムにハッキングを行い登場するという仕掛けも。新劇場版のビジュアルが初お披露目となったこともあり、400媒体以上がこの取り組みを報じたという。

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 現場は、サイコパスの上映館(新宿バルト9)ともほど近い。新宿の劇場、ルミネ、プロムナード、そして山手線で渋谷、中央線で秋葉原、あるいは臨海線でお台場へと足を伸ばすことで1日中サイコパスの世界で楽しんだファンも多かったはず、と弭間氏。当初は個別に企画していた仕掛けを、1つのキャンペーン(大捜査線)としてチラシなどを配付したことで、スタンプラリー的な魅力が生まれたのだ。

「公開後も大ヒット御礼イベントと題し、毎週劇場でのイベントを続けています。」(弭間氏)「公開週からも公式Twitterのフォロワーが毎日1200~1500人以上増えています」(尾畑氏)

 オリジナルアニメとしてユニークな展開を見せてきたサイコパス。今回の大捜査線キャンペーンはそれを象徴する取り組みだったと言えるだろう。ファンにとっては、更なる続編への期待も高まるところだ。全く白紙と二人は口を揃えるが、DVD・Blu-rayなどのパッケージ、商品の売り上げはもちろんのことながら、こういった「ファンの熱量」がリアルに目に見える取り組みも判断材料になることは間違いない。

取材・文=まつもとあつし