ドラマ『天使のナイフ』出演 桜井玲香(乃木坂46)インタビュー

芸能

公開日:2015/3/14

ただ残虐な事件を描いているわけではない

――原作は、いわゆる「社会派ミステリー」です。普段あまり触れないジャンルではないですか?

 私は普段、もっとフィクションの割合が高いというか、作られた世界の物語を読むことが多いんです。こういった自分たちにとって身近な現実の、リアルな題材を扱っているものって、あまり読んだことがなかったかもしれないです。もっと積極的に取り入れるべきだなと思いましたね。知らなかったことを知ることができるし、考え方や視点も変わる。現実の自分の生活に、本が直接影響を与えてくれることもあるんだなって思ったんです。

――シリアスで重たいテーマ設定でしたが、戸惑いはありませんでしたか?

 実は高校の時に、社会科の課題で少年犯罪について調べたことがあったんです。興味があったというか、「知りたい」と思い自分で選んだテーマでした。ただ、その時はどういう事件があって未成年だから裁かれなくて……という事実を調べていっただけでした。ただ怖いというか、ただひどいなって感じることしかなかった。ひとつの事件が起きた時に、被害者の家族の人たちはどんな思いを抱いたのか、加害者の側はなぜそんなことをしてしまったのか。事件に関わる人々の内面的なことについては、この小説を読むことで初めてちゃんと想像することができたんです。

――高校時代には見えていなかったことが、見えるようになったわけですね。

 正しいか正しくないかは別として、罪を犯してしまう人には、何かしらの理由があるんですよね。この小説は、ただ残虐な事件の物語を書いたというだけではなくて、いろいろな立場の、いろいろな人の心情が細かく書かれています。みんなの気持ちが分かれば分かるほど、答えを簡単に口にすることはできなくて……。難しい問題だなと改めて思いました。現実のニュースなども目にしながら、今も自分なりに考え続けています。

本を読むことで、「人間」を知りたいんです

――普段の読書について聞かせてください。本はよく読まれますか?

 はい。ふらっと本屋さんに行って、「これ面白そう!」と思ったものを手に取ることが多いです。最近読んだ本は、『どこの家にも怖いものはいる』(三津田信三)。背筋が凍る、不安な感じが延々と続くんですよ。基本的に、ダークなのが大好きなんです(笑)。

――ダークな本で、その他にオススメは?

 あさのあつこさんの『No.6』は、読み終わった後のずーんという後味が最高でした。2人の少年(紫苑&ネズミ)の掛け合いがすごくイイんです。お互いが思い合ってるようでいて、でも切り離そうと思えばいつでも切り離せる関係で、それでも見えない何かで繋がっていて……最後にずーん、と(笑)。あさのさんの作品だと、『福音の少年』も好きですね。『天使のナイフ』に近い部分があるかもしれない。少年達が事件を起こして人を殺しちゃうんですけど、事件が起きるまでにいろんな人との絡みだったり、理由だったりが深くあって。悪いことをしてるはずなのに、その二人の気持ちがわかっちゃうから、否定し切れない。

――その感触は確かに、『天使のナイフ』に近いですね。

 生死に関わる罪を犯してしまう時って、人間が持っている感情の究極ですよね。そこを知ることで、人間のことを知りたいんだと思います。もっと突き詰めていこうと思いますね。

――そこを突き詰めつつ、女優の夢を追い掛けつつ、ですね。

 そうですね。あとは、乃木坂46のキャプテンとしてしっかりみんなのことをまとめていきたいです。周りからは「ポンコツキャプテン」って言われるんですけど(笑)、私が女優として作品に出ることで、それを観た方が乃木坂46に興味を持ってくれるかもしれない。自分の夢と、メンバーみんなの夢を、一緒に叶えられるように頑張っていきたいです。

――ところでインタビューを始めた頃、ちょっと不安げな表情だった気がしたのですが……。

 バレていましたよね(笑)。私、『ダ・ヴィンチ』さんは高校の図書館でいつも読んでいた雑誌なんです。うちの学校はすごく厳しくて、図書館には本しか置いてなかったのに、『ダ・ヴィンチ』だけは毎月読めたんですよ。だからすごく思い入れがあって、今日取材をしていただけるって聞いて楽しみだったのに、昨日家族と一緒に『天使のナイフ』の第二話を観ていたら、お父さんが私の演技について文句を言ってきて! なんにも知らないくせに……と思いつつ、私も反省しなきゃなと思っていた、痛いところを微妙に突いてくるんですよ。だからすごく落ち込んじゃって……。でも、お話ししていたら元気になりました(笑)。もう一回自分なりにどこが良くてどこが良くなかったのか、映像をちゃんと観返して、次に繋げていきたいって気持ちでいっぱいです。

取材・文=吉田大助 写真=中惠美子