僕、いつまで妊娠させられますか? ―「せめて自分の精子には興味をもってもらいたい」 【香川則子さんインタビュー前編】

出産・子育て

更新日:2015/3/28

卵子だけではなく、精子だって老化する

「女性の卵子が老化する」ということを広く世間に知らしめたのは、2012年にNHKで放送された番組『クローズアップ現代』の「産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~」だった(反響が大きく、その後シリーズ化されて多くの番組が放送された)。しかし「卵子老化」のインパクトが強すぎたこともあり、「女性は35歳を超えると妊娠が難しくなる」ということだけがひとり歩きしてしまったという。

「女性も30歳頃というのは仕事も楽しいし、責任ある立場になっているものです。しかしもっとキャリアを積もうとか、楽しいからいまは仕事に集中したいとかいっているうちに、うっかり35歳を過ぎ、産みづらい年齡になってしまう。それで慌てて婚活をするけれど、“産めない”と思われている年齡だと結婚もしてもらえないという現実があるんです。それで破談になった方もいますし、見合いリストにも入れてもらえないということもあって、さらに出会いが難航してしまうんです。そしてアラフォーになると、年上の男性から“子どもが産めない年齡なら、親の介護をして欲しい”ということを求められてしまうんです。子どもができなくても素敵な方はたくさんいるのに…本当にひどい話です」

 卵巣で眠っている卵母細胞(未熟な卵子)が卵子になるには「減数分裂」を行う。しかし卵子が老化すると、この分裂がうまく行かず、染色体を分離させることができなくなる場合がある。もしその卵子が精子と受精したとしても、染色体にエラーがある受精卵ができてしまい、正常に育たなかったり、着床がうまくできなかったり、着床したとしても流産してしまうことがあるという。これが高齢になると妊娠・出産が難しくなる理由だ。しかし老化は卵子ばかりではない。「男性だって30代前半~半ばくらいになると、精子が老化するんですよ」と香川さんは強調する。

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「女性は初婚で30代、男性は再婚で年上という夫婦が不妊治療をしたとき、男性は“自分は前妻との間に子どもがいるから、不妊は妻が原因”とおっしゃったんですね。でもそれは推測でわかる問題じゃないんです。それで調べてみると、男性の精子が少ないことが不妊の原因でした。これは加齢によって起こることなのでごく普通のことなんですが、奥様は“旦那には黙っていて欲しい”と言うんです。夫婦関係が変わってしまうから、と。私は『いいんですか?』と念押ししたんですけど、奥様はそれでいいと。結果的に妊娠できる精子があったので、顕微授精をして、無事に子どもが生まれたんですが」

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