『ポポロクロイス物語』ファン歓喜! 名作RPGの衝撃的真実を明かす前日譚

文芸・カルチャー

2015/3/31

『ポポロクロイス物語』というゲームが好きだ。1996年にプレイステーションで発売されたシリーズ第1弾は、絵本のようなグラフィック、ほのぼのしたストーリーが人気を呼び大ヒット。その後も番外編、続編、主人公が代替わりしたシリーズ作品が続々リリースされ、多くのファンに愛されてきた。小さな泣き虫王子が冒険を通じて成長する姿は微笑ましくも愛おしく、じんわりと胸に来る。中でも、王子の初恋を描いた『ポポロクロイス物語II』は“泣けるRPG”のオールタイム マイベスト。今でも名シーンを思い返せば、“思い出し泣き”できるほどだ。きれいな小箱に入った砂糖菓子のように、それはもう大切に味わいながらクリアした記憶がよみがえる。

そんな『ポポロクロイス物語』の前日譚にあたる小説が、このたび偕成社から発売された。ゲームの原作者である田森庸介さんが執筆し、挿絵はゲームのキャラクターデザインを手がけた福島敦子さんが担当。生みの親コンビの手により、ファン待望の「ポポロクロイス正史」が明かされる。

主人公はポポロクロイス王国の王族……ではなく、ルーベンの森に住む少年ムルカ。ある時彼は、三匹の黒竜に追われて森に逃げ込んだ白き竜の姿を目撃する。白き竜の尾に刺さった〈竜の剣〉を抜くには、ポポロクロイス王国にいるランスという男の力が必要。そう知ったムルカは、初めての旅に出る。仲間との出会い、芽生える友情、闇の勢力の台頭、やがて明かされる自らの出自。やがてこの世界の四種族――神族、妖精族、竜族、人間族を巻き込む〈ルーベンの戦い〉が幕を開ける。

ゲーム第一作からさかのぼること十数年前(推定約20年前?)の物語だが、パウロ王子、サニア、ガミガミ魔王、ギルダをはじめ、シリーズキャラクターが続々登場し、ファンにはうれしい限り。「ムルカって、のちのあの人か!」「こんなところであの二人が出会っていたとは……」「あの事件の発端は、ここにあったの!?」と目から鱗がポロポロ落ちまくる。歴史とは事件や出来事の連なりではなく、大河のような流れ、うねりなのだと改めて実感。読後はもう一度ゲームをプレイし、この手で歴史を再現したくなった。

もちろんゲームをプレイしていない人でも大丈夫。上質なファンタジーとして、小学生から大人まで十二分に楽しめる。気高くも美しい白き竜、精霊のささやきのような歌姫の声、潮風を切って青い海を進む帆船、魔法旅団の不思議な魔法ショー、異国の姫君の情熱的なダンス。生き生きとした筆致が五感を刺激し、胸の奥底に眠る冒険心をかきたてる。文章を取り囲むように描かれた挿絵が、読み手の心を異世界に運んでゆく。自称「恐怖の大王」ながら、どこか憎めないガミガミ魔王のマヌケな活躍ぶりも、シリアスになりがちな物語のほどよい緩和剤になっている。いつしかムルカのように怒ったり笑ったりしながら、ページを繰っている自分に気づくはずだ。

6月18日には、実に11年ぶり(!)の新作ゲーム『ポポロクロイス牧場物語』の発売が予定され、にわかに盛り上がりを見せる同シリーズ。かつてのファンも、ファンタジー好きも、お子さんの児童書を探す親御さんも。温かくも愛おしい『ポポロ』ワールドでひとときの冒険を楽しんではいかがだろうか。

文=野本由起

『ポポロクロニクル 白き竜(上)』(田森庸介:著、福島敦子:イラスト/偕成社)
『ポポロクロニクル 白き竜(下)』(田森庸介:著、福島敦子:イラスト/偕成社)