僕、いつまで妊娠させられますか? ―「流産をした相手に『また今度頑張ればいいじゃない』とは言わないで」【香川則子さんインタビュー後編】

出産・子育て

更新日:2015/3/28

男性には女性の痛みや気持ちを知って欲しい

「女性には、なりふり構わず、どうしても子どもを産みたいという強い気持ちが生まれるときがあるんです。男性には“どうしても俺の子が欲しい”という女性と同じような強い気持ちが生まれるときって、ないですよね?」

 そう香川さんに聞かれ、男女の一番大きな「ズレ」は、どうしても自分の子どもを産みたい、欲しいと強い気持ちを抱く「温度差」にあるように感じた。もちろん男性も自分の子どもが欲しいとは思うが、気持ちの強さは、自分の体内に命を宿す女性の比ではないのだ。そして心のどこかで、男は「妊娠・出産は自分には関係ない、それは女の仕事だ」と思っていないだろうか? それとも「男は妊娠・出産の話題には触れてはいけない」と暗に幼い頃から刷り込まれてきたからだろうか?

「妊娠は女性の問題、男性はタッチしないものという“呪い”を早く解いて欲しいですね。これは性教育に問題があると思うんですが、基本的に性教育では“初潮”のこと、そして“避妊”のことを教えるんですよね。でも妊娠、出産、産後、子育て、そして男性がどう女性をサポートしていくべきかという協力体制まで含めて、小中学生だけではなく高校生、大学生になってからもしっかりと“いのちの授業”として教える方がいいんじゃないかなと私は思っています。そうすることで男性にも“当事者意識”を持ってもらえるのではないかと思うんです」

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 妊娠・出産に対して男女で考え方や感じ方、捉え方に温度差があるということをきちんとわかっていれば、結婚前に子どもをどうするか話し合うことがいかに大事かも自ずとわかるだろう。

「どういう家庭にしたいのか、子どもはいつ頃欲しいのか、結婚前に話し合えれば対策できますよね。よくよく話してみると、実は子どもが欲しくないという人もいるわけですから。そういう男性は仕事が忙しいとか、家にいる時間を短くするとか、子どもの話が出ると機嫌を悪くしたりするんですよ。でもそういうとき、女性は“私には確実にリミットがある”ということをはっきり言うべきです。その返答次第ではパートナーシップの解消も視野に入ってきますよね」

 実際に不妊治療をしたり、妊娠・出産する際に体に大きな負担がかかるのは女性だ。もちろんその後の子育ても「基本的には女性がするもの」といった風潮がある。しかしそうした旧態依然としたことを取っ払って、男性としていかに女性と子育てをサポートしていくのかを考えなければいけない。「俺は毎日外で働いてるからいいじゃねぇか」なんてのは、男の発するセリフの中で最低なものなのだ。

「30代後半になると、流産の可能性は2割を超えます。でも男性は、胎児が流れてしまうことを体感していないので、小さく捉えてしまいがちなんです。だから“また今度頑張ればいいじゃない”とか言ってしまう。そうではなく“ツライよね”と声をかけてあげて欲しいんです。そして心も体も元気になってから、今後どうしたいのかを女性に聞いてください。ツラい姿や孤独を癒やす時間を、カップルの間で作ってもらいたいんです。また不妊治療であれば“卵採れた?”などと聞くのではなく、“大丈夫?”と言ってあげて欲しい。体調が悪そうなら“ご飯作ろうか?”と声をかけて欲しいんです。排卵を促すホルモン注射というのは、とても痛いんです。また卵巣刺激をするために体に針を刺すのですが、いくら無痛針とはいっても痛いものなんですよ。とにかく男性には、こうした女性の痛みや気持ちを知っていてもらえればと思います。肉体的に違いますから、なかなか女性と同じようにいかないのはわかりますが、精神的な面でどうサポートしたらいいのかということを、パートナーシップのひとつとして知っておいて欲しいんです。そして卵子や精子がどう受精し、胎児はどうやって育つのかなど、妊娠・出産に関して、日常的にもっとフランクに語れるようになるといいですね。それが男性同士でも、親子でも自然に話せるようになると、女性にとってストレスのない環境になるんじゃないかなと思うんです」

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