累計130万部を突破し、まだまだ勢いは止まらない! 『魔法使いの嫁』3巻に高まる期待

マンガ

公開日:2015/4/6

 父は失踪、母は目の前で亡くなり、身寄りも生きる希望も失った、15歳の日本人の少女・羽鳥智世(チセ)と、イングランドに住む、動物の骨でできた頭部を持つヒトならざる魔法使い・エリアス。裏オークションで「弟子」そして「嫁」としてエリアスに買われたチセが遭遇する、さまざまな事件を描き、第1巻第2巻合わせて100万部を突破した、ヤマザキコレのファンタジー漫画『魔法使いの嫁』(マッグガーデン)(以下、「まほよめ」)。

 3月に発売された待望の第3巻では、第2巻ラストに登場した邪悪な魔術師の少年・ヨセフとの死闘や、チセの使い魔の誕生、新たな旅のはじまりなどが描かれ、見どころ・読みどころがたっぷりだ。読者を引き込まずにはいられない圧倒的な世界観や、絵の美しさも健在。中盤以降、ストーリー展開のスピードは若干緩やかになるが、その分、チセとエリアスの内面が掘り下げられ、2人の過去や抱えている問題が徐々に浮き彫りになっていく。

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さらに第3巻では、チセとエリアスの新たな側面や、関係性の変化も描かれる。
 ヨセフとの闘いのさなか、ヨセフのある行為に怒りを覚えたチセは、感情のおもむくままに、「世界の理をねじ曲げ」かねないほどの魔力の一端を垣間見せる。一方、エリアスは、チセがヨセフによって傷つけられたことに動揺して、精神と身体のバランスを崩し、「裂き喰らう城」(ピルム・ムーリアリス)という呼び名にふさわしい、攻撃的かつ巨大な姿に変身する。チセの強さとエリアスの脆さ、これまで激しい感情を見せなかった2人の内に潜む猛々しさが明らかになる、印象的なシーンだ。

 また、「自分は家族に捨てられた存在だ」との思いから、他者を愛することをおそれ、エリアスに引き取られて以来、「エリアスが言わないことは聞かない」「エリアスにとって物分かりのいい、都合のいい存在でいたい」と考えていたチセの心の中に、エリアスを大事に思う気持ち、エリアスのことを知りたいという気持ちが芽生えていく。

 第2巻の妖精王オベロンや妖精女王ティターニア、墓を守る黒妖犬、第3巻のリャナン・シーや鬼火の妖精ウィル・オー・ウィスプなど、イギリスやアイルランドの民話や伝承に登場する魅力的な妖精たちが次々に現れるのも、『妖精事典』をこよなく愛する作者らしい趣向であり、まほよめの大きな魅力のひとつだといえるだろう。

 エリアスの過去に何があったのか。ラストに登場する「学院」の使いは、チセの将来について、何をエリアスに伝えようとしているのか。チセとエリアスの関係はどうなっていくのか。毎回「いいところ」で終わるまほよめ。なかなか罪作りである。

文=村本篤信

『魔法使いの嫁』(ヤマザキコレ/マッグガーデン)