地下アイドルが彼氏を作ってしまったら? 誰でもアイドルになれることのリスクとは

マンガ

更新日:2015/3/4

 地下アイドル――それは、メディアなどに露出することなく、LIVEやイベント活動をメインとするアイドルのことだ。秋葉原などを活動の中心地としていて、数は少ないものの熱狂的なファンがつくこともある。一般的なアイドルとは異なり、必ずしも芸能事務所に所属する必要がないため、個人で自由に活動しているケースもある。つまり、やる気さえあれば、“誰にでもなれる存在”なのだ。

 歌ったり踊ったりして観客の声援を浴びる。それは自身の承認欲求を満たす上でも最高の方法だと思う。けれど、そこには危険が伴うということも忘れてはならない。

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 『地下アイドル、職場の男にバレまして』(都陽子/祥伝社)の主人公・田中桐子も、そんな地下アイドルのひとり。27歳になってもなお「アイドルになる」という夢を捨てきれなかった彼女は、平日は派遣OLとして勤務しながら、土日に地下アイドル“キリちゃん”として活動をしている。ところがある日、そのキリちゃんとしての活動が、職場の男・平野にバレてしまう。「みんなにバラされたくなかったら、俺の言うこと聞いてね」とのたまう、ドSで性悪な男に。

「地下アイドルをやっています!」と胸を張って言える人はどれくらいいるだろうか。世間の目はまだまだ厳しい。そんなこと宣言したところで、嘲笑の対象になってしまうことは容易に想像がつく。だからこそ桐子も、周囲の人間にはひた隠しにしてきたのだ。それなのに、まさかバレてしまうなんて…。

 けれど、平野は心底悪い男ではない。桐子との約束を守り、彼女の秘密を周囲に漏らそうとはしない。桐子に忍び寄るストーカーを撃退し、彼女を守り抜く。それも、すべては桐子が好きだから。興味本位で彼女に近づいたわけではなく、桐子に対して好意を抱いていたのだ。やがて平野は、桐子に「付き合ってみない?」と提案をする。

 根っからネガティブな桐子は、そんな平野の想いを理解できない。昔から自分に自信が持てず、だからこそ“アイドル”という存在に希望を感じ、居場所を見出そうとしていたのだ。けれど、自分はただの地下アイドル。「でも、(アイドルになる夢を)振りきれなくて、ずるずると笑い者になっているんです」と自嘲する。そんな桐子に対して、平野は「アイドルにはなれてんじゃん」と、彼女の生き方を肯定する言葉を投げかける。桐子が平野にオチたのは、まさにその瞬間だ。その後、大変なことが待っているとは知らず…。

 アイドルは恋をしない。キスをしない。セックスをしない。そんなことはあり得ない。それはみんなわかっている。けれど、やはりアイドルは処女性を求められてしまうのが現実だ。作り物のような笑顔の裏に、1ミリでも男の影がチラついた途端、ファンはどんどん離れてしまう。そう、平野との交際がバレてしまった桐子のように。だからこそ、アイドルになるのには相当な覚悟が必要なのだ。たとえそれが表向きだけだとしても、純潔を保ち続けなければならない。彼女たちは、それと引き換えにスポットライトを浴びているのだから。

「地下アイドルだったら、わたしでもなれるかも」なんて甘い考えを持っている人がいたら、まずは本書を読んでみてほしい。AKB48のように第一線で活躍している存在とは違うんだから、多少のことは許される、なんてことは決してない。たとえたったひとりでもファンがついた時点で、アイドルとしての生き方が求められてしまう。そんな厳しい世界なのだ。

文=前田レゴ