【東日本大震災から4年】あの時、地元で起こっていたのか? 当事者たちの現実を知る4冊

社会

更新日:2015/3/11

 東日本大震災の発生から4年。“過去のもの”というには早すぎる。しかし、いつの間にか私たちの頭の中から、震災の時のことが遠ざかりつつあるのは事実だろう。あの時、地元では何が起こっていたのか? 何が起こってきたのか? 当事者たちがその生の声を効かせてくれる作品をご紹介する。改めて震災のことを知る手がかりにしていただきたい。

大切な人との突然の別れ、納棺師が見た震災

『おもかげ復元師』(笹原留似子/ポプラ社)
『おもかげ復元師』(笹原留似子/ポプラ社)

岩手県北上市の納棺師・笹原留似子さんの著書。笹原さんは津波などで損傷を受けた遺体を生前の姿に近づける「復元ボランティア」として活動した。生後わずかの赤ちゃんから高齢者までいろいろな方の遺体。亡くなった方への家族の想いが、笹原さんの視線を通じて伝わってくる。孫娘の遺体には仏衣ではなく振り袖を着せてやりたいと願う祖母、母親の亡骸の傍らで「もう反抗しないから帰ってきて」と訴える中学生の男の子。犠牲者ひとりひとりに家族があり、悲しい別れがあったのだと改めて知らされる。

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「死者」なのか「犠牲者」なのか、地元紙の苦悩

『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙』(河北新報社/文藝春秋)
『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙』(河北新報社/文藝春秋)

河北新報は東北地方をカバーするブロック紙。本社は仙台にあり、震災では設備、機能も被害を受けた。本書は、それでもなお新聞を届けようとする記者を始めとする従業員たちの記録である。当然地元紙ゆえの苦悩もあったようだ。例えば宮城県内の犠牲者が万単位になることを報じる際、全国紙が「死者」という言葉を見出しに使う一方で、河北新報の記者は訴求力では劣る「犠牲者」という言葉を選択した。「一万人を超す死者が出た冷厳な事実を自分が認めたくなかったのかもしれません」とその記者は語っている。自らも被災した彼らが地元の人たちに寄り添い、ライフラインとしての情報を届ける姿には頭がさがる。

残酷な事実。生き残った人々は犠牲者とどう向き合ったのか

『遺体』(石井光太/新潮社)
『遺体』(石井光太/新潮社)

残酷すぎる。津波は犠牲者たちを容赦なく傷めつけた。本書は、地震や津波の難を逃れ、生き残った人々に迫ったルポルタージュである。生き残った瞬間から犠牲者と向き合うことを迫られた人たちに起こったこと。遺体安置所で、津波の引いた瓦礫の中であった悲しき現実が克明に記録されている。それは決して目をそむけてはならない現実だ。

『遺体』の詳しいレビューはこちら
「震災の真実を伝える、遺体をめぐる数々の証言(2013.3.11)」

作業員自らが描く原発のリアル

『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(竜田一人/講談社)
『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2)』(竜田一人/講談社)

『終わりなき危機〜日本のメディアが伝えない、世界の科学者による福島原発事故研究報告書〜』(ヘレン・カルディコット/ブックマン社)のように、海外からの福島第一原発への注目度はいまだに高い。『いちえふ』は福島第一原子力発電所の作業員自らが描くルポマンガだ。『モーニング』掲載時から大きな話題となった本作の第2巻が2月に発売された。一度は原発を離れた作者は、再び現場に戻って原発の作業員として働き始める。2巻でも変わらず、そこで働く人々の現実が淡々と、ともすれば「軽い」と思えるほどのタッチで描かれる。それゆえ「いちえふ」で描かれる原発の姿はリアルなのだろう。

『いちえふ』第1巻の詳しいレビューはこちら
「福島原発で働く作業員の日常をリアルで緻密な線で描くルポコミック(2014.12.21)」

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