特集番外編2 2008年12月号
公開日:2008/11/10
はやみねかおる特集に寄せて
編集P
ある日、駅の小さな本屋さんで、本棚の後ろに引っかかっている、一冊の本を見つけました。
手を突っ込んで引っ張り出すと、そこにあったのは、見たことも聞いたこともない作家の名前。
手にしていた『雪の女王』とその本を祖母に見せ、「どっちがいい?」と聞くと、祖母は迷わず、その本を指差しました。
いまでもはっきり覚えています。
母を待つ祖母の家。畳の上で、夢中になって読んだ日。
次から次へと起こる事件に夢中になり、キャラクターのあまりのユニークさに文字通り涙が出るほど笑い、その日のうちに5回も繰り返し読んだ日の、あの衝撃。
その本こそが『そして五人がいなくなる』――はやみねかおるさんとの出会いでした。
あれから15年、ストーカーのようにはやみねさんの作品を追いかけています。
どうしてだろう。どうしてはやみねさんなんだろう。
昔からずっと、不思議でした。
この、大好き、という気持ちはどこからくるんだろう、と。
今回、特集をさせていただくにあたって、改めてじっくり考えました。
そして思い当たりました。
幼いころ、夢中になって読んだ本はどれも、ただおもしろかった。
早くページをめくりたいのに読むのが追いつかない、あのじりじりとした感じ。
登場人物と一緒になって、冒険したり事件の謎を追ったりした、あの躍動感。
ただただひきこまれていくなかで生まれた、熱のこもった興奮。
わたしたちが“物語”に求める一番大切なものがぜんぶ、つまっている。
“おもしろい”がここにぜんぶつまっているからだ。
そう、思いました。
はやみねかおるさんご自身の魅力も、どんな作品がすでに出版されているのかも、今回の特集ではできるかぎりご紹介させていただきました。
あとは、皆様ご自身で手にとって、読んでみてください。
そうすればきっと、懐かしい興奮と新しい出会いに、夢中になるはずです。
最後に、今回の特集にご協力いただきましたすべての皆様にお礼を申し上げます。
mixiおよび講談社のホームページから、今回のアンケート企画にご協力くださった読者のみなさま。
お忙しい中、作品すべてを網羅する素晴らしいイラストを描いてくださった、にしけいこさま。
そしてご自宅での3時間以上に及ぶ取材を、こころよくお引き受けくださった、はやみねかおるさま。
みなさま、本当にありがとうございました。