僕、いつまで妊娠させられますか? ―「流産をした相手に『また今度頑張ればいいじゃない』とは言わないで」【香川則子さんインタビュー後編】

出産・子育て

2015/3/28

 【前編】では、男性と女性の立場の違いによる結婚後の子作りのすれ違い、そして卵子ばかりか精子も老化するという、ほとんどの男性が知らないであろう話が飛び出した。【後編】では、さらに妊娠・出産について女性に知って欲しいこと、そして男性は女性をどうサポートしたらいいのかについて聞いた。

香川則子さん

【前編】「せめて自分の精子には興味をもってもらいたい 」

産む体の状態にするには「年単位」かかる

 第1子出産時の母親の平均年齡は年々上がり続けている。2011年にはついに30歳を超え、2013年は30.4歳となった(厚生労働省「人口動態統計」)。これは第2子、第3子を望むのであれば、急がないと「産めなくなる可能性が高い年齢になってしまう」という状態にある。さらには働く女性に対するマタニティ・ハラスメントや保育園の待機児童問題など、子どもを産み育てる環境は現在かなり厳しいと言えるだろう。

「私のところへ卵子凍結の相談をしにくる方は、責任感の強い女性が多いんです。“今やっているプロジェクトが終わったら卵子を凍結したい、でも今はちょっと無理なんです。それで先生、私はいつまで産めますか?”と聞いてくるんですね。そう聞かれたら、私は“今ですよ、なうです!”と言っています。産みたいと思った時が産みどきなんですよ。でもこういう方は、子作りも時間のコマのひとつになっているんですよね。仕事のスケジュールと一緒なんです」

 しかし子どもが欲しいと思ってから、ちゃんと「産める体」になるまでには時間がかかるものだという。本書『私、いつまで産めますか?』(香川則子/WAVE出版)ではその産める体の状態にすることを「エア妊活」と呼び、産みたい気持ちがある人は、今パートナーがいないとしてもすぐに始めるよう促している。

「仕事が忙しいから生理が来ないのは都合がいい、楽だ、と思うのがそもそもおかしいんですよ。女性もストレスが強まると排卵しなかったりするんですが、それって生理の周期がむちゃくちゃになってるってことですからね。さらに眠れないからと薬を飲んだり、栄養ドリンクを飲んで無理したりして、女性がおじさんみたいになっちゃってるんです。感覚が麻痺して、性別を超えてしまうんですよ。そんな人が仕事モードで“課題をお願いします!”みたいな感じで卵子凍結の話をしに来るので、子どもはそうやって作るものではないんですよ、と言うところから始めています。産める体になるには、まず女性たちが仕事モードの時に着ている鎧を脱がせて、おじさん化しているヒゲを抜いてあげないといけない。プレお母さんの状態に戻すのは、年単位かかるものなんです」

 同行した編集者の妻も、妊活のために仕事をセーブし、体調を整えて妊娠するまでに2年かかったという。

「自然妊娠の方が子どもを持てる確率は高い、ということをまず知ってください。ちなみに体外受精を受ける女性の平均年齡は39歳、しかもチャレンジした人の10%しか成功しないんです。アラフォー世代で妊娠した人は、その過半数が自然妊娠なんです。今は5、6組に1組のカップルが子どもを作れないという状況で、これは小さくない数字なんですが、検査をしてみるとお互い体には問題ない、精神的な面で難しいという場合が多いんです。なので子どもを作ろうと焦らず、構えずにセックスをすることが大事なんだと思うんです。日本人がセックスをするのは年間40回という統計がありますけど、これは非常に少ない。一番多いギリシャは年間140回ですから、1/3以下です。自然妊娠をするためには、ある程度数を打たないと当たらないということはありますから。ちなみに、子どもを作ろうと週に2~3回、2年続けてセックスをしても妊娠できない、というのが医学的見地からの“不妊症”です。でも多くの人はもっと早く諦めてしまっているんですよ。そういう人たちは不妊治療をしなくても、本来は自然妊娠できたはずの人であるわけです」

 香川さんは「卵子凍結」を推奨しているわけではない。病気で産めなくなることに備えたり、2人目を希望しているのにのできにくいという「2人目不妊」に備えたりというのが卵子凍結保存の本来の目的であり、最初から高齢出産を目指して行うものではないのだ。

「35~39歳は平均5人に1人が妊娠・出産できますが、40~44歳は25人に1人。高年齢になっても産める“保険”として卵子の凍結をするんです。私もゆくゆくは産みたい、本当は自分が3人きょうだいだから、できたら3人、でもそれだと大変だから、せめて2人はと思っていたんです。20代の頃、私が実家に帰省するたびに母からの産め産め攻撃がとにかくスゴかった(笑)。『女たるもの』から始まって、30歳目前になってくると“いい加減にしなさい”と許されない状況になりました。産む気はある、でも今はできない、落ち着いたら…ということで私も卵子を30代前半に凍結して、その写真を親に見せて免罪符としました。でもその後、2年くらいかけて産める体の状態に戻して、仕事も明日でいいことは明日、緊急時以外は急がない、という働き方をして、排卵日もちゃんと調べて、これでダメだったら凍結卵子を使おう、と思っていたところ自然妊娠をして、子どもを産みました」

 香川さんと同じく、卵子の凍結をすることで自分の体と向き合い、体調を整えたりしたことで自然妊娠するという人はとても多いそうだ。

「卵子を凍結保存すると、卵子を使うか使わないかを後で決められるんです。しかし採卵には痛みや不安もあります。心や体も含めてどんなメリットが、そしてどんなデメリットがあるのかをきちんと提示して、それを知った上で選択してもらうということを大事にしています。また卵子の老化を食い止めたい、何が何でも結婚して子どもを産みたい、と自分を追い詰めてネジれてしまう人もいるので、そういった人の気持ちを緩和してあげることもできるんです」

 ただ不妊治療や卵子凍結保存には多額の費用がかかる。香川さんは「辛い思いをして、少なくない額のお金を投資する必要が本当にあるのかどうか、きちんと考えてみて欲しいですね」と、安易なチョイスには釘を刺している。卵子凍結とはどんなことをするのか、またそこにはどういった問題があるのか、費用はどのくらいかかるのかなどはぜひ本書で確かめて欲しい。

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