一人前のトンカツ屋とDJを目指す!? ジャンプにまたしても異色のギャグマンガが登場?

アニメ・マンガ

2015/3/30

 渋谷のとんかつ店の3代目アゲ太郎は、人生の目的を見いだせないまま、家業のとんかつ店を手伝う日々を送っていた。ところが、出前で偶然訪れたクラブでDJが生み出すグルーブに今まで味わったことのない高揚感を感じ、とんかつ職人とDJの両方で一人前になりたいと志していく…。それが本作『とんかつDJアゲ太郎』(小山ゆうじろう:著、イーピャオ:企画・原案/集英社)である。

 なぜとんかつとDJなのか? というとどちらも「アゲる」ものだからというだけ。

 言って見ればデオチである。物語の合間に挟まれるギャグも、クラブイベントを告知するフライヤー(ちらし)を、とんかつを揚げるフライヤーと勘違いしたり、DJの師匠がアゲ太郎の認識の甘さを指摘する際に「甘い、上質なラードより甘い!」といったりととんかつ感満載である…。設定の奇抜さだけでいけるところまで引っ張る、典型的なデオチ漫画に見えるのだ。

 一見しょ~もない設定の本作が、異色のジャンプ作品として話題となっている。なぜか? それは本作がクラブカルチャー(と、とんかつ)を題材にしながらも、少年の成長をメインテーマとした正統的な青春物語だからだ。

 DJとしてのテクニックの習得やイベントでの集客など、さまざまな困難に直面したアゲ太郎は、師匠や仲間たちの助けを借りながら、その困難を乗り越えていく。そしてそのたびにDJ(とんかつ師)として成長していく。

 第1話のショルダーに「とんかつとクラブカルチャーを愛するすべての人に捧ぐ、ある少年の青春立志物語」とあるが、少年漫画としての正統的なストーリーとどこまで本気かわからない脱力感のセンスが、この作品をユニークなものにしているのだ。

 若者文化を独特のギャグ感覚とヘタウマ風な絵柄で脱力感たっぷりに描き出した漫画と聞いたとき、ある一定以上の年代が真っ先に思い浮かべる名前は漫画家の渋谷直角ではないだろうか。『relax』などマガジンハウス系の雑誌への寄稿の印象が強いが、最近では、サブカルをこじらせた若者の生態を残酷なまでに描き出した『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』(扶桑社)が注目されたのが記憶に新しい。

 初めてこの作品を読んだ時、これは渋谷直角に似たテイストの作品なのかな、そう思った。ところが、中を読み進めるにつれ、共通点よりも相違点の方が大きいことに気がついた。

 最大の違いは、アゲ太郎がDJとして、とんかつ師として一人前になるという夢にマジになっていることだ。とんかつ師として父親を乗り越えるという目標を抱き、それに向けてちゃんと努力していることだ。

 バカバカしくもアツいサブカル漫画。少年ジャンプ系の単純な漫画でしょ!? と食わず嫌いで馬鹿にすることなかれ。世間を斜めに見るニヒルな人物ばかり出てくるサブカル漫画に飽きた大人にこそ、ぜひ一読して欲しい作品なのだ。

文=坂東太郎(id-press)