「マンガ家マンガ」の次は、「小説家マンガ」がくる!? ひとりの少女が花開くドラマに刮目せよ!

マンガ

公開日:2015/3/31

 いま、マンガ家を主人公に据えた「マンガ家マンガ」が、にわかに人気を集めている。今秋、実写映画化が予定されている『バクマン。』(大場つぐみ:著、小畑 健:イラスト/集英社)、少女マンガ家である男子高校生が主役の『月刊少女野崎くん』(椿いづみ/スクウェア・エニックス)、マンガ家とアシスタントの日常を描いた『マンガ家さんとアシスタントさんと』(ヒロユキ/スクウェア・エニックス)などなど、挙げればキリがないほどだ。確かに、いずれの作品もおもしろい。普段ぼくらが知る由もない業界の裏事情が垣間見えるし、なによりもリアリティがある(マンガ家がマンガ家を描いているのだから当然だけど)。

 とはいえ、若干の飽和状態も否めない。そんな状況で、次にくるのではないかと期待しているのが、「小説家マンガ」だ! 小説家の生活、と聞くだけで、なにやら破天荒そうなニオイがぷんぷんする。それをマンガにしたら、きっとおもしろいはず。で、探してみればありましたよ、小説家マンガ。そう、『響 小説家になる方法』(柳本光晴/小学館)だ。

advertisement

 本作の主人公は、小説が好きな女子高生・鮎喰響。この響は、「作家って、やっぱり変わってるよね」という世間の声を地で行くような人物なのだ。響は他人に愛嬌を振りまくことができない。空気を読もうとせず、思ったことをストレートに口にしてしまう。周囲の生徒を「馬鹿ばっかりだ」と見下し、休み時間になれば一人で読書にふける始末。もちろん、友人などできやしない。挙句の果てには、不良の先輩に絡まれた際、臆することなく立ち向かい相手の指を折り、さらには目をボールペンで潰そうとする…。

 と、ここまで書くと、変わり者というレベルを超え、やばい人というレッテルが貼られてしまいそうだが、フォローしておくと、響は自分の気持ちに純粋に従っているだけの無垢な人間なのだ。周囲に馴染むため無理に話を合わせる、自分が悪くなくとも頭を下げる。ぼくらが普段やっていることに、響はNOを突きつけ、自分の欲求に真っ直ぐに生きているだけ。それはある意味、理想的な生き方だとも言えるだろう。

 そんな響は、「自分の小説を読んでほしい」という純粋な思いから、文芸コンクールに応募する。ところが、募集要項は一切無視。しかも、住所も年齢も電話番号すら記載せずに。案の定、編集部では、「最低限のルールも守れない人間とは仕事ができない」と、響の原稿は読まれもしない。しかし、低迷する文芸界の復活を願う編集者・花井が、響の原稿に目をつけ、「ダイヤの原石」を見つけたと確信する。応募者不明のこの原稿を、なんとか本にしたい。そんな花井の願いなどつゆ知らず、響は入部した文芸部の面々と、小説の創作に打ち込んでいく。

 冒頭で、この作品を「小説家マンガ」と言ったが、厳密には響はまだ小説家ではない。しかし、おそらく花井の手により小説家になるのだろう。つまりこれは、ひとりの女子高生が小説家になるまでを描いた作品だ。才能が花開く瞬間というのは、見る者の心を震わせる。小説家がどのように生まれるのか。意志ある編集者が、才能を持つ者にどうアプローチしていくのか。本作は、まるでドキュメンタリーを観ているかのような読後感だ。響が大輪の花を咲かせるまで、追いかけて行きたいと思う。

文=前田レゴ