赤ちゃんのママが必ず涙すると話題! 感動の詩を読んでみた!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

ひどい夜泣き、睡眠不足、理解のない夫…。感動的な出産からしばらくして、シビアな現実に母親はひとりたじろく。育児書を開くと、「母親は◯◯しなければならない」「良い母親になるための◯◯」の見出しが焦燥感に追い打ちをかける。独身時代は自分の面倒を見ればよかった。妻になると、夫のための時間が増えた。そして母になり、自分の時間は独身時代の3分の1…いや、それ以上に取れなくなった。

時間が足りずに、お皿を洗えない。ベッドはぐちゃぐちゃのまま。床にはほこりが目立ち、窓ガラスはよごれすぎてアートのよう。誰が見ても「良い母親」とはいえない。赤ちゃんを育てているママの悩みやつらさは、はたからは計り知れない。

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ニュージーランドを中心とする英語圏で、赤ちゃんを育てている母親たちを励ます詩が伝わっている。タイトルは「Today」。詠み人知らずのこの詩が日本で訳されると、SNSなどで大きな反響を呼び、一気にウェブ上で広がった。わずか430文字程度、ゆっくりでも1分半ほどでよみ終えてしまう短い詩は、訳者の伊藤比呂美が10分で訳したものだ。これにふんわりとした絵がついた『今日』(福音館書店)が出版されるやいなや、こちらも口コミで火がつき、「涙が止まらなかった」「自分を責めなくてもいいんだ」「バイブルのように毎日読んでいる」「友人の出産祝いに贈った」など高い支持を集めている。

育児に追われ、家事をする時間が取れない。「今日一日、何をしていたの?」と問われても、「おっぱいをやっていた」「泣きやむまでだっこしていた」…たいしたことはしなかったのかもしれない。でも、それは一面的な見方ともいえる。赤ちゃんにとっては、どれもすごく大切なことなのだ。詩は、このように、母親を温かく包む。

伊藤は、訳詩の序盤に登場する「よごれすぎてアートみたい」という言い回しがおそらく誤訳だと告白している。しかし、同時にこの“てきとうに訳した”言い回しが気に入っている。「ずぼら、がさつ、ぐうたら」というてきとうさが、育児の極意だと信じているからだ。

ウェブ上を検索すると全訳文を閲覧することもできるが、育児のよき理解者として、小さく美しい本書を手元に置くことをお勧めしたい。

(以下、原文のみ掲載)

Today

Today I left some dishes dirty,
The bed got made about two-thirty.
The nappies soaked a little longer,
The odour got a little stronger.

The crumbs I spilt the day before
Were staring at me from the floor.
The art streaks on those window panes
Will still be there next time it rains.

“For shame,oh lazy one,”you say,
And”just what did you do today?”

I nursed a baby till she slept,
I held a toddler while he wept,
I played a game of hide’n’seek,
I squeezed a toy so it would squeak.
I pushed a swing,sang a song,
I taught a child what’s right and wrong.

What did I do this whole day through?

Not much that shows, I guess it’s true.
Unless you think that what I’ve done
Might be important to someone
With bright blue eyes, soft blonde hair.
If that is true, I’ve done my share.

文=ルートつつみ