不倫の悩みも解決してくれる? こっそり行きたい欲望ご利益神社の実態

ライフスタイル

2015/3/14

 「この世は芸能界も、会社も、サークルも、幼稚園もPTAも、成分はみんな同じ。悪意、ねたみ、そねみ、ひがみでできています。それを知っているだけで人間関係はとても楽になります」といったのは美輪明宏だが、酷い振られ方をした女の怨念は、そう簡単に解き放たれるものではない。そのせいか今も日本には数多くの縁切りや縁結びにまつわる神社が多く存在して、古代の女と現代の女を結ぶ互助会と化しているのかも。

 『こっそり行きたい 欲望ご利益神社』(メディアファクトリー)は、元彼にメール1本で振られた挙句、同じ社内の女と付き合われ、最終的にストーカー呼ばわりまでされるようになった傷心の主人公が、東京や京都でありとあらゆる「女の欲望」にご利益があるとされている神社をまわるコミックエッセイ。

 古代の日本人は慈悲深かったのか、それとも怨念が後世まで続くことを恐れていたのか。小野小町に「百夜通い続けたら愛を受け入れる」といわれて6キロの距離を毎日通い続けた挙句、99日目にして力果て、霊になってから「俺はあの女に騙されていただけなのではないか」とようやく気づいたとされる深草少将の怨念を鎮める神社や、仙台のお殿様に勝手に惚れ込まれて断り続けていたら、突然首を斬られた吉原の大夫を祀る神社など、いわゆる男女の恋愛のもつれに関わる伝説が残された神社が多い。もしかすると家の近所の神社にも目眩くような情事の末の伝説が残されているのではないかと、ちょっとばかり興味が湧いてくる。

 定番の縁切りや縁結びに加えて、美肌、美白、美脚、女子力UPや、恨み晴らし、仕事運UPなんていうご利益も紹介している。中には恨み晴らしなんていうディープなご利益まであるのだが、考えてみたら妙齢女の神社参拝が密かなブームになっているのは、晩婚化の影響で不倫カップルやワケありカップルが急増し、切羽詰まった年齢になってから破局を迎える傾向にあるのが関係しているのかもしれない。一緒にランチへ行き、互いに愛想笑いをする程度のさして仲良くもない同僚にポロリと失恋話をもらして、知らぬ間に社内でブワァーッと噂を広められるリスクを考えたら、コツコツ貯めていた貯金を切り崩してお守り飾りを全種おとな買いするくらいのほうが、リスクヘッジという面では有効だ。

 主人公も、神社めぐりを続けることで新しい友人もでき、活動の幅を広げている。ほかに夢中になれるものを見つけることで失恋の痛みが癒されるという好例だ。縁結びの神様に相当な投資を続けているようだが、どんどん祭神博士化する彼女はいつそれを回収できるのか。気がかりである。

文=山葵夕子


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