僕、いつまで妊娠させられますか? ―「せめて自分の精子には興味をもってもらいたい」 【香川則子さんインタビュー前編】

出産・子育て

更新日:2015/3/28

 また不妊治療の現場で、男性側は「顕微授精じゃなくて精子の振りかけ(体外受精)でやって欲しい」という人が多いという。「顕微授精なら、元気な精子を選んで針で卵子に挿すので確実に受精卵になるんですが、振りかけだと、受精しない場合があるんですよ。でも男性は“卵子の殻をぶち破って受精して欲しい”とか思うんでしょうかね? 精子と違って、卵子が貴重なものだってことをわかってないんでしょうけど」

 男の沽券に関わるからだろうか? いくつになっても、愚息に振り回される男たちの愚かさよ…。

「男性って自分にとって不都合なことは知りたくないものなのか、不妊治療に女性の付き添いで来て、精子も調べましょうと言うと“自分はいいです”という方が多いんですよね。でも納得してもらって、検査の結果精子が元気なことがわかると、まるでヤクザ映画を観た後みたいに自信満々になって帰っていくんです(笑)。ただストレスがかかると、精子って少なくなってしまうものなんです。白血球が精子を食べてしまうんですね。ストレスがかかっている体を守ろうとするんです。今は子作りどころじゃないぞ、と。そのことを男性は知ってますか? 私は、男性に“卵子に興味を持て”とまでは言いません。もちろん興味を持ってもらいたいんですけど、その前に、せめて自分の精子には興味をもってもらいたいんです。その時の体調で結果は変わるので、一度の検査で一喜一憂せず、自分の精子が女性を妊娠させられるのかどうか、まずはそのことをしっかり知って欲しいですね。妊娠は夫婦2人の問題です。女性の立場から見ると、こういうところで非協力的な男性と、協力して子育てをしていけるのか……と心配になってしまうんですよね」

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 量が出るとかよく飛ぶとか、10代の男子が考えるようなことではなく、「精液の中に精子がいるのかどうか」が重要なのだ。たくさんいなくても、卵子と受精できる元気な精子があればとりあえずはOK。少なかったからといって、落ち込む必要はない。とにかく妊娠・出産に関することを女性だけに任せるというのは時代遅れの間違った認識であり、不妊の原因の半分は男にもあるということをしっかりと自覚すべきなのだ。

【後編に続く】「流産をした相手に『また今度頑張ればいいじゃない』とは言わないで」

文=成田全(ナリタタモツ)

プロフィール

生殖工学博士 香川則子さん

京都大学大学院卒。不妊治療専門病院の付属研究所で生殖医療を研究。ヒトの卵子保存プロジェクトと絶滅危惧種保護のプロジェクトを担当。その後、卵子や卵巣を凍結保存するプリンセスバンクを設立。カウンセリング等にとどまらず、クラウドファンディング「Makuake」を通じて卵子凍結に関する情報を広く提供している。

著作紹介